最終話 明澄
「助けて、
「うわ、暑。離れて」
七月一日。
その日、
「私、死んじゃうかも」
「大丈夫でしょ、当分は」
「
「
いや、私、私! と指をさす
「アンタが入学前に登録した術師名は?」
「
「じゃあ、入学前に登録した本名は?」
「
いや。実際には、誤魔化すことに成功していた。
理屈はこうだ。
責任を取りたがらない学園側が見つけたのは、この学園に暁鴉などと名乗る苗字の人物はいないという紛れもない事実だった。だが、このままでは詭弁でしかない。そこへ、困り果てた学園側に、助け船を出したのは
言い換えれば、
画面のなかでは、宣戦布告をした
「関係者に対する
「で、でもぉ……」
しかし、
「最悪、
「……うーん」
「なんで、
「いや、だから――」
やっかいなのは、
「って、うわっ!」
不意に、
しかも、
それなのに、気恥ずかしさのあまり出た言葉が、思っている以上に喧嘩腰だったものだから、
「
「――っ」
「これ。返しそびれてた」
先に話題を切り出したのは、
そのお守りを、一瞬だけ
それでも、
「すいません……。私が力を制御できなかったばかりに……
「いや、しっかりものにできてたよ。記憶が飛んじゃうのが、玉に
「それはっ! そんなことは……ない……です……」
「いいよ。何度でも言うから」
――俺と結婚してくれ。
ほとんど不意打ちだった。
おもむろに上げられる顔。
ところが、そこにあったのは紅潮した
「――そういう貴様はどうだ?
彼女は不敵な笑みを浮かべていた。
「その気になれば、いつ
「もちろん」
「ふっ。相変わらず鼻につく澄まし顔だ」
お守りを受け取る少女。ふと、
不意に、身体の主導権が、
途端に、
「――はい。こちらこそ、よろしくお願いします」
俯きながら。
蝉しぐれ。
澄み渡る蒼天。
そして、季節外れの空に、桜の花びらが一つ。
もう一つの君の名前は、帝都に桜を咲かす げこげこ天秤 @libra496
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