第15話 交錯する思惑
「上は、
「……そうか」
事件から、六時間が経とうとしたころ。日の落ちた
「
「でも俺もショックなんスよ? まさか、後輩にクソ鴉が紛れ込んでたなんて」
「
「だって、先輩もそう思うでしょ!」
過ぎた言葉を諫めようとした
「俺たちは、ずっとアイツに騙されてたんスよ?」
「……」
「毛玉ちゃん、毛玉ちゃんって……バッカみてぇ! ずっと、無能なフリをしてたんだ。そうやって俺たちに近づいて……くそ。一体何を企んでたんだか」
ついに悪態が止まらなくなった
おかしいのは
危険分子は、速やかに処分すべきだ。もし、
それなのに、管轄区域が
そんな状況の
「もー、何言ってんです?」
怒りのままに喚き散らす
「まだ犯人のうちの八人は逃亡中。いまは犯人の行方を追う方が先決です。
「……ッ! だいたい、今回の事件を引き起こしたのは――」
「おっと」
すっと、
「その先はシーっですよ、先輩。もし、一言でも
その時、
「あまり、
「あはは。そう言う、先輩はどうなんです?」
ねぇ? と後ろに手を組んで胸を強調すると、
「
例えば、六年前の山火事の際に女の子を助けた日から?
「アンタ! 知ってたのか! 全部ッ!」
「
「答えろッ! ――いいや、アンタは知ってたんだ! そういやアンタは、『僕にとって特別な子』って言ってたもんなぁッ!」
「ああ、知ってた」
「なんで黙ってた! いや、なんで殺さなかった! アンタ、勲章持ちなんだろ? だったら、あんな女の子、簡単に!」
どうして殺さなかった? その問いかけを、
愚かなのは、
「あいつは悪くない」
「は、ハァ? なに言ってんだ!」
「全部、僕のせいなんだ」
「だから意味分かんねぇよ! いい加減、目を醒ませ! アイツは悪魔だ! アンタはどうして、悪魔なんかを庇おうとする?」
無抵抗な
きっと、上層部でも似たようなことが起こっているのだろう。沈黙する
そうやって世界が回っていく。
そうやって、
「あはは……。詰まんないの」
すまし顔の
子どものころから、
ただの生臭い屠畜場だ。
それでも最初のうちは、用意された家畜の屠殺を楽しむことにした。けれど、すぐに飽きてしまった。
せめてもの楽しみ。
それは、這い上がって来る虫と遊ぶこと。
「――仕方ないよね」
いずれにせよ、ずっと
そんなことを思いながら、ふと顔を上げた。
「――ねぇ、私にも是非聞かせてよ」
風が舞い込む。
藤の花びらが、そこには一つ。
風鈴の音が響いた気がした。
「……」
「……」
「……」
押し黙る三人の〈
「どうして助けたいの?」
「決まってるだろ。僕は――」
「――聞いてる限りでは、
それ以外ないの?
本当にそれだけなの?
家を騙して、世界を欺いてでも、あの子を守りたかった理由は、
「……」
呆気にとられる
辛うじて、反論しようとした気持ちさえも、過去の記憶によってへし折られる。六年前に
威圧しているわけでもない。
ただただ、気だるげに。
「
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