第06話 二つの名前
「覚えてないの?」
「うん。なんかこう、
お互いの間に沈黙が走る。
そのストッパーが一時的にとはいえ、今朝、外れかけた。しかも、そうして
だが、当の本人は何も分かっていない。どうして、大学部生でも使用に難を覚える高難度技〈
「……」
「……」
見つめ合う二人。
そのうち
(でも……、どこかで見たことあるような?)
同時に既視感にも襲われる。――よく、有名人に似てるって言われない? 二言目にはそんなことを口にしそうになる。とはいえ、誰だったか……。
「……あ!」
「?」
頭のなかで、
「えっとさぁ、全然話は変わるんだけど、
「うん?」
「よく似てるって言われない?
そこまで言ったところで、またしばらくの沈黙が生まれた。
訊いてはいけないことを訊いてしまったのだろうか。視線を逸らして謝ろうとしたところで、
そして、居心地が悪そうに頬をかく。
「うーん。そっか。意外と分かんないもんなんだね」
「?」
「似てるも何も……本人なんだけど、ね。……あはは」
「?????」
――
――
「もしかして、
*****
〈
色んな説があるよと、ポカンとしたままの
「じゃ、じゃあ私も?
「うーん。私は代々〈
「だ、誰につけてもらうの?」
「基本的には自己申告だと思うけど……」
そんなの私、知らないよ!
そう言おうとした時だった。
「――いや、アンタが何でもいいって言ったんでしょ」
気だるげな口調で、ぬっとその場に
「入学手続き手伝った時に、
「そ、そんな!」
「術師名? ……とか言われても一般人の私はよく分かんないし。
「私、そんなこと言ってた? いやいやいや、私は本名とニックネーム分けたいタイプなんだけどぉ……」
二人の掛け合いが面白かったのだろうか。様子を見ていた
「じゃーん! これ子、誰だと思う?」
「
「なっ! なんで知ってんの?」
「そうとしか見えないでしょ。ついに目でも腐った?」
「ち、ちがうもん! えっと……そうじゃなくて……」
「術師名と本名が違ったから、別人だと思ってた。違う?」
「違くないですけどぉ……」
まずは、
「じゃあ、やっぱみんな術師名を使ってるのかなぁ?」
「この感じだと、使ってないの、アンタくらいでしょ」
「うぐっ」
そこへ、
「あんまり言ったら可哀想じゃん」
「
「
「ちょっと待って! いまの聞き捨てなんない。違うよ! 私が目の敵にしてるんじゃないくて、アイツが目の敵にしてんの!」
ぷぅ、と頬を膨らませて抗議する
ちょうどそこで予鈴が鳴り、三人は解散することとなった。
*****
その日の夜。
寮へと戻った
「それにしても安心したよー。
「こっちは、ヒヤヒヤしたんだけど。超有名人と知り合いになってるし……本当にやっていけるの?」
大丈夫だよーと、満面の笑みを浮かべる
「(アンタ。私が
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