第08話 放課後の体育館裏1
「
「……」
翌日の放課後。
「で? 私にどうしろと?」
「実は、一緒に来て欲しくて……」
「今度は何やらかしたの? 私も一緒に怒られるとか、意味わかんないんだけど」
「それが……。そうじゃなくて……」
「?」
話を聞けば、放課後に体育館裏に来るように呼び出されたとのこと。業間休みのふとした瞬間に、兎の姿をした〈
それを聞いた
「で? 本当に心辺りは無いわけ?」
「……多すぎて」
「……訊いた私が馬鹿だった」
体育館裏へと向かいながら、呼び出された理由を考える。
なら、昨日の出来事がきっかけか?
「って言われても、覚えてないものは覚えてなくて……」
「……」
「〈
「なるほど? ――まぁ、その調子だと、呼び出された理由は、なんとなく察しがついたよ」
「えっ?」
教えて、教えて、と迫る
力を発動させたはいいが、記憶を飛ばしているのだ。そんな危なっかしい力の使い方をする人物を、放置しておくわけにはいかない。きっと、特別訓練かなにかが待っているんだろう。そう告げようとした
「まぁ、直接訊きなよ。悪いようにはされないでしょ」
「……え?」
そこで、
目に飛び込んできたのは、予想だにしない人物。鍛えられた身体、凛とした顔立ち、アッシュの髪に、春の陽気のような眼差し。その人物は、
「
*****
気が付けば、
「
だが、あと数歩のところで、目の前の男が全くの別人であることに気が付く。――
「
「何言ってる? 呼び出したからに決まってるだろ?」
「それは……そう……ですけども?」
おかしい。見間違えたのか?
どうして、見間違いなんてしてしまったのだろう。あろうことか、
「で? 一体何の用ですか?」
「あのなぁ……。なんでお前は、そういつも喧嘩腰なんだ?」
「そ、それは……ッ! アンタがいちいち癪に障ることするからでしょッ? 私を晒し物にしたり、弱い者いじめしてきたり……それに私の大切な物をガラクタ呼ばわりしたじゃないですか!」
だが、状況が変わった。
だから、力を封じ込めるのではなく、
「
「な、なんですか!」
「お前には本当に申し訳ないことをした。謝罪する」
「……ふぇ?」
「あ、謝ったところで――」
「お前がこれまでに被った不利益や、精神的苦痛については、全面的に俺に非がある。許せと言うつもりもないし、許されるとも思ってない。これからは、しっかりとお前の気持ちを汲んでいくつもりだ。もしお前が、消えろと言うなら消えるし、死ねと言えば死ぬ」
「……そこまでは……言ってないです」
冗談だよ。と、もし目の前の相手がルームメイトの
「だから、お前の気持ちを確認しておきたい、
「それは、最初っから言ってるじゃないですか! 私は
真っすぐに
「ふーん」
「ふ、ふーんって! 馬鹿にするんですかっ?」
それまで、冷静に向き合おうとしていた
「最低です! アンタなんか、
「比べれば? 何?」
迫る
こんなくだらないことで揉めている場合ではない。それは、
時は一刻を争う状況だ。
「――悪い。俺が大人気なかった。なんにせよ、目標があることはいいことだ」
「私こそ、すいません。でも、なんで
「ライバルなんかじゃない。単純にムカつく奴だよ」
「どういうところがですか?」
「昨日も言ったように、それはお前の力を封じ込めてる呪符だ。お前の本来の力は強力すぎるから、そのお守りは、力に飲み込まれないように、お前のことを守ってる」
「そのどこがムカつくんですか?」
「分からないか? それを持ってる限り、お前は毛玉しか作り出せない」
つまり。
大切な人に近づくためには、宝物を捨てなければならない。それは残酷なことだと、
「すぐに捨てろとは言わない。むしろそれは、危ないから全力で止める。もちろん、お前が望むんなら、そのお守りを作り直すこともできるし、力の制御の仕方を知りたいなら教えることもできる」
そう言って、
「明日もこの時間に待ってる」
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