獣魔契約・・完了!?
神獣フェンリル様とわたしをぐるぐる巻きにした赤い糸は、そこに存在しなかったように、神獣フェンリル様とわたしの体の中に消えていった。
「なんだったの、今の。」
『名付けにより、獣魔契約が完了してしまいました。まさか、こんなことになるとは・・・』
しょんぼりと神獣フェンリル様が項垂れる。
『どうでしょうか。この世界に慣れるまででも、用心棒兼案内人として、このまま僕を側に置いていただけませんか?』
「契約の解消は・・」
『どちらかの死をもって解消されます。』
(定番じゃん!)
「必ず側にいなきゃダメ、ですか?」
『いえ、僕がカエデ様の側にいたいだけで、遠く離れても問題はありません。』
「・・ってことは、神獣フェンリル様が自由に好きなように生きても問題ないってことですね。獣魔契約のデメリットはありますか?」
『そうですね。特に何も変わることは・・ああ、主と獣魔は念話ができるようになるので、気を抜くと心の声が駄々洩れになるくらいですね。』
(めっちゃ嫌なパターンだ。)
『そうですね。お互い様ですが。』
「ちょっ・・はあ。こんな感じなんですね。気を付けます。あの、ミルク、って呼んでいいですか?」
『・・・・・そう、名付けが完了しましたので。』
(今の間はなに?え?名前気に入らなかった?)
『いいえ。命の恩人の貴女様がくださった名前に、不満などありません。』
「お願い、心読まないで~!!」
その後、ミルクは不服そうに『善処します。』と言った。
獣魔契約をしてから、もっふりとした長毛だらけのその顔の表情が、少し分かるようになった。
そして、ミルクの感情、喜怒哀楽もなんとなく感じられるようになった。
それはミルク側も同じようで、ただの人間であるわたしとは違って、わたしのいろいろなこと(心の声含む)が分かるようになったようだ。
『獣魔契約をしたことで、カエデ様という人間がなんとなくは分かったのですが・・・ステータスボードを見せていただけますか?』
「え?他人に見えるモノなの、あれ。」
『この世界の人間だと、鑑定の魔道具を使わなければ他人のステータスは見えません。見えるのは僕が神獣だからです。獣魔契約を結んだ獣魔にも、見ることは叶いません。』
その言葉に一安心して「ステータス」と呟き、半透明の板を表示する。
名前:メープル(隠匿 名前:メープル・カエデ)
年齢:8
職業:―
魔力:6/11
体力:9/10(隠匿 体力:999/999)
スキル:料理<Lv.1/10>、上級浄化魔法<Lv.10/10>(隠匿 スキル:イマジナリィ・ネットスーパー、魔素変換、ストレージ(無限収納内時間停止)<Lv.1/10>、鑑定<Lv.1/10>)
獣魔:ミルク((隠匿 神獣)フェンリル)
称号:―(隠匿 称号:異世界の知識を持つ者、
加護:―(隠匿 加護:創造神クレエの加護)
『カエデ様。これはステータスボードと言います。稀にスキルを使うときにこのようなものが現れることがあります。それはスキルボードと言います。』
ミルクがボードを覗き込む。
『カエデ様はこれ、内容を確認しましたか?』
「カエデ。」
『カエデ様?』
「カエデって呼んでください。」
『しかし、カエデ様は僕のご主人様ですから。』
「じゃあ命令です。カエデって呼んでください。」
『・・はい、カエデ。では改めて、内容を確認しましたか?』
「しました。」
『本当に?』
「しました。」
『理解はしましたか?』
「それは・・・自信無いです。」
『ほとんど偽装がかかっていますね。他の人が見ることができるステータスがしょぼ過ぎるのに、上級浄化魔法だけが異常です。』
(今、しょぼ過ぎるって言った・・・)
「え?偽装?」
『・・・理解以前の問題ですね。一から確認していきますよ。』
「・・・はい。」
『ステータスは本来隠匿できるものではないので、カエデの隠匿されているスキルが知られることはまずないと思いますが、隠匿されていないスキルの一つ、上級浄化魔法はこの世界では稀有なスキルで、カエデの身が危険に晒される可能性が高いです。』
「ミガキケンニサラサレル?」
『まともでない宗教関係の組織に見つかると、自由を奪われ、一生その組織の利益のためにこき使われる、というのが一番高い可能性です。』
「絶対嫌。」
『そのような事態を避けるためにも、この魔法は本来の威力で人前で使わないようにしてください。人前で使用しても問題なさそうなのは、上級浄化魔法の中の<簡易洗浄>だけです。<簡易洗浄>は汚れを洗い流す魔法です。体や衣類、武具や調理器具を洗う際に日常的に使用される魔法です。持っている人は多くはありませんが、少なくもありませんので、安心して使っていただけます。但し、威力は抑えてください。可能であれば、魔素変換を使わず、ご自分の魔力でお願いします。平穏に暮らしたければ。』
「分かりました。でもレベルは10/10でマックスだから、鑑定されたらすぐにバレませんか?」
『この世界のステータスボードにレベルが表記されるというのは聞いたことがありません。カエデのステータスボードが異常なのですよ。』
(今度は異常って言った!いや、さっきも異常って言ってた!!)
『上級でも熟練度は誰にも判断できません。実際の魔法を見ない限りは。なので、安心して、制御したしょぼめの魔法を使うようにしてくださいね。』
「・・・はい。」
(またしょぼいって言った・・)
『では、上から確認していきましょう。まず名前。メープルが名前で、カエデが家名ですか?』
「あ、違うの。わたしの本当の名前は、桜森カエデ。サクラモリが家名でカエデが名前。この世界に来たら名前がメープルになってて、わたしがカエデって名前が大事だって思ったら、ステータスがメープル・カエデに変わったの。」
『ふーん・・・創造神クレエ様は随分カエデを気にしてらっしゃるんですね。・・・・・今までの転移者は、この世界に送り出した瞬間からノータッチだったのに・・・・・』
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