イマジナリィ・ネットスーパーの使い方 1


ミルクはそう言ってくれたけど、要らないと思ってたんだよ、こんなスキル。


でもこのスキルが無かったら、ミルクを助けることはできなかった。


このスキルがなかったら、何もできなかった。


それを思うと、「使い方次第」だと言ったミルクが正しいような気がしてくる。


『それでは、使って見せてください。』


「え?」


『何か、空想の産物を購入してください。』


「何を?」


くぅ~っと、音が聞こえた。

わたしのお腹の音だ。


この世界に来てから水檎を数口齧っただけ。

寝て、大泣きして、また寝て、時間だけは経っている。


急に恥ずかしくなって、もふもふのミルクの前足から抜け出そうとすると、


『食べ物はどうですか?』


空想の産物が何も浮かばないわたしに、ミルクが提案してくれる。


『転移者の方々が広めた食べ物のいくつかはこの世界に定着しています。僕はまだ一度も食べたことがありませんが。』


「食べたいもの、ある?」


『そうですね、可能であれば魚料理と肉料理を食べてみたいです。』


「魚料理と肉料理・・・んー・・・あのね、わたしの能力は、地球に現存しない、空想の産物のみを購入できるっていう、変わった縛りがあってね?前の世界に実際に存在する食べ物は購入できないんだ。どうしようかな・・マンガ肉ならどうにかなるのかな・・いや、あれはイベントかなんかでそんなメニューを見た気がする・・」


『ちょっと工夫して、現存する食べ物のあり得ない組み合わせ、とかはどうですか?』


目から鱗が落ちた。


「試してみるね。えっと、<イマジナリィ・ネットスーパー>。」


(うんともすんとも言わない。さて・・)


『スキル名では発動しないようですね。珍しい現象です。今までどうやったら発動したか、よく思い出してください。』


「今まで・・・最初の薬は、わたしにはミルクを動かすことができなかったから、ミルクのまわりにあった草が自分で歩いて動いてくれるといいなって呟いた・・気がする。」


『では、今カエデが購入しようとしたモノは、何ですか?』


「あり得ない組み合わせでお肉とお魚、で思い浮かんだのが、ハンバーガーショップで見たことがある、BOX入りハンバーガーとポテトとナゲットとアップルパイのセットにドリンクのコーラ、それに絶対にハンバーガーショップで売っていないにぎり寿司がそれぞれ適温で保存できる容器に入って、一人前になっているセット・・・」


そこまで具体的に言い終わると、ピコン!と音がして、今度はオレンジ色の半透明の板が出てきた。


「出た~!!ミルク、この半透明の板のようなもの、見える?」


『はい。これはステータスボードや鑑定ボードとは異なり、・・いえ、カエデのスキル専用のスキルボードでしょう。これはカエデが強く望まない限り、僕のような神の眷属にしか見えない代物だと思います。』


「そうなんだ。人前で使っても誰にも気づかれないってことだね?ちょっと安心。じゃ、操作していくね。」


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 【商品名:ハンバーガーショップで売っているBOX入りハンバーガーとポテトとナゲットとアップルパイとコーラに、にぎり寿司を加えたセット】


 <購入しますか?>


  □ いいえ


  □ はい


   対価 □ 銀貨2枚

      □ 物々交換 <交換するものを入力(     )>

  

 ※ 該当の□をタッチ、または音声入力をしてレチェックを入れてください

 ※ 物々交換を選択した場合は、交換するものを(     )に入力すると、査定を開始します


 <決済開始>


 ※ 選択が完了すると、<決済開始>がアクティブになります

   内容を確認して、よろしければ<決済開始>をタッチ、または「決済開始」と音声入力してください

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「あ・・・食べ物は購入できるけど、今回はおろしが無いから対価が用意できないから買えない。わたし、お金も物々交換するものも、何にも持ってない。」


『それは対価になりませんか?』


ミルクはわたしの目の前のミルクの前足に載っている、桃のような果物に視線を送る。


(いつのまにこんなところに・・好きなものを最後に食べるの、これから止めよう。)


今日二つ目の決心をして、ミルクにこの果物の名前を教えてもらって、音声入力する。


「対価、物々交換。交換するのは水桃すいとう1個。」


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 【商品名:ハンバーガーショップで売っているBOX入りハンバーガーとポテトとナゲットとアップルパイとコーラに、にぎり寿司を加えたセット】


 対価 ■ 物々交換(水桃1個)


 <決済開始>


 ※ 内容を確認して、よろしければ<決済開始>をタッチ、または「決済開始」と音声入力してください

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「決済開始」


と言った途端に、わたしの目の前から、楽しみに取っておいた水桃が消え、半透明の板の画面が暗くなり、すぐに明るくなった。





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 【商品名:ハンバーガーショップで売っているBOX入りハンバーガーとポテトとナゲットとアップルパイとコーラに、にぎり寿司を加えたセット 出荷準備完了】


 <配送先を指定してください。>


  □ ストレージ


  □ 目の前


  □ その他<配送先を入力(     )>


 ※ その他を選択した場合は、配送先を(     )に入力してください


 <配送開始>


 ※ 選択が完了すると、<配送開始>がアクティブになります

   内容を確認して、よろしければ<配送開始>をタッチ、または「配送開始」と音声入力してください

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今はミルクにこのスキルの使い勝手の悪さを知って欲しいから、一連の流れを見てもらうために「目の前の地面の上。」と指定。

さっき「目の前」と指定したら、本当に目の前の空中に出てきたからね。




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 【商品名:ハンバーガーショップで売っているBOX入りハンバーガーとポテトとナゲットとアップルパイとコーラに、にぎり寿司を加えたセット 出荷準備完了】


 配送先


 ■ 目の前の地面の上


 <配送開始>


※ 内容を確認して、よろしければ<配送開始>をタッチ、または「配送開始」と音声入力してください

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




「配送開始!」



「できた・・あああぁぁぁぁ!?」


目の前には、ハンバーガーとポテトとナゲットとアップルパイとコーラとにぎり寿司のセットが入っていると思われる箱が、見上げる程の山となっていた。

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