イマジナリィ・ネットスーパー ~スローライフする前に、異世界救っちゃったみたいです~
のあ きあな
突然訪れた死 1
わたしは
名前がカタカナなのは、秋生まれで”楓”と名付けたかった両親だったが、苗字に春の”桜”が入っているので、カエデを漢字にすると名前の中で季節が喧嘩してるみたいで不吉だと、祖父が大反対したからだ。
そんなわたしは、ごく平凡なサラリーマンの父に専業主婦の母、勉強のできるオタクの弟の、どこにでもいるような普通の4人家族の家庭で育った。
嘘です。
わたしの家族は、少し変わっている。
お父さんは建築関係の会社のサラリーマンだけど、わたしが生まれる前から海外を飛び回って仕事をしている。
それも1~2年毎に違う国に移り住んで。
なんでも、語学堪能なお父さんは、直ぐに新しい国の言葉を覚えて順応してしまうため、非常に重宝されているとのこと。
おかげさまで、お父さんと過ごせる時間が無いのは寂しいけれど、なかなかの贅沢な暮らしをさせてもらえている。
お母さんは専業主婦、そこは間違いない。
ただ、普通の専業主婦とは一味違う。
まず、とびきりの美人さん。
とても珍しい少し青みがかった
お母さんは、遠い日本ではない国の出身だ。
お母さんとお父さんが出会ったのは、お父さんの会社が、ある国と契約を結んで進めていたリゾート開発で訪れた島だった。
その島は空中からの調査で、国には無人島として登録されていたのが、実際上陸してみたら、原住民が岩山を削ってその中で暮らしていたのが見つかった。
お母さんはその原住民の1人で、お父さんはそのお仕事中にお母さんと愛を育んで、帰国するタイミングでお母さんを日本に連れて帰って来て結婚した。
わたしが生まれてから暫くは、言葉の不自由なお母さんが心配(主に病院とお役所関係)だからと、かなり会社に無理を言って国内で仕事をしていたんだけど、弟が生まれて、わたしが幼稚園に上がってからは、海外に単身赴任して暮らしている。
お母さんの故郷の島には母国語とは異なる現地独特の言語があり、お母さんは今でもその言葉を使っている。
なぜなら、いくら頑張っても、あいさつ程度の短い日本語ですらカタコトでたどたどしいくらい、壊滅的に日本語が習得できないから。
なので、我が家では、将来絶対に役に立つことの無い第二外国語で会話をしている。
近所に住むお爺ちゃんお婆ちゃんとお母さんには言葉の壁があるので、お爺ちゃんお婆ちゃんとお母さんとは、わたしと弟が間に入って会話している。
言葉の壁があっても、嫁姑関係は良好である。
日本語習得にはおおいに難ありのお母さんなのだけれど、家庭内のあらゆることに関しては、スーパーできる女だ。
通常の家事はもちろん、DIY、洋服作りに刺繍にレース編みはプロ級の腕前。
更に広い庭の一角にあるお母さん専用の家庭菜園では、専業農家の方の畑のように、多くの種類の立派なお野菜が育てられている。
お母さんの育てている野菜と数種類の果物で、食卓の載る野菜と果物が賄えてしまう程だ。
そしてそれらが、スーパーで買うものよりも遥かに美味しい。
弟は、そんなお母さんの遺伝子(ビジュアルとスーパーできる人なところ)をしっかりと受け継いだ。
わたし?
お父さんに似たことに感謝してます。
マジで、負け惜しみではありません。
わたしはお父さん譲りの黒目黒髪で、お父さんとお母さんに似ず、特に秀でた才能には恵まれていない。
成績は良い方だけど、運動音痴。
こんな自分に満足してる。
マジで。
因みに弟の名前は桜森
ずるい。
弟は小さい頃から優秀な上にとても可愛くて、成長するにしたがって、芸能人になれる程のイケメンに育った。
けれど、これが仇となった。
次から次へと幅広い年齢層の異性(時々同性)から恋愛対象として迫られ続け、優秀過ぎた故に赤の他人から将来を期待され過ぎた結果、弟は中学生1年で不登校になった。
今は通信制の高校で勉強中。
大学も通信制で学んで、将来は自宅でできる仕事に就くと言っている。
3次元の家族以外の人間が怖くて引きこもりになった弟は、高校生になると二次元に興味を示し始めた。
そして、どんどんどんどん二次元にハマっていく弟は、わたしをも巻き込んだ。
わたしが大学に入った最初の夏休み、立派なオタクに成長した弟に連れられて、薄い本やコスプレーヤーで賑わう祭典に行った。
二次元ラブ、三次元怖いの弟曰く、祭典だけは
猛暑の中、念入りに髪と顔面を隠す変装をして、「万が一の時姉ちゃんがいないと、俺家に帰って来られない気がするから一緒に行って!」と懇願してくる弟に負けた。
いやいや付き合わされたのだけれど・・すっごく楽しかった。
初めての世界に、魅了されてしまった。
それからわたしは漫画やラノベ、アニメ(特に異世界モノ)にハマり、声優を目指し始めた。
大学に通いながら声優プロダクションの養成所に通い始める程に、自分のものではない人生を空想できる趣味にハマり、それらをアウトプットする仕事への憧れが強くなっていった。
世間様とちょっと違う家庭で育ったわたしは、日本語の話せない大好きな母と、相手の都合を考えず迷惑かけられまくっている弟の2人に向けられる心無い言葉を聞き続け、人間不信になっていた。
中学の時は、人付き合いを避けていたら、いじめにあった。
高校では、中学での失敗を生かして、表面上は適度ににこやかにするようになった。
学校外での付き合いは全拒否すると人間関係が悪くなると思い、全拒否ではなく、ほぼ拒否くらいの距離感でクラスメートと付き合った。
あまり会話をする必要のないゲーセンや映画にたまに付き合うくらいだけれど、その程度のことでいじめられることは無くなった。
初めてカラオケに付き合った時は、カラオケというのは、ずっと誰かが歌い続けているのを聞いてるだけでいいと思っていたので、クラスメイト達が自分の自己満足のために歌い、歌っていない人はひたすら会話をしているだけだと知ってから、2度と付き合わなかった。
たまに映画の後、門限があるから帰ると言っても、堂々巡りの恋愛相談や自慢話を路上で延々とされ、辟易することがあり、一度そういう話をされた人には、二度と付き合わなくなった。
わたしは高校を卒業するまで、一度も友だちというものができたことがなかった。
そんなわたしだったのだけれど、声優プロダクションの養成所の同期生は違った。
同じ志を持った仲間と過ごす時間は格別なもので、彼等彼女らは、わたしの人生初の友だちとなった。
養成所のレッスンの後、仲の良い子たち5人とファミレスに寄って、楽しくおしゃべりしていた時のこと。
来客を告げる音が店内に響き渡ると同時に、店員さんたちに緊張が走った。
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