カエデのステータス 1

『メープルが名前で、カエデが家名ですか?』


「あ、違うの。わたしの本当の名前は、桜森サクラモリカエデ。サクラモリが家名でカエデが名前。この世界に来たら名前がメープルになってて、わたしがカエデって名前が大事だって思ったら、ステータスがメープル・カエデに変わったの。」


『ふーん・・・創造神クレエ様は随分カエデを気にしてらっしゃるんですね。・・・・・今までの転移者は、この世界に送り出した瞬間からノータッチだったのに・・・・・』


ミルクがなんかぶつぶつ言ってるけど、聞き取れない。


『そうですか。この世界に転移してくる人間に創造神クレエ様が説明されることは無いのですが、この世界では、本当の名前が大きな意味を持つことがあります。僕であれば真名ですね。呪術をかけたり隷属の魔法を効率よく使うときに、本当の名前が分かるのと分からないのとでは、効力に大きな差が出ます。』


「怖っ!」


『絶対に、サクラモリカエデという名前を知られないようにしてください。』


「分かりました!!」


『年齢は8歳。カエデは年齢の割にしゃべりがしっかりしていますが、この世界でも教育を受けた子供の受け答えはしっかりしているようなので、これは問題ないでしょう。』


わたしは心の中で汗をかきながら、新しい人生で8歳なのは事実なんだからと、口を噤んだ。

後々、この時本当の年齢を伝えておくべきだったと後悔する時が来るとも知らずに。


『魔力11は年齢なりですね。』


「11?さっき見た時は10だったのに。」


『ああ、水檎すいごを食べたから、魔力が増えたんですね。適性があって良かったですね。今後も神気を含んだ作物を食べれば、魔力が増えますよ。』


「適性・・そっか。魔力が増えるのは嬉しいな。」


(あ!そう言えばあの実、どこいった?)


自分の足元に転がっている実を2つ、慌てて拾い上げる。

うん、傷はついていない。

ちょっと泥を綺麗にすれば食べられる。

後で<簡易洗浄>とやらを試してみよう。


『体力・・化け物並みですね。』


(化け物って言われた!もしかして、ミルクって・・・)


「体力10は年齢なりじゃないの?」


『隠匿されてます。隠匿されている体力999は、恐らく人類最高値ですよ。どんなに鍛えても体力が3桁に届く人族はごく僅か。それでも100の位の数字は”1”です。』


「創造神クレエ様の加護の影響かも。」


『そうですね。恐らくこの状態異常耐性、物理耐性、魔法耐性、寿命以外での死亡回避の影響でしょう。この世界に慣れるまで、何かに障る時には、力加減に気を付けてください。最悪の場合、軽く触れただけで岩や木が吹っ飛ぶかもしれません。』


「まさか・・」


『この世界初の、未知の体力値です。』


わたしはその場にしゃがんで、足元の石を軽く叩いてみた。


何も起きなかった。


(そうだよ。軽く触れただけで何かが吹っ飛ぶなら、さっき思い切り地面を叩いた時、痛かったのはわたしの手じゃなくて、地面だったはずじゃない!)


『体力値が高いだけで、力が強いわけではないようです。良かったですね。』


(・・心を無に。無にするのよ、カエデ。)


『魔素変換とは、珍しいいスキルをもらいましたね。先程もう使いこなしてましたので、これはステータスボードの説明通り、魔力が枯渇しないように気を付けてください。目安としては、この世界の魔物と魔獣の体のほとんどは魔素から作られているので、魔物と魔獣が多いところの魔素は魔物と魔獣がいないところより濃いです。魔物や魔獣がいるところでは、まわりの魔素を魔力に変換し尽くしても、魔物と魔獣からも魔素を吸収できるので、すべての姿、魔法を使うのを止めるのがいいでしょう。・・魔力が枯渇しそうなほど使うのは、戦闘の時くらいですよね?』


(闘わないってば!)


『ストレージは出し入れするのに魔力が要るので、出し入れする時は忘れずに魔素変換を使ってくださいね。採取に夢中になっていたらいつの間にか魔力が枯渇してた、なんてことが無いように注意してください。』


(異世界の定番、憧れの採取!夢中になったら魔力が枯渇しない自信ない!)


『鑑定は使えば使うほどレベルが上がりますが、この世界での知識量を増やすのも、レベルを上げる助けになります。今は、例えばそこにある木はただ”木”と鑑定ボードに表示されていませんか?これが植物図鑑を読んでから鑑定すれば、この木の名前が表示されるようになるでしょう。見たこと、読んだこと、聞いたことは、覚えていなくてもスキル鑑定が知識として蓄積してくれます。』


(へぇ~、いいこと聞いた。自慢じゃないけど、勉強するのは好き。)


『称号は、この世界に大きな影響のない程度に使ってください。』


(「異世界の知識を持つ者」のことかな?創造神クレエ様はこの世界に刺激を与えて欲しいって言ってたんだけどなぁ。)


ミルク先生の流れるような解説が止まった。


『最後に、この<イマジナリィ・ネットスーパー>というのが、僕を助けてくれた能力、ですね?』

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