Act.1-2
車に戻ると、助手席で私たちを待つ人影があった。
「……《
ナキが呟く。
「おつかれさま、《
栗色の巻き毛が印象的な男だった。ナキに向かって微笑みかけてから、私の足をちらりと見て、
「病院へ向かう道すがら話そう」
そう言って、後部座席を視線で示し、私を
「君は、あっちの車で《
「……はぁい」
ナキが心なしか不服そうに、くぐもった声で
栗毛の男が苦笑した。
「付き添いたかったの? 珍しいね。ペアを組むこの子のこと、そんなに気に入ったんだ?」
「まぁね」
後部座席のドアを開け、私を介助してくれながら、ナキは小さく肩をすくめた。
「ルイはねぇ、命がけで守った仲間に見殺しにされても、
「そういう絶望って、愛しいよねぇ。共鳴して、ひとめ惚れしちゃうよ」
そう言って、笑みのかたちに細められた琥珀の瞳は、硝子のように透明だった。
私がその言葉とまなざしの意味を
踏まれるアクセル。ナキの背中が遠ざかる。一人で敵を
「……
その二つ名を口にして、《
「彼女の瞳、ちょっと珍しい色をしているだろう。琥珀色って、狼の眼の色と同じなんだってさ。加えて、あの戦闘力だ。君も間近に見て、驚いただろう? 最初に誰が呼び始めたのかは知らないけど、
「……
そうか、彼女も……。私は目を伏せる。運営するおとなたちには
私を含め、施設に集められた子どものほとんどが、戸籍のない、スラム生まれの孤児だ。もっとも、たとえ戸籍を持っていたとしても、施設に入ると同時に抹消されている。全ては、この国のために在れと。
存在しない人間たちによる、存在しないはずの組織。
第九機関――それが、私たちの属する組織だ。
この国の中枢は、八つの機関から成り立っている。法務を司る第一機関、外交を司る第二機関、財務を司る第三機関、そして、公安を司る第四機関というように。そして近年、秘密裏に発足したのが、
それゆえに、敵も多い。既得権益を
「……それで、話って何?」
私に伝達事項があるんでしょう? と、話を戻して
「これが、次に君と彼女で当たってもらう仕事。ちなみに、明日付けで……って、もう日付が変わったから今日だけど……彼女とペアを組むのに合わせて、彼女が今ついている《
「了解」
私は
「それから……彼女の住まいを、君の隣の部屋に移すことになったから。ちょうど今、空室だし、ペアを組むなら、そのほうが都合がいいだろうって」
「……了解」
私たち《
窓の外を眺める。新市街の中心部に近づくにつれ、ガス燈の明かりが増え始めた。もう間もなく、機関の提携する病院に到着するだろう。
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