Act.1-3
足の治療を終えて帰宅すると、空はすっかり白んでいた。初夏の夜明けは早い。
スーツを脱ぎ捨て、シャワーを浴びる。タンクトップとホットパンツに着替えて、軽くストレッチをすると、控えめな音量でレコードをかけた。このアパートメントに住人は少ない。この部屋の上も下も、左も右も、空室だ。これくらいの音量なら、この時間でも大丈夫だろう。異国の女性ヴォーカルが歌う、アップテンポのロックミュージック。有名ではないけれど私は好き。自分の心に正直に、自分の足で歩くことを歌う曲。
ミネラルウォーターのボトルを手に、ベランダに出る。旧市街に程近い、新市街の外れ。運河に面したアパートメントは西寄りの南向きで、朝陽に照らされ
平和な朝の風景を眺めるのも、私は好きだ。夜をまたひとつ生き延びられたのだという実感が湧く。
喉を
それを、正しいことだとは思わない。けれど、裁かれることもない。今は、まだ。この国は私の仕事を裁かないし、私も私を裁くことはない。もし、裁かれることがあるとすれば、それは私が仕事の
アウトローでインモラルな、正義や良心の天秤から外された場所。それが舞台。自分の感情をオフにして、《
だから、好きなものや、楽しいことで、仕事以外の時間を埋める。役を終えて、私が私に戻るために。私が私を、忘れないために。
いつか舞台から落ちて、生き延びられなくなるときまで。
どこかからパンの焼ける匂いがして、私の体が空腹を思い出す。少し眠ったら、お気に入りのカフェに、モーニングを食べに行こう。
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