Act.5-3
次の指令は、予告なしに当日、
「突然の任務になって、すみません……! 今、動ける《
なるほど、時間がなかったらしい。《
「それって、こっちの計画が相手に漏れたってこと?」
「いえ、それはありません。ただ……こちらが取るだろう動きを、相手に読まれていた……予測されて手を打たれたと、考えざるを得ません」
「まるでチェスゲームね」
私は肩をすくめた。口封じに殺された精神科医しかり、こちらが鍵となる人物に手を伸ばせば、相手はその人物を消したり亡命させようとしたりして
「……《
車の後部座席で、ナキと一緒に手早く資料に目を通す。一人の中年の男の写真と、
「教団……白薔薇の会は、五人の幹部によって運営されていて、彼はその一人です。《
ただ……と、そこで《
「その男が主犯だとは、《
「教祖じゃないの?」
ナキが素朴な疑問を口にする。私も同感だった。教団の幹部に指示を出していたのなら、主犯は教祖と考えるのが自然だろう。
「確かに、疑わしいのは教祖です。でも、教祖は
一連の事件を計画し、駒となった人間を指揮できるとは思えない。
「気になることは、他にもあります」
《
「白薔薇の会は、元々は別の名称で活動していた小さな新興宗教団体だったんです。それが、五年前に今の名称に変わってから、急速に信者を増やし、規模も拡大した……教祖の状態も
教祖さえも、駒にしたのかもしれない。
「そこまで調べて分かっているのに、特定に至らないなんて……手強い相手ね」
「はい」
《
「この男に、主犯が誰か吐かせてから、始末すればいいのね」
もう一度《
「……もうひとつ、分かったことがあります」
心なしか、《
「暗示をかけられた《
「条件?」
私は思わず、ナキと顔を見合わせた。
《
「叛逆行為に至った《
「十三……?」
それは何か、相手にとって意味のある数字なのだろうか。
「白薔薇の会の教典や活動の中には、特に十三という数字にまつわるものは見られませんでした」
「じゃあ、教団じゃなく、主犯にとって重要な数字ってこと?」
「分かりません。ただ、暗示の発動条件が判明したのは大きいです」
既に精神科医との接触が確認された《
「まるで時限爆弾みたいね」
私は嘆息する。《
「悪趣味だわ」
舌打ちして、目を通した資料を折り畳む。
隣でナキは、静かに眉根を寄せていた。
「十三……」
「なにか思い当たることがあるの? ナキ」
尋ねると、ナキは顔を上げ、首を横に振った。
「ないよぉ」
軽い口調で、へらりと笑って、ナキは肩をすくめてみせる。
車は北の郊外へと向かっていた。窓の外を流れる街路樹は、所々、葉を散らし、早くも秋の始まりを伝えていた。
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