Fall Into Heaven
ソラノリル
Prologue
Prologue
オルゴールが鳴っている。子どもの両手にちょうど乗せられるくらいの大きさの、回転木馬のオルゴールだ。
オルゴールの隣には、硝子の花瓶。
豪奢な刺繍の施された緞帳は分厚くバルコニーを覆い、
私の体は
その足もとには、肥え太った年かさの男が、無防備な姿で
閉ざされた部屋。燭台の炎は揺らがない。ただ沈黙し、照らすだけ。死者となった一人のおとなと、生者である二人の子どもを。一人は私で、もう一人は――
「……っ!」
声にならない
「契約成立ね」
ドアを開けたのは、スーツ姿の女の人。長いアッシュブロンドの髪を、頭の高い位置で、すっきりとまとめている。
「行きましょう。貴女を迎える準備はできているわ」
血に濡れた絨毯を踏み、黒いエナメルの靴が近づいてくる。
私は歩き出す。男の死体と、少年を置いて。
振り返ることなく。両手は銃を握ったままで。
部屋を出ると、廊下に照明はなく、代わりに青白い月の光が、大きく切られた窓から
外へと進む先には誰もいない。ここは
そのはずだった。あの男――私が殺した男が、ここの支配者である限り。助けも、救いも。神様も、死神も。
再び
「っ、――」
少年の声が背中を打った。
吹き抜ける風が、
部屋のドアが閉まるのと、燭台の炎が掻き消えるのと、どちらが先だったのかは、分からない。
オルゴールの音だけが、止むことなく響いていた。
あどけない旋律を、繰り返し、くりかえし。
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