第6話 呪縛
体育祭3日目、体育館内の競技は全て終わり、残すはグラウンド競技だけとなった。太陽が照らす快晴の中障害物競走、
パン食い競走、二人三脚など、様々な競技が白熱していた。
「いやぁ~、昨日の時点で、総合優勝3位は固くて、3日目の競技も可もなく不可もなく。最後のリレーで1位取れば、総合優勝1位も夢じゃないな。」
江間が鑑賞に浸っていると、放送委員会によるアナウンスが入った。
「それでは、これより学年対抗リレーの決勝を始めます、選手の皆さんはグラウンド中心に集まってください。」
「よーし、お前らこいつが最後の種目だ、完全燃焼で1位もぎ取ろうぜ!」
「おおー!!」
皆で掛け声を合わせ、第1走者がスタートラインに立つ。2-Aの先頭は江間からのスタート、アンカーに千聖が入っている。ピストルの空砲と同時に一斉に走り出す。江間は中間辺りをキープにそのままの順位で、後続にバトンを渡す。
その後も抜くことも抜かれることも無く
7番走者の眠華にバトンが渡る。前を走る人を抜かして、2番手につく、コーナーを曲がり、残り数メートルという所で
後続に足をかけられ転んでしまった。
「う、( ˃ ⌑ ˂ )」
一気に最下位となり、眠華も立ち上がる事が出来ない。ルール上動けない千聖の横で次々にバトンが繋がれる、そこには
フッと笑う人がいた。それを見た千聖は
行動に出た。メガネを取って深い息を吸い。
「たちばなぁーーー!!!」
千聖の大声がグラウンド全体に響き渡る
「立て、走れ、皆を勝利に導くために
そのバトン持って俺の所まで来い!!
.....眠華!!!」
名前を叫ぶと、眠華は起き上がり、一瞬で千聖との差を縮めてバトンを渡した。
渡した眠華はその場でもう一度倒れ込む
しかし、寸前に舞夜が抱き抱え安全な場所に寝かせた。
リレーの方はと言うと、1位との差は半周以上あり、クラスの皆は半ば諦めかけていた。しかし、走っている本人はコーナーを曲がった直線で一気に加速し、ごぼう抜きをするが、1位にはあと一歩届かず2着で終わった。パンパンと空砲が2回なり、体育祭全種目が終了した。
ゴールした千聖はすかさず眠華に近寄り、
「橘を保健室に連れていくから舞夜、後のことは任せるぞ。」
「承知致しました。」
そう言い残して、眠華をおぶって、保健室に向かった。一方、グラウンドの方は
「只今の学年対抗リレーの結果を発表します。1着でゴールした3-Bですが、不正があったため無効となり他のクラスが繰り上げとなりました!!なので、学年対抗リレー優勝は2-A!!」
歓喜の声が響き渡る。
そのままの流れで閉会式となった。
各クラスが整列し、表彰も執り行われた
バレーボール競技・バスケットボール競技どちらも男女共に好成績、そして、
「今年度の総合優勝1位は.....2-A!!
そして、今年度のMVPは2-A
城ヶ崎千聖さんです!!」
眠華を保健室に連れて行った千聖は
眠華の治療をした後眠華と一緒に閉会式に並んでいたが、寝ている眠華を放って置けなかった。
「千聖君行ってきて、私が見ておくから。」
「あ、あぁ頼む。」
委員長が寝ている眠華を支えて、千聖は生徒達の前に登壇する。
「おめでとう」
と校長から表彰され、生徒たちが拍手する、そして、体育祭は幕を閉じた。
教室にて、
「いやぁ~、快挙だな快挙!」
勝利の余韻に浸っていると
「だが、最後のリレーで1位になれなかったのは悔いが残る」
「ありぁ、シャーない、不正働いた3年が悪いだろ、結局の所無効になったからいいけど。MVPも城ヶ崎が取ったしこのクラス最高だわ。」
「楽しいことも束の間来週期末テストだぞ。」
「いきなり現実押し付けんじゃねえ。つーか中間の時も思ったけどお前テスト受けないのかよ。」
「?あぁというより必然的に受けれない、今はクラスには置いてもらえてはいるが学生ではないのでは、とは言っても前回は別日に受けた。今回もそうなるだろう。」
「お前今年大変だな、それはそうと.....テスト勉強教えてくれ」
「さっき江間の妹にも頼まれたしまぁ、いいだろう休日お前のところ行って教えてやる。」
「さすがだぜ城ヶ崎頼むわ」
その後HRをやって放課後となり、千聖一行は帰宅した。夕食を済ませ皆自室に戻った夜のこと、
「千聖様」
リビングの台所で皿洗いしている千聖にどこか落ち込んでいる舞夜が声をかけてきた。
「私の欲のあまりで千聖様を倒させてしまい申し訳ございませんでした。」
そう言って頭を下げる。
「別に謝らなくていい、これは俺の自己管理の問題だ。誰も悪くはないだろう
それに舞夜は俺の有志を見たかった。その期待に俺は答えられただろうか?」
「はい、満点です。」
「そうか。これからもよろしく頼む
舞夜」
「はい!千聖様もちゃんとお休みになられてくださいね、では、」
そう言ってリビングを後にし自室に戻って行った。
数日後、
「テスト勉強会とは言ったが、人数多すぎだろ!!てっきり俺と城ヶ崎と真夏だけでやるのかと思ったわ。」
「別に構わないだろうこのくらいの人数皆、テストに必死なのだから」
江間の父が所有しているビルの部屋の一角長いテーブルに千聖、舞夜、真白、
栞、フラン、眠華、稔海、江間、真夏の9人で取り囲んでいた。
「ご、ごめんね江間くん私たちまで一緒になっちゃって」
「いや、いいやなんも用意できてないから言っただけであって、気にしてねぇから。」
「お兄ーは準備がなって無さすぎ。もっと千聖さん見習えばいいのに、」
「しれっとディスるのやめろ心傷つくから」
「と、とりあえず勉強会始めちゃおうか明後日からテスト始まってちゃうし、」
栞の言葉で皆は教科書を開いてノートに描き始めて言った。2日間に渡る勉強会の後にテスト期間に入った。学校全体がテスト時期特有の空気感になっておりそれが4日間続いた。相変わらず千聖はテスト中でもフランの後ろに立っている
時間はあっという間に過ぎていき、
「いやぁーーーやっと終わった。」
一学期期末テスト最終日最終科目終了
「お疲れ様でしたフラン様。」
「よぉーし、お前ら放課後直ぐに帰らず残ってくれよ、話すことあるからな」
そうしてHRが終わり放課後、
「つーわけで、夏休み入ってすぐ、山でキャンプな。食材とかはこっちで用意するし、寝具もこっちで用意するから、着替えの用意だけしておいてくれ。」
「と、泊まりなんだね。」
「勿体ねぇだろ、安心しろ女子たちはコテージで寝てもらうから、あ、俺らはテントな。つーわけで準備よろしくな」
夏休みに入り約束のキャンプ場で準備を進める人達。
「ねぇお兄ーなんで私まで手伝わされてるの。」
「別にいいだろうこのくらい、テント建てるだけだし。」
「このテント工程多いやつじゃん!」
「シャーないだろ男3人で寝るんだぞ広くないと何が起きるかわかねぇだろうが」
「まぁまぁ、そこまでにしておいてさ残りのメンバーも来てみたいだしね。ほら」
2人が見た先にはちさと達が歩いていたその瞬間真夏が目をキラキラさせた
「よぉ~やっと来てくれたかってなんでお前両手に花の状況はわけ?」
チサトの右手にこの間告白してきた愛美が腕を組み左手に舞夜が腕を組んでいる
そして執事衣装の裾を真白とフランが掴んでいる
「.......色々あった」
「その色々が聞きたいんだよ」
千聖が拒んでいると
「では私からご説明致しましょう」
舞夜が説明し始めた
「私たちは皆で家を出て、そこにいる女狐をお出迎えに上がったのですが、私が目を離したうちに千聖様を奪ったのです」
「ちょっと!被害妄想激しくないですか、それに千聖先輩はいつあなたのものになったんですか。」
しばらく2人による口論が続いたが
「2人共、そこまでだ。せっかくキャンプだ楽しんでいこうじゃないか、」
「ですが...」
「いいな?」
「は、はい」
止めた千聖は反論しようとした舞夜に鋭い眼光を飛ばす。
「んじゃ、まぁとりあえず全員荷物コテージの中に置いてくれ、」
そうして、皆が持ってきた荷物をコテージの中に置いて、
「よし、じぁ、調理は任せた城ヶ崎!」
にこやかな笑顔で親指を立てたジェスチャーを千聖に向ける
「...任された」
「少し時間がかかるから、何が会話していてくれ」
千聖は炭を取り出し炭焼きの準備をし始めた。野菜と肉を切っていき串に刺していく、千聖が準備している中
「そういうことなら、自己紹介と行こうか、初めて見る顔ぶれもいるからな俺は九条江間利。江間って呼んでくれて構わないぜ、よろしくな!...じゃ次」
「え、えっと妹の真夏ですよろしくお願いします。」
「じゃ、次は僕だね、大竹稔海よろしくね」
次々と自己紹介が始まり最後に
「え、えぇーと、姫宮愛美です。千聖先輩のお誘いで参加する事になりました」
愛美は素っ気ない態度自己紹介した
「城ヶ崎が呼んだから誰かと思えば」
「人数は多い方がいいと言ったのは江間だろう、お互いを知るにはちょうどいい機会だ、それとも何か問題でもあったか?」
準備最中千聖は質問すると
「いや、ないけど、まぁいいやとりま楽しんで行こうや!」
そこからは、千聖が串に刺した食材達を焼いて行きみんなに食べさせて行った。
「あの、千聖先輩は食べないですか?」
愛美が恐縮したように聞いてきた
「あぁ、諸事情により食べれない。だからこうやって作る方に周っている。皆が幸せそうに食べてくれる様子を見ているだけ充分だ」
「そう、、ですか」
落ち込む表情を見せる愛美
食事を終え、少しの休憩が挟み
「よし、じゃあ遊ぶか、全員強制参加な、」
ボールを取り出した、江間がそのボールを高く上げる。
片付けを終えた千聖が遊んでいるみんなに近づこうとした時だった。千聖の身体にドスンと重く深い痛みが襲いかかった
千聖は痛みのある場所を手で抑え始める
遊びに夢中になっているみんなは痛みに苦しんでいる千聖に気づかない。木に寄りかかり、日陰で休んでいると
「大丈夫?千聖くん?顔色悪いけど」
栞が心配で声をかけてきたつ
「あ、あぁ平気だ、少しの間川沿いに行ってくる。」
「あ、うん、わかった」
千聖が林の方に入っていく姿を見た江間は
「おーい、城ヶ崎。川沿い行くだったら気をつけろ2日前に大雨ふって川の勢い強いから」
と忠告を聞いた千聖は何も言わずに裏手を見せて振った。
川沿いに着いた千聖は水面に写った自分を見て、
「やはり、自分でも無茶をしてしまっているのか、先程から傷が痛む。」
痛みのある所に手をやると今度は口から血を吐いた。咄嗟に手で抑えたが、溢れ出し川に血が流れた。血で汚れた手を川に突っ込み洗い流す。
一方、そのほかはと言うとボールで遊んでいた。が、
「ごめん江間くん私たち千聖くんのところ行ってきてもいいかなどうしても心配で、」
「確かに城ヶ崎のやつなんか今日変だよな、そういうことなら言って事情聞いてきてくれ。」
ボール遊びを一旦中断し、千聖のいる川沿いに向かう栞、フラン、舞夜、愛美。
大きな岩肌が並ぶ川沿いに来た4人だがそこに千聖の姿はなかった。
「あれ?千聖くんこっちに来たはずなのに」
辺りを見回しても姿はなく膠着していると
「はぁ~、千聖様そろそろ出てきてください、重要なお話がありますから」
と舞夜が呼ぶと、木の上で寝ていた千聖が落ちてきた。千聖が4人の顔色を見ると
「その感じだと、フラン様の執事をやめて欲しい...と言ったところか。」
4人は千聖の発言を聞いて驚く表情を浮かべた。
「わかっていらしゃったのですか?」
「いいや、揃っている顔ぶれだけで憶測をたてそれを言葉にしただけだ、わかっている訳では無い。逆に、わかっているだろう?俺が辞めるわけが無いと、列記とした書類は貰っているし、フラン様自体がのぞんでいるのだから仮にフラン様が世話係をやめて欲しいと頼んでも、フラン様の両親からのお許しが出ない限り俺はこの服を脱ぐことは出来ん」
山風が吹き荒れる中。千聖の言葉に反論出来ない一同、一時の沈黙が続くと千聖が古傷を抑え吐血し、膝を着いた
「千聖様!」
舞夜が千聖に近づき様子を見る。
栞と愛美は見た光景に呆気を取られる
フランは血を吐いた千聖をみて恐怖で足がすくみ足を滑らせ流れが険しい川に落ちた。落ちたフランに続き、咄嗟に立ち上がり着ていたベストとメガネを投げ捨て、川に飛び込む千聖。
「え、どうしよ!?」
「と、とりあえずコテージの方にいる人たちに手伝ってもらいましょう」
冷静さをかいた栞に落ち着いた雰囲気で提案する愛美たちはコテージの方に向かった。一方、川に流されている方は、
流れが激しくのに加え水深が深く千聖の身長でも足がつかない程だった。フランは溺れ暴れている。全く距離が近づくことがなく、ただただ流されていく。
ズドンと古傷が痛み水中でも吐血した
「古傷がなんだ。今の俺はフラン様を守るのが使命、こんな痛みで支障を来すことは出来ない!」
その時千聖の両目が光り輝き深く沈み蹴り出した瞬間川の水が飛沫を上げた。
溺れているフランをギュッと抱きしめ、
「フラン様、、お怪我はありませんか?」
川に流されるまま安否確認をする
フランは涙目になりながら頷いた
出張ったでかい岩に捕まりこれ以上流されないようにした。しかし、このさきは、高い崖になっており、これ以上流されては落下してしまう境地に立たされた
「はぁ、はぁ、寒くはありませんか?」
千聖は全身を川に埋めフランは半身浸かっている状態だった。質問に対して頷く
「ブハッ」
また吐血する千聖を見てあたふたするフラン
「ハァー、フラン様は、どうなされたいのですか?」
「?」
首を傾げるフランに対して千聖は語り始める。
「これは私の独り言として受け取ってください。私はフラン様がなにをお考えになっているのかさっぱりわかりません。フラン様は自己主張が乏しいお人ですから、私みたいな朴念仁はハッキリと言ってもらわないと気持ちや意思は伝わってこない。屋上で執事の事についていわれたのでしょう?以前、橘に執事を辞めないのかと言われましたが先程も言った通り、フラン様の意志とご両親の正式の書類がある限り、私が執事の立場を降りることはありません。ですが、少々限界が来ていまして、フラン様が高校卒業頃には私はもうこの世にいません。ですのでここからは提案がございます。フラン様は人の名前を発言することも書くことも出来ないという自覚をお持ちですよね?もし仮に発言したり書いたりしたら己の身が朽ち果てることもご存知ですか?」
静かに聞いていたフランの表情は険悪はものになっていった。
「それがフラン様のもつオッドアイ能力者の呪い。その呪縛を解放する覚悟はお有りですか?」
フランはどこか戸惑った様子でゆっくり頷いた。
「責任は全て私が負います。だから今は身を委ねてください」
そう言って、千聖はフランにキスをした舌を入れたキスを数秒間に渡り行った。
口を離すと途端にフランが胸を抑え苦しみ出す。そっと抱いて背中を優しく叩いていく。
「(痛い、痛い、肺がはち切れそうな痛みがする。)」
しばらく痛みは続いたが、苦しいのは収まっていった。
「どうやら、順応したようですね。フラン様これであなたの呪縛は溶けました。これから先、相手の名前を発言したり書いたりしても、悲劇が起きることはありません。試しに私の名前言って貰えますか。」
フランは口ごもっている
「フラン様は奥手な方ですね、一学期の間、私は1度もフラン様に名前を呼んでもらったことがありませんでした。もう呪縛に囚われることも無いのですよ」
そう言って、フランの頭に手を置いて撫で始める。そうしていると頬を赤らめたフランが口を開け始め
「.....ち、.......ちさ......」
ここまで言って口ごもってしまった。
「まぁ、いいでしょこれからの先の成長するフラン様がちゃんと言える時が来るのを待ちます。....っとそろそろ来てもいいはずだが、.....ブハッ!!」
先程よりも激しく吐血した千聖
「もう、ダメか」
そう悟り切った千聖のシャツをその小さい手で強く握りしめたフラン
「!、そう、心配な目をしないでください、大丈夫です」
安心させるように優しく手を乗せると
フランは何も言わずにポコポコ千聖の身体を叩き始めた。その表情は怒っているのか頬を膨らませている。
「ふ、フラン様?...あ、あの?おっしゃって下さないと何故怒っているのかわかりませんよ?」
この千聖の発言がフランの中に眠る何かをプツンと切った。手が止まったフランは深呼吸をして、
「なんで覚えてないの!死に至る所まで傷をおったのにも関わらず平然しているし、私のこと忘れている。かっこよくなっているし本当だったら執事の仕事をやる必要なかったのにみんなと同じような接し方で良かったのに忠実に尽くしてくるし、そのせいで、周りからもわかるくらい疲労溜まってるし、その事隠してまで限界までやるし、私が責任負う必要があったのに大丈夫の一言で済ますし、体育祭で呼び捨てした時も壁ドンした時も嬉しかったのに何故か謝ってくるし、ちさにはもう婚約者がいるし、私が何も言わないのが悪いけど突然早退していなくなった途端寂しくなるし、緊急事態の時に窓から飛び降りるし、料理ができて美味しいのにちさが食事をしたところ見たことないし、周りのみんなはちさに好意的だし、まさかちさが告白されるところを聞いた時はショックだったし、その後そんなつもりはなかったのに、あの子に執事を辞めさせろって言われたし、委員長達に私がちさの事好きだってバレてるし、今日だってそう、本当だったらちさの腕組んで歩きたかった!
ハァ、ハァ、ハァ」
早口言葉のようにペラペラと語ったせいか息切れを起こしたフランは、恥ずかしくなったのか両手で顔を覆った。手の隙間から見える表情は赤くなっていた。
そうして、
「えっと、突然のこと過ぎて整理が上手くいってませんが、とりあえず、俺は執事をやる必要性はなかったと?」
「そう」
「つまりもう執事をやめてもよろしいのですか」
「うん」
「....そうか、わかった。別にフランの事を忘れているわけではなかった。幼かったあの時、フランと初めてあった時のことは覚えていた拷問のあとの記憶はないがな、ただ、話していいことなのか?と思ってしまって口ごもっていた。」
っと、そんな話をしていると
「おぉ、やっと見つけたぜ、2人とも」
江間達が駆けつけてくれた、
手にはロープを持っており近くに気に頑丈に括り付ける。
「よし、こっちは準備OKだ」
ロープを投げつけ、フランの身体に巻き付ける
「まずはフランから」
皆でロープを引っ張って、川から上げる
「よっしゃああとは城ヶ崎だけだ」
もう1度ロープをもらい千聖は手に巻き付ける。
フラン同様に引き上げて貰うが、
「ブハッ」
激痛が走り吐血した
「ハァ、ハァ」
千聖が疲れで呆然としていると、流れてきた大木に勢いよく押され巻き付けたロープが離れ、激しい川に流された。
流された千聖を皆は唖然としてみることしか出来なかった。そんな中フランだけが川に再度飛び込み千聖を助けに行った
千聖が川から崖に押し出され、続くようにフランも飛び出す。両手を伸ばして手を取ろうとするが千聖は大木にぶつかった衝撃で気絶していた。
「(嫌だ、嫌だ、前みたいにしたくない、今度こそ...助けたい!)」
そんな時だったフランの両目が白く輝き出した急降下していく中伸ばした手が繋がると、千聖の中に眠る何かが砕け散った。水面に直撃する直前に千聖が目を覚まし、フランを抱えつつ体制を立て直し
水面を蹴って上空に飛翔した。ドスンと着地したところはみんなの前だった。フランをお姫様抱っこしていたがすぐさま膝をついて息切れを起こしていた
みんなは空から来た千聖に呆気に取られて閉まっている。
「平気ですか!千聖様」
「あぁ、まぁ、平気だ、とりあえずコテージに戻るぞ。」
「お、おう」
コテージに戻り先にシャワーを浴びて暖炉に火をつけて温まる。
「へっくしゅん( >д<)、;'.・」
「これ、着ておけ、シャワーを浴びたとはいえ風邪を引かれてはせっかくのキャンプが楽しくなくなってしまうのでな」
くしゃみをしたフランに執事のベストを着させる。
「城ヶ崎、お前着替えないのか?」
「あぁ、これしかない。だが、平気だこうしていれば乾きも早いだろうからな」
「なら、いいけどよ。じゃあ、俺らちょいと買い物行ってくるから休んで置いてくれよ」
「あぁ」
そう言ってコテージを後にして、買い物に行った。
千聖は左の手のひらを見て握って開いても繰り返した。そうしているとフランが両手で千聖の左手を抑えて指を舐め始めた。最終的には指を食わえた
「(前も思ったが甘噛み凄いな)」
2人の後ろからゆっくりと忍び寄る気配があった
「私のというものがありながら、お2人の世界でイチャイチャしないでくださいますか?」
黒いオーラをまといつつ笑顔なのに笑ってない表情はフランを驚かせた
「俺から仕掛けた訳じゃないぞ」
「わかっています、千聖様は奥手ですから、手を出なさい事くらいわかってて言ってます。」
舞夜はそっぽ向いて怒っている様子だった。舞夜に近づいて右手で頭を撫でる
「今はこれで機嫌を治してくれないか」
「うむぅ、こんなことで機嫌を無くす程安い女ではないんですよ。」
「家に帰ったら舞夜の要望に答えるから頼むよ」
「うーわかりましたそこまで言うのなら無かったことにします」
その表情は赤くなっていた
「悪いな」
千聖がそういうと別の方向から
「シャワー浴びたから舞夜さん浴びて来たら?」
栞と愛美と眠華がシャワー浴びて出てきた
「では、お言葉に甘えて浴びてきます」
舞夜がシャワーを浴びている間
「ねぇ、千聖くん、フランちゃんと川に流されている間に何があったの?なんか距離が縮まってるような気がするんだけど?」
栞がそんな質問をしてきた
「あの岩で身動きが取れない状態の時にフランに執事を辞めていいと言われた」
「え、それ本当ですか」
愛美が身を乗り出しつつ聞いてくる
「じゃ、先輩は二学期から普通の生徒になるですよね、その執事の正装も着なくなってちゃんと制服着るんですよね!?」
「まぁ、そうなるんだ...が」
「?何か問題があるんですか」
「正式な書類があるから軽率に辞めることが出来ない、だが、執事の立場を降りるのは確かとだけ言っておこう。」
「そう、ですか、それは良かったです」
しばらく団欒して、時間はもう日が落ちる所まで来ていた。江間達が、食材を買ってきてお昼同様千聖が料理する。夕食を食べ終わり。
「よお~し、さぁ、夜だ、花火の時間だァ」
「お兄、やる前に片付けてよ千聖さんに任せるんじゃなくて」
「うー、なんと手厳しい妹だ」
みんなで食器の片付けをしていると
「身体の方は平気?千聖くん」
「ん?あぁ、苦しくないから平気だ」
「そっか、なら良かった。」
片付けた食器を全て洗い流し外へと出て
ロケット花火や線香花火などで就寝時間まで遊び尽くした。とそんな中
「思ったんだけどよ体育祭で城ヶ崎がMVP取ったにしては、学校で全然騒がれてないよな?」
「そういえば、そうだね。去年なんてMVPを取った周りには人集りできてたもんね。」
「多分騒がれないのは、千聖くんがフランちゃんの執事であることと、舞夜さんが婚約者あること体育祭直前に姫宮さんが告白したからじゃないかな」
「ほぉ~つまり抑制になったわけだ。ここまで策略だったのかな?」
面白い笑顔を愛美に向ける江間
「べ、別に千聖先輩に変な虫が付くのは嫌だったので、先に先手を打ったんですよ」
「でも、どうなんだよ城ヶ崎的には?」
「正直、目立ちたくなかったから、ありがたいところだ」
「(今でも充分目立っている気がする)」
その場の全員が同じ事を思ったのだった
「あぁあ、終わっちまったか」
最後の線香花火の日が消え、
「よし、もう。遅いし寝るか、俺たち男子はテントで寝るぞ」
「それでは私たちはコテージで寝ましょう!」
皆がぐっすりと熟睡した中テントから出てきた千聖はコテージのテラスで柵に身体を乗せながら星を見上げた
「今日は月も星も良く見えますね」
暗闇の中から舞夜がそう問いかけ千聖に近づいた
「星はよく見えるが、今日は新月だぞ」
「.....あ」
千聖の言葉に足を止める
深く深呼吸すると
「ふぅー、そんなことを言うってことは、何か気がかりがあるじゃないか?」
「.....は、はい。千聖様が吐血した時抑えていた所、もしかして昔私が切ったところがいたんだのですか?」
「........いや、確かに抑えていたところは舞夜に痛みつけられたところではあるが、根本的激痛は内臓から来ていた。だから舞夜が気を落とす必要性は皆無だ」
「んーそれならいいのですが、もう痛みはないのですよね」
「あぁ、何故か不思議くらい無くなった」
「なら、いいです。それとは別に例の任務実行しても構いませんよね?」
「あぁ、そうだな、そろそろ実行しないとあいつがキツいだろうからな。だが、いいのか?」
「私から持ちかけたのです。それにあの子が入れば一層楽しくなりそうなので」
「そうか、なら頼むぞ、その後は俺がやる」
「はい、承知致しました」
一夜が開け朝となった
皆が起き始め朝食を食べ帰り支度をすませ、下山した
「いやぁ、飛んだハプニングもあったが、楽しくやれたなぁー。じゃ、ここで、解散だな、帰り気をつけろよ」
「あぁ、今度は学校で会おう。」
「うん、じゃあね」
山の麓でそれぞれ解散した一行は別々 の方向に歩いていく。住宅街に入り、
「あ、それでは私はここで失礼します」
愛美が一礼して角を曲がった。
ここは愛美が住んでいる家でのこと玄関のドアをあけ
「ただいま」
と言ってリビングに視線をやると酔いつぶれた愛美の母親がいた。
「あんた一晩居ないと思ったらどこ行ってたのよ。罰として酒買ってきない!」
「は?そんなもの自分で買ってくれば」
「ひぁー実の母親にそんなこと言っていいのこれがどうなってもいいわけぇ~」
そう言うと茶封筒をヒラヒラとさせる
「え、なんで、勝手に使ってるの!!」
愛美が怒号をあげる
「はぁー、子供は黙って親に献上すればいいのよ。わかったならさっさと酒買ってきなさいよ!!」
愛美は唇を噛んでその場から離れ自室に戻りベットに飛び込んで
「あんな親、この世からいなくなればいいのに」
そう口にし寝た。
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