第7話 気丈

ここは愛美の住む家夜のあかりに照らされるリビングにて

酔いつぶれてる母親がこんなことを呟く

「ち、こんなちっぽけな額しか稼げないのか、高校辞めさせて夜の街に突き出してやろうかしら。ヒック」

机に突っ伏した背後に黒い長剣を持った舞夜が母親を突き刺した。

翌朝、愛美が目覚めると

「あれ、あのまま寝ちゃったのか、はぁ、バイト行きたくないなぁ~」

起き上がり、身支度を整え出かけようと玄関先までいってふとリビングを見ると

そのには驚きの光景があった。血溜まりの床に壁。目をガン開きの母親が死んでいた。この光景を見た愛美は後ろに倒れ込んだ。その時愛美の両目が光り輝き

母親が殺された瞬間の映像が映し出され

「え、なにこれ?」

と頭を抱えその場に倒れ込んだ

しばらくして警察が来て家宅捜索に入った。家の周りに規制線が張られ、警備員もたって通さないようにしている。

そこに脚を踏み入れようとする千聖は規制線を潜ろうとすると、

「ちょっと、あんた何勝手に!」

1人の警備していた警察官が千聖の身体を捕えた。千聖は冷静に

「俺はこういうものなのだが、中に入らせてくれないか。」

といって警察手帳と似たような物を警察に見せると、

「ほぉー、本物の警察官相手に偽手帳見せてくるとはいい度胸だな、現行犯逮捕だ。えっと罪は詐欺罪と公務執行妨害。よし、このまま所に来いや」

捕まった状態から手錠をかけられた。

「ちょ、外でなんの騒ぎっすかって千聖さんじゃないっすか!!」

家の中から戀が出てきて状況を確認しに来た。

「千聖さん、あれちゃんと見せたんっすか?」

「あぁ、見せたが、どうやら偽物と勘違いしたらしい。」

「はぁ~、新人さっさと手錠を外すっす。千聖さんは所長からのお願いで来た重要参考人っす」

「え、でも、どう見ても部外者じゃないですか?」

戀から外せと言われても、質問する新人警官の言葉に戀は鋭い視線をする

「新人もしかして、ちゃんと外部講習聞いてないっすね。」

戀その言葉に首を傾げる新人

「(ん、外部講習、あぁ、関係ないと思って寝たてたやつか)」

「もういいっす、早く手錠外せっす」

「まぁ、信用出来ねぇけど、戀先輩がそういうなら」

と、ポケットを探る新人だが

「あれ、鍵がない!?」

「はぁ~、何やってんすか!すいませんっす千聖さん、このとおり許してくださいっす。」

新人の頭を掴み強引に下げる戀

「警察官という立場でありながら状況把握を出来てなく、先輩の信用性もない

挙句の果てには大事な講習も聞いていない、これでは市民からの信頼性も落ちる一方だ。」

喋りつつ手錠をカチャカチャして外す千聖。

「次はこんなことないようにな、それとちゃんと新人教育はしておけ、」

「肝に命じておくっす」

新人な手錠を返し家の中に入る

「まじで、なんなのあの人」

「あの人とか言うんじゃないっす。千聖さんは国を救った英雄なんすから」

血溜まりの出来たリビングにて、

「それでは、これはそちらにいる暗殺者の行いだと?」

「えぇ、任務でね、」

「わかりました。それでは遺体の回収と家宅捜索だけして、私達は撤収します。」

「えぇ、お願いします。それとここに住んでいる被害者の娘さんはどこに?」

家の中で捜索していた検察官にそう問いかける。

「あぁ、あの子ならさっき出かけましたよ。ちょうど千聖さんと入れ替えに」

「そうですか、わかりました、すみませんが俺はこれで失礼します。」

そう言って家を出で、歩き始めた。

上空には雨雲があり、雨が降ってきた。

少し離れた公園に目を向けると激しくなった雨の中。公園のブランコに座っている愛美がいた。

「ここにいては風邪を引いてしまうぞせめて屋根のあるベンチに座っていたらどうなんだ?」

「あ、すみません、そんなところじゃなかったので、」

ブランコに座っていたら愛美の頭上に傘を差し出す。

「とりあえず、移動しよう姫宮。」

「あ、はい。」

そう言って姫宮の手を取り、屋根のあるベンチに座らせる。しばらくの沈黙が続き、

「ち、千聖先輩の私服初めて見ました。」

「?あぁ、そうか、姫宮の前で見せた姿は学園の制服と執事の正装しかなかったな。」

「えっと、その似合ってます。とても」

愛美の言葉に対して

「...そんな落ち込んだ表情で言われてもあまり嬉しくはないな。」

「!ご、ごめんなさい。......私なにをしていいのか分からなくなっちゃってどうすればいいですかね?。」

移ろいつつちさとに質問してきた。

「...姫宮がどんな問題を抱えているのか分からないが、もし、姫宮さえ良ければだが、俺の家に住まないか?」

「え!........」

千聖の提案に驚き示す。が

「そ、そのお言葉は嬉しいんですが、ダメです。私が千聖先輩の家に住むなんて出来ません。」

涙目で頭を抱える愛美。

「俺も...俺達も、どんな問題を抱えているとしても受け入れる準備も覚悟もしている。だからダメと決めつけるな」

千聖の言葉と同時に雨が一度上がった。

と、ぺちゃっと泥を踏む足音が2人に近づいた。

「おうおう、やっと見つけたぜぇ、さっさと金返してくれねぇかなぁまなみぃ~」

「ひっ!」

グラサンにスーツ姿の男たちが鉄バット

をもって脅してくる。

「こ、今月分はまだのはずじゃ。」

「んなもん、関係ねぇよ、お前が金返してくれりゃ時間なんて関係ねぇんだよ」

借金取りは段々とヒートアップしていく

そこに千聖が割って入る

「横槍入れてすまないが、その借金いくらあるんだ?」

「あぁ、もしかして、あんちゃんが代わりに払うのか?」

「金額によってはな」

「700万だ。つってもピッタリじゃねぇけどな、690万ちょいって言ったところだ。」

「いいだろう。俺が代わりに払う。」

そう言ってメモを取り出し何か書き出してメモを引きちぎり、借金取りに渡した。

「ここの口座に金が入ってる。借金分抜いておけ」

「毎度あり。じゃ俺ら用が済んだからトンズラさせてもらうぜ。」

そう言って帰路に歩いていった。

「え、いいんですか、私

...なにも返せませんよ。」

恐怖の目をしている愛美に

「なにも、見返りを期待してあんな金を代わりに払ったわけじゃない。...

姫宮。先程の提案。少し言い方を変えよう。....俺たちと共に来い。姫宮のいる場所は作っているから。それに俺も姫宮のことを知りたい。だから姫宮も俺の事を知るべきだと思うのだが、...決めるのは姫宮だ

来るか来ないかはお前が決めろ!」

千聖が言葉を発言している最中。日が出てきた。そして、愛美は泣いた、それも豪快に泣きじゃっくった。

「うわぁぁぁーー」

そしてしばらく公園に座り尽くした。

力尽きた。愛美を家まで運び。

「おかえり。千聖くんって、濡れてる!!!」

愛美をお姫様抱っこした千聖2人は、帰路に歩いく途中で、もう一度土砂降りの雨が降り。雨を凌ぐ物もないため。濡れて帰った。愛美は意識が朦朧としている

「栞、悪いんだが、姫宮をお風呂入れてくれないか。どうやらまだ意識がはっきりしていないようだから。」

「千聖くんは、どうするの?」

「俺は別の方法で乾かす。」

そう言って、愛美を栞に預け、2人は脱衣所にはいっていった。

そして、千聖はリビングのキッチンの先にあるドアを開け、トレーニング器具が入っている部屋を通り抜け、もう一度ドアを開けると、もうひとつの脱衣所にはいっていき濡れた服を脱ぎ始めた。

金属質の重りを纏った全身タイツ姿でサウナ室にはいって濡れた身体を乾かした。数十分後。サウナから出てもうひとつの私服に着替えた千聖はリビングで休んでいた。そうしていると、脱衣所から栞が戻ってきた。

「姫宮はどうだった?」

「うーんと、動揺している感じだった。今はゆっくり休んで貰ってるよ。」

「そうか....俺は間違った行動を取ってしまったのだろうか?」

「一体、あの女狐と何があったのですか。」

「どう言った理由かはわからんが。

姫宮は700万の借金があった。それを重荷に感じていたから、代わりに背負ってやったんだが、」

「(え、700万、借金、背負った。千聖くんって一体何者?)んー、もう少し様子を見てみたらどうかな。今は愛美さんのことを知るべきだと思うからさ。」

「そうだな。」

「それは、そうと。千聖くん話があるから私の部屋来てくれないかな?」

「あぁ、いいぞ。」

そう言って2人は、栞の部屋に入った。

「あまり部屋をいじってないんだな。」

栞の部屋に入り、第一声がそれだった。

「え、そうかな。最初よりは変わってるけど。」

「いや、もっと...こう色鮮やかになっていると思っていた」

「あはは、皆が皆そうじゃないよ。私は私だから、これでいいと思ってる。」

「そうか、それで本題は。」

「千聖くんから振っといてそれ言うんだ。」

「こちらから会話を出したんだ。変更する場合も俺からだろう。」

「ふふ、そうかもね。それで話っていうのは、....私がここに住み始めた頃に千聖くん手伝って欲しいことがあるって言ったよね。どんなに時間がかかってもいいからって、そう言われたけどいつまでも結果を出さないのはどうなんだろうって思って、だから、私覚悟を決めたんだ、千聖くん....どんなお願いでもお手伝いでも、私で良ければ千聖くんの力になりたい。」

笑顔を浮かべて千聖にそういった栞

「手伝って欲しいことと言うのは、これからはフランと一緒に風呂に入ってくれないか。」

「.....え、そんなことならもう毎日入ってるちゃってるよ舞夜さんと真白ちゃん眠華ちゃんの5人で入ってるけど?」

「え?あの風呂の狭さで、」

「うん、ちょっと狭いけど。何とか入れている感じ。」

「俺が..言う前に。」

「言い出しは、舞夜さんだけどね、みんなでお風呂入りませんかって、」

「...舞夜には、不意打ちばかりだな。

...栞に頼みたかったのは、それだけだ」

「え、それだけだったら最初から言ってくれれば良かったのに。」

「落ち込んでた栞に頼むのは適正では無いと思ったんだ。だから栞の決心が付いてから、頼もうと思っていた。」

「そう、だったんだ。じゃあさぁ、千聖くんの頼み事とは別に、この家の家事を手伝わせて貰えないかな?」

栞の発言に目を見開く。

「いいのか、量が量だぞ。」

「私からお願いしてるんだよ。いいに決まってるじゃん。」

「そうか、それと単にこれは俺が持ってる疑問なんだが。聞いてくれるか?」

「どうしたの?」

「昨日のキャンプの時、フランに執事をやめてくれといわれ以前よりもフランが喋るようになったんだが、俺の事を

『ちさ』という呼び方をするんだが、何故だと思う?」

「あぁ、確かに、とをつければ本名なのにね。けど、その答えは単純で、フランちゃんが千聖くんに対しての特別な意味でそう読んでるんじゃないかな。ほらみんなが江間くんのことを本名で呼ばないみたいなさ。それにさ、千聖くんは『ちさ』って呼ばれて嫌な気持ちはないんでしょ。」

「ああ、」

「だったら、いいんじゃないかな私もいいと思うよ。2人が近づいた感じで」

「そうか、つかぬ質問をして悪かった

これからもよろしく頼む」

「うん!」

そうして2人の話が終わり。一緒にリビングに戻ると、不穏な空気感が流れていた。テーブルに座っているフランと真白は恐怖心で震えており、ソファに座っている。舞夜と愛美は睨めあっている。そして眠華は寝ていた。

「身体の調子はどうだ。姫宮」

千聖が声もかけると姫宮はそっぽを向いてしまった。

「特に、異常はないので大丈夫です。」

「それなら良かった。」

千聖はキッチンに立ち、何かしら作り始める。しばらくそうしていると。

「あの!千聖先輩」

ズボンにシワをつけるほど握りしめ、大声を上げた。そして俯きながら、語り出した。

「私、やっぱりここに居ちゃダメです。千聖先輩のことは大好きですけど、これ以上先輩の施しを受けるのは嫌なんです。」

頭を抱える愛美の前にコトンと食器を置いた千聖。音に気ずき顔をあげる愛美は

「え、なんで?」

「それは、お昼だからな昨日の昼からなにも食べていないんだろ。食べないと身体を崩す原因になってしまうぞ。」

少しの間が空いて、ドンと机を叩くと。

「何処まで、優しいですか!!!。私、ダメな女なのに、先輩に告白した時は拠り所が欲しくてやった。一昨日のキャンプなんか、先輩を自分のものにしたかった。そんな下心丸出しの私を最終的には多額の借金まで、支払って、なんで.....なんで?」

愛美の疑問に呆れたように語る舞夜

「自分勝手な女ですね。確かに千聖様は心優しいお方です。ですが、誰にでも優しいわけじゃない。本当に優しくするのは、相手のことが知りたい時だけなんですよ。貴方は幸福者です。だって、千聖様がこんなにも優しくするなんて滅多にないんですよ。それを貴方は潰そうとしている。そんな言動を吐いていいのですか。自ら縁を切ってたら、後悔することになりますよ。」

「そんなこと言われたって、私には先輩の近くにいるのはふさわしくない。」

「自分で言ってて悲しくないんですか、それにそんなこと言っても千聖様が見捨てる事なんて無い、大人しく世話に妬かれて下さい」

歯を食いしばって、涙を流しながら

「なんなんですか、全く。」

目の前に出された料理を貪り食って行く

しばらくして食事が終わり。愛美の食べた食器を片付けると、

「ちょうどいいから、姫宮と栞は俺と一緒に来てくれ。」

「?、何処に行くの?」

「近くの役所だ。そう遠くない。」

そう言って近くの役所に出かけた。受付の前に立ち書類の入った封筒を渡す。

「2部。お願いします」

「はい、承知致しました。少々お待ちくださいね。」

役所の中には、色んな人が仕事していた

待機所で座っていると、

「ねぇ、千聖くんさっきのってなんなの?」

「....あれに関しては、帰ってから話そうただ、あれが無いと色々とややこしくなるっとだけ言っておく。」

「そう...なんだ」

しばらくして受付から

「千聖さん」

と受付の女性が声をかけた。呼ばれてから受付にたち

「はい、前回と同様書き留めて起きましたので、これでなんの問題も無くなりました。お幸せにしてあげてくださいね」

ニコニコの笑顔で書類を渡す。

「元からそのつもりだ、いつも悪いな今後とも頼む。」

「はい、こちらこそ」

そう言って役所を後にした。

そして、家に着き。リビングで千聖から説明が入った。書類を2枚片手に持ちながら、

「疑問に思っている事の説明をする。

この書類だが、1種の養子援組書だ。簡単に言えば、家族になる書類といった方がわかりやすいな。俺も皆も見ての通り成人していない。お互いが成人していればこんな書類は必要ないんだが、そうは行かないのが現実だ。本来なら親権がある者は説得し了承して貰ってこの書類に印鑑を押してもらうのがセオリーなんだが。親権が無いものは、さっきやったように役所の印鑑で成立させる。これが有るか無いかで、関係性の問題を無くせる。」

「.....関係性?」

皆が顔を横に傾ける。

「例えば、血縁関係もなく、同棲する関係性も無いもの達が、なにも無しにひとつ屋根の下で暮らすことは出来ないということだ。」

「それって、犯罪という言い掛かりを付けられるから?」

「まぁ、そういった解釈で良い。これで栞の疑問も無くなっただろうか」

「あ、うん、ありがとう、教えてくれて。」

「別にいい、話しておかないととは思っていたから 。....?」

千聖が愛美に視線をやると、愛美は座っていたソファに倒れ込んだ。呼吸は荒くなって意識も遠くなっていった。

「姫宮、悪いが触るぞ。」

そう断って、おでこに手で触るととても熱かった。

「栞、冷蔵庫の中から熱冷まし出してくれ。舞夜はタオルを濡らして持ってきてくれ、頼む。」

「うん、わかった。」

「不服ですが、千聖様の頼みなら」

2人はそう言って準備にかかる。

千聖は愛美を抱えて、2階の部屋に寝かした。

「痩せ我慢と言うやつか。築くこともできず無理をさせてしまって悪かった。」

「千聖くん持ってきたよ。」

「あぁ、ありがとう。」

それから、熱冷ましを貼り、その上に濡らしたタオルをかけた。

「よし、あとは、栞。様子を見ていてくれ、色々と用意してくる。」

「うん」

舞夜と一緒に部屋を飛び出し

1階リビングで作業し始めた

2階では、愛美が目を覚まし、起き上がろうとしていた。

「ちょ、ちょっと今は安静にしておいて、凄い熱だから。無茶してはダメ」

「そうも、言ってられないんです」

ベッドから出ようとしたところでドアが開いた。

「薬を持ってきた。今日はこれを飲んでおとなしく休め。悩みや不安は明日聞こう」

「うぅ、分かりました。」

押し切られた愛美は渡された薬を飲んで再度、ベッドに寝た。

「あの、お願いがあって、.....私が寝付くまで手を、握って貰えませんか?」

「あぁ、いいぞ、」

「ありがとう、ございます。zzz」

手を握って直ぐに、眠りについた。

「意外とあっさり寝たね。」

「そうだな、緊張が溶けたんだろう」

「もう、戻っていいぞ。あとは俺が見守っておく。」

「じゃ、リビングで休んどくね」

開いた扉を閉めようとする時

「あ、待ってくれ栞。」

「?どうしたの」

「さっき回した洗濯物取り込んで干しておいてくれないか」

「ああ、こんな状況だもんね、わかった最初の家事仕事、やっておくね。」

「あぁ頼む。」

そう言って扉を閉めた。

1階に降りた栞は頼まれたとおりに脱衣所に行って、洗濯機に入った洋服たちを取りだし、外に干した。干し終わった時バイクの止まった音の後に玄関先のポストにボトンと音がした。

玄関先にて向いてポストを開けると一通の手紙があった。その手紙を持ったまま

「フランちゃん、誰からか手紙届いたよ。」

そう言って、渡すと差出人を見た瞬間

フランは大量の冷や汗と共に身体が震え出し、強ばった表情になる。

「ど、どうしたのですか?」

内容を読み、でたことばが

「む、...迎えが来る」


その頃、帝都の空港では一際容姿が異なる女性が

「はぁ~、イセリアとは違って、ガレムは狭いわね。......待ってなさいよフラン私は認めてないから」


時は経ち、夕飯時。

「うぅ、」

寝ていた愛美が起き上がり

「頭痛い」

辺りを見渡し、千聖がいないことに気づくと、部屋を飛び出し、リビングに降りた。

「起きたか、今度こそ体調は平気なんだろうな。」

「あ、はい、まだ、身体はだるいですが熱は下がりました。」

夕飯の支度が整っているなか、千聖が愛美に近づき、おでこに触る。

「確かに熱は下がってるな。これからは体調に気を配るようにしろ」

「あっはい、あの、私、バイトあったんですけど?」

「それなら、休みの連絡は入れて置いた。それと、勝手ですまないが辞めるとも言っておいた。」

「え!?、そんなことしたら千聖先輩が払った私の借金が返せないじゃないですか。」

愛美の反論に対して、冷たい視線を向ける

「...死にたいか....姫宮、お前はオッドアイ能力者だ、能力者は常に狙われている。死にたくなければ、大人しくしていろ」

愛美は俯いて悔しい表情をしていた

と、その時、愛美のお腹がぐうぅと音を立てた。その瞬間恥ずかしいのかお腹を抑えて赤面する。

「腹がなくのは元気な証拠だな。夕飯の準備はできている。満足するまでたらふく食べろ。」

「満足するまで食べたら、太るので遠慮しときます。」

席につきそんな言葉を放つ

「そこまで言えるなら、心配は無さそうだな。...姫宮、これからはお前もこの家の家族だ。いきなりこんなこと言われても困るのは承知の上、だからこそ、悩みも不安もぶちまけろ。俺たちはそれを拾い解決に導いてみせるから。...これは皆も同じこと。まぁ、お互いをお互いで支え合って行こう。」

食事を取り終わり、皆が就寝時間になった頃、フランの部屋にて、

「(結局、この手紙を渡せなかった。せっかくちさといい感じの関係になり始めたばかりなのにまた、離れ離れは嫌!)」


翌日、リビングにて、キッチンで洗い物をしていると2階から、フランが降りてきて、ソファに座った。

「(今のうちにこれを渡しておかないと、時間が過ぎるにつれ渡せなくなってしまう)」

とフランが悩んでいる中。ちさとはと言うと

「(昨日も思ったが、フランは起きるのが早いな、まだ日が出ていない時間なんだが。)」

現在朝の四時、まだ日が出るのは先の時間である。

「(もしかして、一学期の間も、昨日や今日のように起きていたのか。俺が部屋に行く間も起きていた?・・・フランは律儀な人なのか?とりあえず、何か飲み物でも出すか。)」

棚から、粉の入った瓶を取り出しコップに入れて、お湯を注ぐ。

「フラン様、こちらをどうぞお飲み下さい。」

千聖の発言に呆れながら目線を見つめるフラン。

「・・・」

お互いに沈黙が続き、そして、千聖が気づいた。

「あ、すまんフラン。まだ、余韻が残っていたようだ。やめてくれと言われたのにすまなかった。」

「べ、べつにいい。飲み物ありがと。」

ココアを飲み、表情が溶けるなか千聖がフランから離れようと足を進めた時服の裾を掴まれた。

「ん?どうした?フラン」

「え、えっとこれ」

気まずそうに、昨日の手紙を渡すフラン

「これは、差出人はフランの側近の人か」

中身を読み始め、

「契約は、フランが卒業するまでの話じゃなかったか?」

「....実は、身内には何も言わずに.......王宮飛び出した」

「ならなぜ契約書に印鑑が押されていたんだ?」

「それは、ちさを知ってるメイドとSPが肩代わりしたから」

「あの二人か、それで迎えに来ると」

「うん」

「そうか、最終的な決断はフランが決めろ例え、側近がどういおうとフランの人生はフランが決めていい。」

気まずい空気がその場に漂う。

「この話はここまでしておこう、せっかくの朝が、心苦しくては今後やっていけなさそうだからな、話は変わるが、俺は今日、朝から出かけるから栞か舞夜に昼は作り置きのものを温めて食べてくれと言っておいてくれ、それから夕飯までには帰ってくるつもりだが、遅くなる可能性もあるから、その時は家の事を頼む。できるなフラン」

「うん、わかった。伝えとく」

そう時間後、すっかり、日が出ている時間帯。

「ん、お早いですねおはようございますフランさん」

「おはよう」

「千聖様は?」

「ちさなら出かけた。それとお昼は作り置きがあるから温めて食べてって、帰りはいつになるか分からないから家の事頼むって言ってた。」

「そうですか、フランさんはあのお手紙は渡せたのですか?」

「うん、目は通して事情は知ってもらった。」

「そうですか、詳しいお話は聞かないでおきますね。....それはそうと変わりましたね。初めて会った時とはもう、印象が逆です。何かキャンプであったのですか?」

「えっと、確か、呪いを消すために、ちさからき、キスされた。」

フランが恥ずかしく言うと、舞夜の中で何かがバリンと砕けた。

「フランさんその話詳しく教えてください。」

舞夜はいつもの怖い表情で、フランに迫って言った。


一方、出かけた千聖はと言うと、駅前で立ち待っていると。

「あ、千聖、待たせてごめん」

稔海が重装備で声をかけた

「いや時間通りだ、それに待ってないから安心していい、むしろそこまで用意しておいて、遅れない稔海はすごいと思う。」

「えへへ、そっかじゃ、行こうか、推しに会いに!!」

そう、今日は以前教室で貰ったアイドルチケットの日なのである。「四話参照」

稔海と一緒にコンサート会場に出向き入場手続きを済ませ内部に入る。

千聖たちの位置は、会場二階の1番奥の片隅だった。

「千聖は、何か持ってきた?」

「いや、あいにくそういった物は持っていない。」

「なら、あげるよ、沢山あるから」

「去年より壮大になってないか?」

「当然だよ、応援の証みたいなものだからね。推し活最高!」

稔海からペンライトを2本渡された

稔海は、法被に八巻にタオルを首にかけうちわにペンライトを4本持ちのガチガチの推し活衣装に身を包みこんでいた。

「やはり、稔海は普段とのギャップの差が激しい人だな」

そう思っていると観客席側の照明が暗くなり、ステージの中心から人が登場し、それに合わせて曲が流れ始めて、会場内が歓喜に溢れた。アイドルが歌い出すと、それがさらにヒートアップして行った。隣で稔海が生き生きしている中

「去年よりも能力が向上している。これは早めに手を打たないと暴走する危険性があるな。」

ペンライトで輝きを放つ観客に見守られ

国民的アイドルのライブは無事終わり

「観客席は1番安いところだったけど、その代わり握手会のチケットが買えたから損は無い!!」

「よく取れたな」

「色んな人の名前使って応募すれば、1枚くらい当たるよ、今回は奇跡的に2枚取れたけどね。」

途方もない位の人の行列が出来少しずつ進んでゆく。続々と人が裁かれていき近づいて行くと、

「キヤァーー」

という叫び声共に銃声が辺りに響いた。

「動くな、変質者共。大人しくしてりゃ、お前たちの推しってやつは傷1つ付けりゃしない」

5人組の武装したテロリスト達が

アイドルを取り押さえ、車へと連行させる。銃口をファンたちに向けていると、銃が真っ二つになり、

「な!」

焦ったテロリストの1人に千聖が上から回し蹴りをきめ、ファンたちがいる方に飛ばし。

「そいつを取り押さえて!」

そう指示すると、唖然とするファン達は咄嗟に、身体で抑えた。車に入れられる前に全速力で駆け走り、

「白咲流 拳闘術 神楽式 四波発勁」

2人のテロリストを吹っ飛ばし。アイドルを救出した。

「ち!失敗だ。車出せ!」

車にエンジンがかかり、逃亡をはかるが

手に持っていた銃を2発撃ち。その2発の銃弾は車の後輪タイヤに辺りパンクして転倒した。

「ちょっと、大丈夫ですか!?」

マネージャーらしきスーツ姿の女性が立ち寄ると、

「警察と救急車を呼んで下さい。それと、握手会を中止に、気を失っている。念の為病院で検査した方がいい。じゃ、あとはお願いします。」

アイドルを女性に渡し。

「あ、ちょっと待って、せめて名前と電話番号くらい教えて言って」

立ち止まって、すぐさまメモを取り出し

「はい、これは俺の携帯の番号です。名前は城ヶ崎千聖と申します。では」

そう言って稔海と合流し帰路に立った。

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