第15話 光輝
激しい雨が降りしきる、走行中のクルーズ船の甲板に千聖と謎の男。
「よく気づいたねぇ、あのテロがブラフだってこと、気づいて貰えないと思ってたよ...兄さん」
「こちらにも優秀な人がいるのでな。所で、俺に弟がいた覚えはないんだが、」
「あれれぇ、忘れちゃったのかなぁ?まぁ、しょうがないよね幼い頃の話だし、一緒にいた事もなかったからねぇ。いいよォ、話してあげるよ。僕と兄さんは同じオッドアイ能力者の遺伝子があるのさ、存在意義はなく、ただただ、クソッタレた研究員の実験台に作られた。悲しき兄弟。と言っても、兄さんの遺伝子を組み込んで複製されたのがこの僕なわけだから、兄さんが分からないのも当然な訳さ」
「なるほどな、ではなぜ、今俺の前に経つ必要がある?」
「それは、完全な肉体になるためさ。僕は劣勢品、定期的オッドアイ能力者の血と肉を食さないと生きていられない訳さ、けど最近は供給が途絶えてね。生きていられないのなら、奪うしかないよね、僕がこうなることになった元凶の肉体をさぁ!!」
「だから、今俺の前に現れた訳か」
「そうだよ、1度は失敗しているからね、今度は僕が手を下すから一筋縄では行かないよぉ。...僕がここで兄さんに勝てば、僕は一生生きてられる。苦しみも痛みも忘れて、全てをこの手で掴むことが出来るんだ!兄さんが手にした栄光も名誉も掴める。だから僕の理想のために死んで兄さん!」
「...悪いがその理想は途絶えるぞ!」
「言ってくれるじゃん!...アラモス」
謎の男はそういうと、舞夜や千聖と違ったサイボーグを装着する。全体的に青色の装甲が周りの風景に溶け込む。と、同時に千聖が何も言わずともXサイボーグが装着された。
「共鳴現象か、これは厄介なことになった」
「さぁ、始めよう、命をかけた戦いを!」
お互いに剣を抜き、交じり会う。激しい攻防が続く中、上空ではみんなが乗っているヘリが飛んでいた。中では舞夜も合流していて、下の戦いを眺めている。
「暗くてよく見えない」
「悪天候だから仕方がない」
「え!?この反応ってまさか!」
また、夏樹が驚く表情を上げた
「今度はなんだ!」
「教官、まずいです。この反応は混合能力者の反応です。しかも一桁の反応じゃありません、低くても100人近くの血が順応しています」
「実験で生まれた。イーター種か」
「?説明してください。イーター種ってなんですか?」
「君たちも見たはずだ、千聖の腕を食べたあの怪物を...私たちはあれをイーター種と呼んでいる。」
「でも、あれは完全に人の形をしているけれど?」
「...人の形を装った怪物だ。...その昔、男女2人の研究員の間にオッドアイ能力者が生まれた。その2人がなんの研究員かと言うと、オッドアイ能力者の研究員だった。両親と研究員達は、その子供の遺伝子を使って、複製を作った。だが、その複製は欠陥があって、人の血を喰らうことが必要だった。それが今戦っている相手だ」
「まって、実験台に使われてたのが千聖ってことは、つまり」
「ありとあらゆる、能力者の血が順応できるということです」
「そういう事か、だから暴走せずに、保っていられるわけだ。」
「私も混合能力者ですが、持てた能力はひとつだけです。2つ以上は人の形を保ってはいられません」
「拒絶反応を起こして、イーター種になるからか」
「そして、理性をなくして、血を求めることしか出来なくなる」
ヘリの内部が暗く淀む
「おぞましいだろ、これがオッドアイ能力者の現実だ」
ヘリの会話のなか外の兄弟対決はヒートアップして、空中戦を繰り返していた。
4つの眩い閃光がぶつかり合い、火花を散らす。しかし、決着は突然だった。船の甲板に叩きつけられ煙がまう、煙の中に倒れたのは千聖だった。
「あれれぇ、意外と呆気なかったなぁ
サイボーグを装着して、能力を促進させているにしては、差がありすぎたねぇ」
Xサイボーグの装甲がボロボロに亀裂が入り、欠け落ちるくらいボロボロになった。
「さぁーて、呆気ないけど。死ね兄さん」
剣が降りかかる瞬間空から黒剣が突き刺さる。
叩きつけられた時ヘリにいた凪紗が
「舞夜、剣をだせ!」
「...はい!!」
舞夜は咄嗟に剣を取り出した。その剣を能力で引き寄せ、ヘリの扉を空けて
「どうする気なのですか!?」
「何、ささやかな手助けをするだけさ、受け取れ!千聖」
舞夜の黒剣が空を切るように凪紗によって投げ出された。その剣が甲板に突き刺さった。驚きで身体が硬直した男に隙を着くように膝蹴りをかます。
「グハッ......チッ、やっぱそう上手くは行かないかぁ、でも、今のでわかった、僕は兄さんより強い、複製品の僕がオリジナルの兄さんより強いんだ。でも、やっぱり、兄さんの血を食べないと、僕の存在意義を証明できない!まだやれるよね兄さん!」
走って距離を詰める男に、黒剣を抜いて振りかざして吹っ飛ばした。いつも通り黒剣は白く輝きを放つがその輝きはいつも以上に増している
「な、なんで!!」
「...お前は、サイボーグで能力を促進させていると言ったな、悪いが俺は逆だ、サイボーグの装着するのは身バレ防止と、能力の抑制のため、弱く感じたのはそのせいだ。」
「ナンダイ?らしくなく痩せ我慢かい?」
「今の、一撃で分からないとは、実力を理解出来ていないのだな。ここからは全身全霊で御相手しよう」
「...いいよぉぉ~それだよ、本気の兄さんとやらなきゃ、勝っても意味が無い!」
再び激しい戦闘が繰り広げられる。
サイボーグが砕けた千聖の動きは男を
遥かに速くなった。膝を着いて
「まさか、これほどとは、流石オリジナルだねぇ、」
「もう満身創痍だろ。それ以上は例え俺の遺伝子があっても暴走するぞ」
「なぁ~に、こっちに取っては好都合さ、僕は兄さんの肉体を喰えればいいからねぇ!」
青く輝く閃光が黒く淀んだ閃光に変わると、一際速くなり、千聖を翻弄する
「チッ!」
その速さに圧される
男は狂ったように斬り掛り
圧される攻防がしばらく続いた
しかし、その時は突然起きた、お互いの装甲はボロボロになり、満身創痍の中倒れたのは男の方だった。
「ふぅ」
甲板に立ち治した時だった、再び扉が開いて、
「おやおや、今度は兄弟を殺していまいましたか、まぁいいでしょう不良品でしたし」
「瑠司亜、友永...脱走したのは本当だったようだな」
「えぇ、あんなザル警備私にとっては簡単ですよ」
「あんたもそいつもなんなんだ?」
「...そうですねぇ、まぁ、少しお喋りをしましょうか、...この子はあなたの遺伝子で作られたオッドアイ能力者です。ただ違うのは常に他人オッドアイ能力者の血を欲するところで集めるのが大変でしたよ」
「じゃ、今までのテロリストが回収した能力者達は全てそいつが喰ったのか?」
「えぇ、そうです。...私はオッドアイ能力者を研究する研究員でした。研究する一環として、男女2人の間で子供を作るということがありました。そこで生まれたのが貴方です。あなたを産んだ2人は狂ったように研究を進めました。そこに私を加わって遺伝子操作で複製されたのがこの不良品。貴方は最高傑作だった。だが、生まれて3ヶ月たったある日姿をくるませた。どこをほっつき歩いているのかと思いきや、まさか今目の前にたっていると思うと驚きでしかありませんね...それにまさか貴方が私たち研究員に敵対するとは思ってもいませんでしたぁお陰様で進められる研究が止まりましたよ」
ずっと黙ったまま友永の独り言を聞く
「ですが、もう貴方も要りません、先の戦いでだいぶ消耗したようですし、輝きが薄い、もうすぐ寿命なのでしょう?」
「あぁ、寿命が近いのは確かだが、その前にあんたを止めればいいだけの話だ。」
「おや、もうやる気ですか?もう少しお話していたいところでしたが、まぁいいでしょう」
友永は懐からボタンを出した
「これはこの船につけてある爆弾のボタンです。これが押されてから10分後にこの船は木っ端微塵になります」
「お前はなんのためにこの船をジャックしたんだ!」
「当初の目的は貴方を喰らうことでしたが、もう不要なので、古代の神器を取るためにこの船は奪ったんですよ乗客と一緒にね。」
「古代の神機?」
「誰も踏み入れたことの無い場所にある初代オッドアイ能力者の英雄が使っていた。武器の1つです。強大な能力の持ち主ですから、手にすることが出来れば貴方と同等かそれ以上の成果が得られる。まぁ、その場合貴方が邪魔なのでここで排除しますがね。」
友永はボタンを押した。タイムリミットは10分間
「能力者じゃないお前が俺に勝てるとでも?」
「そんなわけ無いでしょう。これを使うんですよ!!!」
ドス黒い液体の入った注射器を首に差したすぐにイーター種が誕生した
「...ァァ...チカラガミナギル...コレガジッケンノセイカ」
今回のイーター種は言葉が喋れておりおぞましかった。しかし、それだけでは止まらなかった。不良品の男を持ち上げて、貪り尽くしたボリボリと骨を砕く音が激しい雨と共に聞こえてくる。
さらに大きさも増した。
「ァァ...アア...」
このイーター種を目の前にして、千聖は落ち着いていた。
「もう、出し惜しみをすることも無いか」
「FEELII...LimitOver」
この言葉のあと、ボロボロになったソディアスの装甲が輝きを放って一瞬で消えた。
「ヴァァァ」
奇声を発して猛突進してくる、それをみかわし、蹴りをかます千聖。吹っ飛ばされたイーター種は壁に練り込む。すぐに立ち上がり、何一つ傷がなかった。
「やはり、前回と一緒か...」
イーター種は突然悶え苦しんでいると背中から翼が生えた。
一方ヘリ組は
「なんですか、あれ、気持ち悪い!」
「さすがに遠くてあの二人が何を話していたのか分からないな」
「わからないけど、おぞましいってことだけは分かるわね」
「学園で戦った時って確か、千聖くん片腕代償にやったんだよね」
「...だが、今回はそうはいかないだろう、やつが食べた男は千聖の複製...ということは千聖の血も混ざっている、食べた所で順応するだろうな」
「じぁ、撃つてが無い」
「いいえ、もし、千聖様が本気で掛かるのなら勝機はあります。ただ、身体が持つかどうか」
「私たちはここで見ていることしか出来ない。だから千聖に賭けよう」
翼の生えたイーター種は雨雲に飛んで行った。それを追うように跳躍すると、腕を捕まれ、吹っ飛ばされた。すぐに体制を建て直して、もう一度跳躍する。翼が生えたとこで、機動力が増して、Limitを外した。千聖でも圧される一方だった。結局、甲板に叩きつけられ、立ち上がろうにも、痛みで立つことが出来ない。目の輝きも消えるとイーター種は千聖にゆっくり近づいて、その大口で千聖を頭から食べようとしていた。
「もう、これで終わりだな」
千聖も悟って目を閉じた。しかし、直後に千聖の身体が光り輝き、イーター種を吹っ飛ばした。激しい雨の降る甲板が光輝にしばらく飲まれその輝きはヘリにいる皆にも眩しく届いていた。千聖が目を開けた時、そこは何もない真っ白な世界が広がっていた。(5話参照)
うっすらとした人の影か映し出され
「もうすぐだね。ちさ。でもその前に倒すべき相手と、やるべきことをやらなくちゃ。...だから、私の力をちさに貸してあげる。これで、最後だよ」
「助かる」
輝きが1部に集まると身体の左半分が光り輝き片翼の生えた。千聖がたっていた。
「なんだ?あれは」
「あれが、千聖の本気?」
「いえ、あんな姿見たことありません」
「千聖さんの反応が今までに無いくらい上昇しています」
ヘリにいる一行は驚きを隠せない
「千聖に...何があったというんだ!?」
千聖から距離を一瞬で詰める。その速さは目で取られないくらい、速さを増している。イーター種は再び上空に吹っ飛ばされ、上空で千聖に滅多斬りにされる
「白咲流 剣術 無殺戒式 拔楔」
身体から放たれる光が線を描くイーター種がこの攻撃をくらうと、再生が出来ないでいて、痛みを感じていた。
「イヤアアァァァァアアアァァァァアアア!!!!」
「白咲流 抜刀術 襮闘痕 絕臥」
緩急入れず2連続で白咲流を叩き込むと
「FEELIII LimitOver」
その言葉の後、再び装甲が消失する。そして、
「白咲流 秘奥術 螺旋空翔 開皇破」
螺旋に回りつつイーター種の腹部を剣の鞘でぶっ刺すように押し出すとその衝撃で、雨雲が全て吹っ飛ばされ、いきなり快晴になった。イーター種はもっと遥上空大気圏に吹っ飛ばされ、身体は形状を保っておらずその中からコアが丸出しになっていた。
身体の力が抜けた千聖はゆっくり甲板に降り、
「FEELⅠ LimitOver」
足の装甲が消失し、甲板から一瞬でいなくなった千聖が次に現れたのは、ヘリの中だった。ふたつのショーケースを持って現れた千聖は精気を感じられなかった。その場にケースを置いて、ヘリの壁に寄りかかる。
「千聖くん」
「千聖様」
「ちさ」
「千聖」
みんなで名前を呼んでも反応がない
しばしの沈黙が続くと、突然衝撃波がはしり、ヘリが揺れた。この拍子に千聖が外に放り出され、ヘリの足に捕まりぶら下がりの状態になった
「ちさ!!」
「千聖、手を取れ!!」
凪紗とフランが必死に手を伸ばしているが、その問いかけに千聖は無反応だった
腕が震えてきて、最終的に手が離れて重力の赴くままに落ちていった。落ちていく中でフランと目が合って、顔の口角を上げて放った言葉が
「生きろ」
そう言い残して、海の中に落ちた
「ちさぁーーーーー!!!!」
悲しみに浸っていると
バサバサと羽音が近づいてくる。
大気圏に飛ばされたイーター種が戻ってきたのである。
「アヒァヒァヒァ、クチタオワリコンドハオマエラダ」
猛突進してきたイーター種をシアが能力で足止めする。
「あぁ、もうウザったいわね!!そう長くは持ちそうにないわ!悪いけど何か手を打って頂戴!!」
「凪紗さん、先程の行動今度はあいつにやってください」
舞夜が剣を取り出して凪紗に渡す
「フッ、愛人を無くすと、こうも感情が湧き上がるものだな」
「私も手助けする」
今度は真希が銃を取り出して窓から構える。
みんなでイーター種を食い止めてるいる時海の中に沈んでいる千聖の目は未だに輝いていた、すると再度眩しい輝きを放ち、千聖の右腕に特大の超電磁砲が装着された。エネルギーがどんどん溜まっていき、
「え!なにこれ、下から高エネルギー反応を感知、今すぐ離れてください。このままだと巻き込まれてしまいます!!」
ヘリがその場を離れて、イーター種と距離が開くと
「ソディアスの秘宝!!!」
水面が湧き上がり、凄まじい
エネルギー光線がイーター種を包み込む肉体と共にコアが焼失した。千聖は激流に流され海のそこに飲まれて行った
「終わったの?」
「最後は千聖先輩がやってくれたみたいですね」
終わったことに干渉しているとドンと船が爆発した。しばらく爆発はつづき船は陥没した。
みんなは悲しみ耽っていた
「これが千聖の...輝かしい最後を飾ったものだな。さぁ戻るぞ。用は済んだからな」
「え、助けに救助にいかないんですか!」
「えぇ、この荒れた海を捜索するのは困難極まりないですから。すみませんが諦めてください」
その言葉にさらに落ち込む一同は大人しくなって、家に帰った。リビングにて、気持ちの整理がつかない一同はこれからどうするか迷っていた
「これから...どうすればいいんだろうね?」
「千聖先輩はこう言った時いくつかの選択肢をよこしそうですけど」
「・・・ちさは、最後生きろって言ってた...だから自分達で決断していくしかない」
「...フゥ~ん、なら経済的問題は任せて欲しい千聖ほどではないがそれなりに手助けできる」
「な、なら私も、活動していた時の貯蓄がありますから、支えることはできます!」
「そういうことなら、家事全般は任せて欲しいな、それくらいしかできないし」
「私も栞の手伝いする」
「力仕事は任せろぉ」
「出来ることはやる(。・д・)ゞ」
「わ、私も手伝います」
「うん、ありがとう」
千聖が居なくなっても、自分達で生活していこうと発揮する。
「舞夜は?何かないのかしら?」
「...私からは何も」
「何も無いって訳じゃないでしょ。千聖の1番近くにいたのは貴方なのだから」
「...そうですね、千聖様からはみんなを頼むと言われました...なので、皆さんの身の保証はこれからは私が持ちます」
「それは頼もしいな」
千聖がいなくなったとしても彼女たちは自ら行動を示唆した。
「これからは、守って支えてくれている土台は居ない、だから、それを私達がお互いに対して、作っていくしかない。恐らくそれが最後に千聖の言った言葉の意味なのだろう」
「...でしょうね、ほんと最後までわからない人だったわ」
「確かに、全部は知りえませんでした」
「もう、会えないってなると悲しくなっちゃうね」
「それをこれからは乗り越えなければならないそれが私たちオッドアイ能力者の運命のうちなのだから」
「そうだね、頑張って行かなくちゃ」
「でも、無茶は禁物」
「なんか、みんなとなら上手くやって行けそうな気がする」
「心強い『家族』ですね。これからも皆様よろしくお願い致します」
そうして、主人公である千聖は死を迎えこれからは彼女たちだけの新しい生活を迎えるのだった。
続く
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