第21話 炎光
血だらけの焔の家。
悲しみと絶望に飲まれ、崩れ落ちる焔と無常で真剣に考えている千聖。
見ている光景に今でも吐きそうな愛美
「ち、千聖先輩、け、警察は?救急車は」
「既に呼んである。そのうち来る。警察だけだがな。救急は死亡を確認したら直ぐに帰ってしまうから無駄足だ。」
「!」
「···無駄ってなんだよ、まだ生きてるかもしれないだろ!!」
怒りに身を任せ千聖の襟首を力強く握りしめる。
「如月···この現場を見て、その望は薄いだから、受け入れてくれ」
「···受け入れられっかよ!!なんで子供らが殺されなきゃ行けねぇんだ!」
「···それを、今から調べるんだ。そのために、人を連れてきている」
「つまり···この惨状になった過去を見るために私を連れてきたってことですか?」
「悪いな、予想している以上に悲惨な過去を見ることになる。だから無理は言わない愛美のできる範囲で見て欲しい。」
「···わかりました」
中で何もせず、警察が来るのを待っていると遠くの方からサイレンの音が聞こえてきた。
「ちょうどきたか、過去を見るのは警察の家宅捜索が終わってからでいい。それまでは待つ他ない。」
警察が来て、漣に一通り現状を説明し、検察官達が家宅捜索に入った。その間玄関外で寒い中待つしか無かった。
「はぁーはぁー···寒い」
「防寒着も一緒に持ってくるんだったな気が利かずすまん。」
「突然でしたし、千聖先輩は急いでいたんですから、仕方がないですよ。ところで、栞さんなら、あの惨状でも直せたんじゃないですか?」
「愛美のその考えは間違えてはいない。だが、たとえ傷が治って心臓が動き出したとしても、恐らく順応せず、イーター種に変わってしまう。」
「あ、そっか。能力者じゃないし子供だからですね」
「そうだ。だから愛美だけを連れてきた」
「···」
3人が外で寒さに耐えていると、
「あの、これ良かったらどうぞ」
レジ袋を差し出され、中を見るとホットドリンクやカイロが入っていた。
「良いのか?」
「別に大丈夫ですよ。漣さんに頼まれて、買ってきただけですから」
「後で、漣にお礼を言わないとな」
「ですね···とりあえずください」
「ココアでいいか?」
「はい、あとカイロ背中に貼ってください」
「了解した」
「如月は?」
「俺はいい」
「そう言わずに飲んでおけ、身体が冷えては体調を崩す元になってしまう」
「···どんだけ過保護だよ、まぁいいや貰っといてやるよ」
しばらく貰ったもので耐えしのぎ。
「千聖さん、捜索の方は終わったっす遺体の方も処置できたっす。」
「よし、2人とも行くぞ」
中に入り先程の現場に赴く。
子供たちの遺体には白い布が被らされており隠されていた。
「それじゃ、愛美。頼む」
「···わかり、ました。」
愛美の両目が光り輝き能力が発動する
見えた過去は、武装したテロリスト複数人が家に上がり込み、子供たちを持っていた銃で撃ち殺す光景が脳内に再生された。
「う、、頭痛くなってきた」
「そこまでで良い、それ以上は脳神経に負担がかかってしまう」
頭を押されつつ、スマホを取り出して確認する。
「千聖先輩。どうぞ」
「悪いな、助かる」
スマホを渡して映像を視聴する。
「!これは、テロリスト···いや?武装が違う、それにこのエンブレムは国直属の公安組織のもの。何故?調べるしかないな···連!これを見てくれ」
「なんすか?それ···え、これってなんで公安が一般人を?しかも子供をころしてんすか?場所はここっすけど、まさか偽造を見せてる訳じゃないっすよね?」
「なわけがあるか、能力者の力だ。そこにいる愛美のな」
「···あ、どうも」
「え!てことはこれ!?起きた出来事がそのまま映像として残るってことっすか!?」
「そうだ」
「是非、鑑識課に欲しい!」
「えっとぉ、私まだ学生なのでそういうのはちょっと」
「なら、卒業後は言ってください!!推薦出しますっす!!」
「気が早いぞ漣、とりあえず連中のこと調べあげてくれ、必要ならこちらも協力する」
「調べるだけだったらこっちでやっと組んで問題ないっす何か分かったら連絡するでお願いしますっす」
「わかった」
「そんじゃ、やることもやったんでこちらは退散しますが、遺体の方はこっちで任せていいんすよね?」
「あぁ、親権がない子供というのもあるし学校にも通っていないようだからな悪いが頼む。」
「了解っす、じゃ、俺らはこれで···」
そうして、警察官達は家を後にし取り残された3人は
「どう?しますか?時間相当過ぎましたし、みんな夕飯もう食べてると思うんですけど」
「そうだな、食材もあるしここで食べていくか?」
「そうしましょう、ですけどこの惨状で食べるのちょっと気が引けるので、作ってる間にある程度片しちゃいますね」
愛美が片付けを開始しようとした時
玄関扉から異様な気配を感じた千聖は能力を瞬時に使って愛美と焔を家に連れてきた。
「!!あれ!何で!千聖先輩!?」
「ぐふぅーー、、、はぁ、はぁ、」
「千聖先輩!?」
家に着いてすぐ千聖は能力の使いすぎで立ってられずその場に座り込んだ。
「無茶してましたね!!」
「···面目ない...」
「と、とりあえずソファーに座って何があったか教えて下さい」
「···奴ら、待ち伏せしていた。警察が過ぎ去るのを待っていた。何がなんでも如月を連れ去りたいらしいな」
「!···おい!だからってなんで俺まで連れ込んだ!!」
「守って欲しいと言っただろ?」
「あぁ、言ったさ!でもそれ以上にそいつらに子供達の仇を撃ちたいんだよ!」
「やめておけ!奴らに反抗するということは国に反することになる、そんなことになったら守れるものも守れなくなるんだ。だから今は大人しくして居てくれ」
「(んなことしてられっかよ!!)」
口を力強く噛み締める焔
「···皆さん今はお風呂に入ってるでしょうし、千聖先輩は動けそうにない。とりあえず、千聖先輩は寝ててください」
「···」
頭を抱き抱えた愛美の温かさに睡魔が襲い掛かり千聖は目を閉じて幼い姿になって眠りについた
「···ふぅ、あれ?おかえり愛美ちゃん···?」
風呂から上がってきたみんなは如月焔の存在に驚く。
「なんで?如月さんが?」
「···実は...」
愛美はことの事情を話した。
「なるほどのぉ、以外とここら辺は物騒なところなんじゃの」
「まぁ、定期的に何かしら起こりますからね」
「じゃ、これからどうするの?」
「···」
「···なぁ、おい」
焔の表情は暗く、その目は暴走仕掛けていた。
「俺をアイツらのところに連れて行け!!」
「あいつらって、もしかして!ダメにきまってるじゃないですか、大人しく待ってろって言われましたよね!」
「蹴散らしゃ、終わんだろ!」
「···ふぅ、わかりました」
「え、ちょ!」
「仕方がありません、この手の人は何をやっても止まりませんから。ですが、私も同行いたします。それとどなたか一緒に来て貰えますか?」
「なら、私がついて行く」
「美希!」
「大丈夫なのかい?」
「うん、自ずと怖くないから」
「···では、私達2人が同行いたします」
「さっさと行くぞ!」
、言い方は冷静でも、その目は怒り狂っていた。そして、3人は家を出て行った
「行ったわね、本当に大丈夫なのかしら」
「めっちゃ心配なんだけど!」
「まぁまぁ、様子を見に行くだけだろうし、怪我しても私の能力で直せるから、ね?」
「そうですよ、心配するだけ無駄ってやつです」
「···とりあえず、愛美。貴方はお風呂入ってきなさい、血なまぐさくなってるわよ」
「え、マジですが、···うぅ、制服後で消臭剤かけなきゃ。」
「そのくらいなら、私がやっておくよ」
「え!いいんですか!?」
「うん、それに着替えるのに千聖くん離しちゃうでしょ、その間に起きてお風呂に入るってわかっちゃったら、どこかに逃げちゃうだろうし」
「確かに!それ前にありましたね」
困った表情で発言する愛美
「じゃ、お願いします」
「うん、任せて」
愛美から栞に千聖が渡され、2人は脱衣室で脱ぎ脱がした。
そうして、愛美と千聖は一緒にシャワーを浴びた後湯船に浸かるのであった。その間愛美は自分の身体に落胆していた
リビングにて、
「···」
「?どう···したんですか?」
「?あぁ、いや主のことでの、全然回復の兆しが見えんのが不思議でのぉ~、何が原因なのか考えっておった」
「ラテの見解はどのくらいだったんだい?」
「だいたい、元の大きさに戻って1晩経てばそれなりに回復するはずなんじゃが、能力を3回使っただけで息切れするほど主は脆くないはずなんじゃ」
「···呪いのせいとか?」
「それはないと思うなぁ、能力者の呪いに身体を衰退させる呪いなんて無いからさ」
「ないと言うだけで、生まれたとしたらどうかしら?」
「···いや、それは無いの。呪いは生まれた時着くものじゃ、生きている途中で呪いが新しく着くことは無い」
「···では、考えられることとすれば千聖自体に何か取っ掛りがあるんだろうな」
会話の中でもラテは変わらず、千聖のことを考えていた。そして、外に行った3人は
「ねぇ、舞夜」
「はい、なんでしょう?」
「なんか、嫌な感じがするのは私の気のせいじゃないのね?」
「その感覚は間違っていないと思います。家を出た直後から何か言葉では表すことが出来ない程の何かが待ち受けていると考えていいと思います。」
「それは?テロリスト達?」
「···いえ、愛美さんのお話だと今回の件は国で立ち上げた組織が手を打っているという話ですので、テロリスト達とは真逆の位置にいます。それに、テロリスト達はほとんど殲滅させていますので脅威はないと思います。」
「そっか、」
「それと、もし戦闘になったら、美希さんの能力で相手の動きを止めてください。その隙に私が刺します。」
「う、うん大丈夫?」
「ご心配には至りません、夜は私の専売特許なので」
「!わかった」
「そろそろですね、そこを左に曲がれば目的地です。」
焔が常に先陣を切って10分ほど歩いた。舞夜が行った角を曲がる直前焔の頬を火の粉が通った。そして、そこで見えた光景は、焔の住んでいた家が燃えていた。
再び絶望に染まる焔の目は、暴走寸前だった。そこに
「やっとぉー会えたぜ如月焔!」
「···何だ?お前ら」
「俺らの素性を話す必要はねぇんだわ大人しく同行してくれ。あ、お連れさんはここで朽ちてもらうがな」
銃を構えて、撃とうと引き金を引いた瞬間。男たちは地面に打ち付けられた。
「な!なんだ!?」
「朽ちてもらうのはそっち、大人しく這いつくばってて」
「な!、の、能力者だと!?」
「おいおい、聞いてねぇぞ!!」
「はぁ、鬱陶しい人たちばかりですね、いい加減、息の根、止めろ」
セリフと共にテロリストの頭上から喉元に剣を突き刺した舞夜
「どうやら、この2人だけの様ですね」
辺りを見回し、警戒する。
「これから、どうするの?」
「消防士が直ぐに来ると思うので、私達はここまでしか出来ません。ですが、如月焔さん。貴方は、家族と家を無くし能力者として、覚醒寸前まで来ています。なので、ふたつの選択肢をあなたに提示します。」
「選択肢···だと?」
燃え盛る家をバックに舞夜は提示する
「1つは、これから先貴方一人で路頭に迷う。もうひとつは私たちの家族になる事です。」
舞夜の提案に驚く焔だが、脳裏に千聖の言葉を思い出す
「(それなら、俺の家も暖かいとは言えないな。この家と同じ、血の繋がりは一切ない家だ。身寄りのないまたは住む家が無くなった人が集まった家で暮らしている)」
「...は、いいのかよ、狙われてんだぞ!」
「構いません、私達はあなたを受け入れる準備と覚悟を持っていますから」
「...どいつもこいつも、なんでかえりみねぇんだ!」
「同じ境遇の集まりだから、みんな同じような経験してる。」
「だからって、んな簡単な話じゃねぇだろ!」
「簡単な話ですよ、貴方が今ここでどちらかを選べばいいだけの話です。」
「!···今は答えが出ねぇよ、考えさせろ」
「最速させる様な言動を取ってしまい申し訳ございません。では、答えが出るまでは家に泊まってください」
「···わかった、」
そうして、3人は来た道を戻る。道中にて、道路の街頭と月明かりの光の下で
1人のヤンキーが如月たちの前に出た。
「む?お、お前はレッドクイーンじゃねぇか!!丁度いい今ここで日頃の恨み晴らさせてもらうぜぇー!!」
焔に向かって殴り掛かるヤンキー。その時だった、焔の両目が覚醒の時を迎えた
「うるっせぇー!!!」
その一言共にヤンキーの顔を鷲掴みにすると、ヤンキーの顔から燃え始めた。
「あちぃ!あちぃー!な、なんだこれあ!あ!ぜ、全然きえねえー!」
身体を丸くして消火しようとするが、消える様子はなく火は増す一方だった、
悶え苦しむヤンキーに覚醒した焔は
「もう、これ以上俺の邪魔すんな!!」
豪快な蹴りを噛まし、ヤンキー数十メートル先に吹っ飛んで、気絶した。その間も火は燃え続けていた。焔の両目から放たれる赤い輝きは、少し黒い輝きも纏っていた。そして、焔は膝から崩れ落ち気を失った。
「如月さん!」
舞夜が咄嗟に気絶した焔を支えて
「···気を失っただけのようですね」
「2人で運べるかな?」
「家までそう距離はありませんし、2人でも十分運べますよ。きつくなったら言ってください。その時は私だけで運びますから」
「そ、それはちょっと気が引けるから、それにちょっと試したいこともある」
「?何でしょう?」
美希の両目が光り輝き
「!?軽くなりましたね」
「それは、良かった。もしかしたらと思ってやってみたけど成功した」
「重力操作は、重くするだけではなく無重力の様に軽くすることもできるのですね。これなら苦しくなる事はないでしょうから、私一人でも大丈夫です。」
「うん、お願い」
そうして、焔を持ち帰る二人。家に帰って気絶した焔を空き部屋に寝かせた。
もう夜も遅く、リビングで待ってたのは
凪紗と恵那と真希とシアの4人だけだった。そして、頭を抱える凪紗が
「···まさか、本気であの如月焔がこの家に来るのかい?」
「嫌だったら、凪紗が自分の家に帰ればいいじゃない」
「そんな悲しいことを言わないでおくれ...」
「だったら、凪紗さんがその焔さんと仲良くなればいいんじゃないですか?」
「そ、それはその通りではあるのだが...私の中では彼女はトラウマになっているだ」
「それどうしようも無くない?」
「わかりませんよ、人は環境が変わればそれに適応するように考えや行動を改めたりしますから、如月さんが今のまま今後もいるとは限りません、現時点千聖様と接触してからというもの、私は少しだけですが変わったように感じます」
「私もそう思う、学校での態度がすこしだけ柔らかくなってた(さっきのヤンキーに絡まれた時のことは黙っておこう今の凪紗に言ったらもっと凹んでしまう)」
「それに、まだ如月さんの返答がまだですから、ここの家族になる事は断定できません。」
「全ては如月さん次第ってわけか!」
「はい...ところで話は変わりますが、千聖様は何処に?」
「それなら、愛美が添い寝しているよ」
真希の一言に髪が逆立つ舞夜
「あの女狐、千聖様の近くにいたからと調子に乗りやがってぇ!」
「舞夜の本音が出てる」
「ほんと、千聖のこととなると豹変するわね」
「これも1種の愛さ...ただ重さが尋常ではないけどね」
「よく千聖は受け止めてると思う」
「しかも複数人の愛を受け止めるほどの器ですからね」
「なんでなのかしら?」
「今度みんなで話し合って見ようじゃないか...今日はもう遅い明日は休日だとしても、健康面に悪影響だよ。さぁ、自室に戻って就寝としよう。」
「そうですね。如月さんの件もしばらく待ちましょう」
「了解!」
「うん」
「では、おやすみなさ~い」
そうして、リビングに集まっていた一同は自室に戻り就寝した。場面は変わり。ここは千聖の精神空間。
「また、ここか。寝る度にここに辿り着く。この何もない空間にただ一人。そして、目の前にあるこの、禍々しい何か、何故こんなにも大きくそして、飲み込もうとしているのか」
渦を巻くように、ドス黒い何が聞き取ることの出来ない言葉を放った。
「ェーセ……コヨ……オダ……ラカ」
「ロネ……ダユ……ナ……ウガ……ラア」
「ルス……ウホ……イカ……クヤハ」
そして、その渦は段々と大きくなり千聖を囲んだ。そして、無数の白い腕達が勢いよく千聖の身体に襲いかかってきた。
そこで、目が覚めた千聖は元の身体に戻っており、時間を確認する
「(深夜の1時、ここは愛美の部屋か?あの後小さくなってずっと愛美に世話されていたわけか、迷惑かけてしまったなすまなかったな。)」
熟睡している愛美に心の中で一礼の謝罪をした後部屋を出ていき、リビングに降りた。胸を鷲掴みにし、千聖は考える
「(疲労が溜まる一方で、疲れが全然と言っていいほど取れない。むしろ、以前よりも活動限界を迎えるのは早くなっている。これは、いずれ己が壊れてしまう暗示なのか?)...悩んでいても無駄か、とりあえず、朝食の準備するか。」
考えることを辞めた千聖はキッチンに立って、準備を始めた。5時間かけて。
早朝、焔が寝ている空き部屋にね、焔が起き、見慣れない千聖の家の2階から降りてリビングに向かうと、全員が集合していた。
「おはよう、如月。よく眠れただろうか?」
「···お前こそ、平気かよ、昨日だいぶ苦しんでだけどよぉ」
「見ての通りだ、心配はいらない。話は舞夜から聞いている、焦らなくていい、気持ちの整理が着いてから、決断してくれ。」
「わかってるよ、それくらい。それにまだ気が動転してるから、しばらく返事は待ってろ。」
「あぁ、いくらでも待つさ。とりあえず朝食を取ってくれ。昨日の夕飯食べて無いだろ?」
「うん、まぁ、食ってねぇから食べる...なぁ、なんか俺悪い事したか?」
「?...どうした?いきなり」
「いや、後ろの奴らが警戒してるつーかなんつーか」
いつもの焔と違う雰囲気に戸惑いを隠せない一同の表情を感じっとった焔。
「如月のことを皆あまり知らないからな。ここにいる間に、少しづつ親睦を深めていってくれ」
「ふーん、わかった。これは俺が悪いな。」
「なんか、しおらしくなりましたね」
「あの、威厳と怖さはどこに行ったの?」
「本人も気が動転している所があるって言ってますし本調子じゃないからじゃないですか?」
「...?なぁ、一応自己紹介くらいした方がいいか?」
「自分でやれるなら頼む」
「...わかった。...あぁ、まぁ知っているやつの方がほとんどだろうけど、如月焔だ。まだこの家に住み着くと決まった訳じゃないから、名前は教えてもらわなくていいや。とりま短期間ではあるけどそれまで、よろしく」
「はい、宜しくお願い致します。」
挨拶を交わして、朝食を取る。数分後
「千聖先輩、今日一日、キッチンを貸して下さい!!」
「構わない、俺はトレーニング室いるから何かあったら言ってくれ。だが珍しいな愛美がキッチンに立つなんて」
「え、まぁ作ってみたいものがありまして」
「そうか、挑戦することはいい事だ。怪我のないようにするんだぞ」
「はい、ありがとうございます」
と、その時だった。2階から凄い物音が聞こえて来た。
「え、何!?」
「凄い音したฅ(º ロ º ฅ)」
「あれ?ここにいないのって」
「真白だね」
「...」
気になった千聖や皆は一緒に真白の部屋に行く。ドアの前でノックして扉を開ける。
「あ、ちょっと、今は!」
慌てた表情の真白、部屋は少し荒れており、少しだけ散らかっていた。その原因が、
「?その手に持っているのって、もしかして縄跳び?」
「!これはあの、その、えっとぉ」
「...落ち着け真白。今度の授業参観でやる縄跳び発表会の練習をしていたんだろ?」
「...は、はい」
「あぁ、てことは、縄が引っかかったちゃったんですね。」
「もっと広いところでやるべきでは無いかしら」
「秘かにやって千聖に良いところを見せたかったとか?」
「///」
美希の発言に顔が赤くなる真白
「どうやら、当たりみたいですね」
「...真白、誰も見ていないところで練習するのはいい心掛けだが、この部屋では狭いだろ?俺も一緒にやるからトレーニングルームで一緒にやろう。」
「は、はい」
千聖の手を取って、立ち上がる真白
「ふ、だがその前に部屋の片付けだな。」
「あ、はい」
「みんなはリビングに戻ってくれ。後は大丈夫だから」
「う、うん。わかった」
「気をつけてくださいね 」
栞達は先にリビングに戻って真白と千聖部屋の片付けを始めた。リビングにて
「さぁ、この時がやって来ましたァー私は待ってたんです!この時を!!」
「なんか、いつも以上に活き活きしてるわね、」
「まぁ、恋する乙女にとっては一大イベントと言っても過言では無いからね。昂る感情を表に出すのは分からなくは無いかな」
「そう言ってる本人は至って通常に見える」
「これでも、ワクワクしているよ」
「?何か、もようしものがあるのですか?」
「え···!?」
「もしかして舞夜、バレンタインを知らないの?」
「?」
「まさか、知らないとは、良いでしょう一から説明いたします」
ここから愛美による熱弁が始まった。数十分後
「そんな最高のもようしものがあるだなんて、なんで私は知らなかったんでしょう!」
舞夜はキラキラした目で愛美の話を聞いた。
「私も知らなかった」
「フランは箱入り娘だからわかるけどまさか舞夜までとはね」
「私は軍にいましたから、世間知らず何ですよ。」
「まぁ、これでわかったでしょう、材料はこっちで用意しましたし、後は作るだけ!次学校行く時に千聖先輩にあげる予定なので、それまでに完成させます!」
「意気込みすごいね」
「何言ってんですか!?栞さん達もですよ」
「え!?」
「ふふ、面白そうだね。いいだろう私もたまには羽を伸ばそう」
「簡単なことしかできないけどやる
(๑•̀ㅂ•́)و✧」
「千聖様に愛を示せるなら!」
「ちさに挙げたい」
「!フランがやるなら私もやるわ、だけどフラン、あなたに包丁だけは持たせないわよ!」
「···シアの···ケチ」
「う、」
「面白そうだから、私も手伝うけど真希はじっとしてて」
「なんでぇ!」
「真希は絶対失敗する」
「美希にキッパリ言われたァ!姉としてショック!!」
「アハハ!私も混ぜてください」
「みんな楽しそうだねぇ」
「そりゃ、一世一代のイベント逃す訳には行きませんから!!」
「怪我せんようにするんじゃぞ」
キッチンとテーブルでみんな一丸となってチョコ作りを始めた。それを見守るラテとソディと真希。焔はと言うと1人になるために自室で休んでいた。部屋の片付けが終わった真白と千聖はトレーニングルームに向かう。その途中リビングにて、
「!まさか、ほぼ全員でキッチンを使うとはな」
「あ!千聖先輩、えへへ、結局みんなで取り掛かることになりました」
「そうか、気をつけて作ってくれ」
「はい、千聖先輩もお身体お気をつけてください」
「あぁ」
そうして、トレーニングルームに入った2人は、
「まず最初に始めることとして、その髪をまとめることだな、髪が長いと縄が引っかかって、失敗するし怪我に繋がるから、ヘヤゴムで縛るか、団子にまとめるか、どっちがいい?」
「えっとぉ、お団子で」
「了解した」
真白の長い髪を手際よく団子にまとめて行く
「よし、本番もこれでいいだろう」
「じゃ、俺もトレーニングがてら一緒にやるぞ」
「ちさとお兄さんもですか!?」
「縄跳びも訓練としてはちょうどいい運動なんだ。それに俺の見本を見せることもできるだろう?」
「は!はいお願いします」
真白の目はその途端にキラキラし始めた。
「ちょっと待ったぁー!!私もやる」
トレーニングルームの扉が勢いよく開かれ真希が入ってきた
「キッチンのみなと一緒に作るんじゃないのか?」
「それが、悲しいことに美希にじっとしてて言われたから、こっちに混ざる!」
「いいぞ、3人でやろう」
そこから、千聖、真白、真希による縄跳び指導が始まった。場面は変わって、焔の自室。ベットに横になって悲しみに浸っていた。
「あぁ!もう!いつまでもうじうじしてらんねぇだろ!どうしていいのかもわかんねぇし、とりあえず、下に降りてみるか」
起き上がってリビングに向かい、真っ先にキッチンの方を向いた
「あ、如月さん、どうしたの?」
「あ、いや、何してんのかと思って、この甘い匂い、チョコか?」
「はい!週明け渡すために!」
「···ちなみに聞くけど、それ誰に渡すんだ?」
「そりゃー千聖先輩に渡すんですよ」
「···あいつ食えるのか?」
「····あ、」
焔の一言がみんなの手を止めた
「あ、やっと気づいたんだ」
そこに追い討ちをかけるようにソディーがニコニコの笑顔でそう言った。
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