第19話 際会

小さくなった千聖の状態で2週間がすぎた。全員一周回り学校に登校する前日はフランが添い寝していた。冬場な為まだ日の出ていない早朝四時。フランが目を覚ますと、抱いていた千聖がいないことに気づいて。大慌し始めた。部屋を隈無く探して見るが居なく。階段を降りてリビングに降りる。すると

「どうした?そんなに慌てておはようフラン」

身体の大きさが戻り、リビングでたっていた。

「よかったぁーー!!」

泣きながら千聖の懐に飛び込む

「!」

「いなくなったと思った!」

「···そ、それはすまない」

「もう、あさっパラから騒がしいわね」

フランの大慌な音に全員リビングに起きてきた。別棟の方にも聞こえておりそちらも起きてきた。

「千聖が元に戻ってるฅ(º ロ º ฅ)」

「間に合ったようで良かったよ」

朝早くで寝ぼけているみんな

「とりあえず、まだ早いですし部屋で2度寝してきます」

「私もそうするわ」

愛美とシアが2階に戻り

その他はリビングに残った。千聖が全員分の飲み物を出して、休憩する。朝食の時間になり、千聖が準備していると

「千聖、手伝うよ」

「いいのか?休んでいていいのだが」

「何もしないのもむず痒いから」

「そういうことなら、頼む」

そうして、朝食を食べ学校に登校する支度を整えて、外に出る。寒い中を歩んでいく。

学園教室にて、授業前

「なんかみんな、嬉しそうね」

「ちさが元通りになったから」

「あまり浮かれていてはダメよ、シャキッとする時はしてよ。フラン」

「ん、わかった」

いつも通りの日常が戻りつつあった。

千聖の持っていた授業が全て終わり職員室で休んでいると、隣から

「千聖先生、少々よろしいですか」

「田中先生、どうなされました?」

「C組の如月という生徒をご存知ですか?」

「名前なら聞いたことはありますが一度も会ったことはない生徒です。」

すると、田中先生は表情は険しくなった

「千聖先生、如月をどうにか更正してはくれませんか。学園に登校させるだけでいい、お願いします」

田中先生は深く頭を下げてきた。

「そう、頭を下げないで下さい。どうお力になれるかわかりませんが、誠心誠意で対応いたしますので」

「そうですか、ではお願いします」

「はい、お任せ下さい」

その日の放課後、街を散策し始めた千聖

「さて、受けおったのはいいが、どうしたものか。当てがないと探すの困難だな、あまり長引くのも皆を心配させてしまうし、早めに帰らなければな」

さらに、千聖は考え事をしていた

それは今朝ラテに言われた説明

「主よ、これから先前のように能力を使うのは極力控えて欲しいんじゃ、いざと言う時の為に、温存しなければならないのでノ。」

「・・・難しいな、使わないというのは無意識に発動してしまいそうである」

「ここでは有益な情報はなさそうだな、この時期は夕暮れが早いそろそろ帰るか」

とその時だった、街の路地裏から物音が聞こえた。大勢の人が歩く中、微弱な音を頼りに路地裏に入っていくと、

「ち、さすがレッドクイーンこんな数じゃ足らないか。」

「いい加減諦めろ、てめぇらじゃ無理だ」

「ハッ、だったらこれならどうだ!!」

懐からナイフを取り出した不良たちが赤髪の不良女子に切りかかる。不良女子が手を伸ばし切ろうとしたところで、千聖が

「白咲流 拳闘術 廻廻路天」

空中回し蹴りで不良たちを一層した。

「!誰だてめぇ」

「···ただのしがない学生だ、その制服双星学園のものだろ?そんな子がこんなところにいては危険すぎる、もうこんなことは辞めた方がいい、見たところ細かいが怪我しているな?」

「それがなんだって言うだよ!」

「なに、あまり周りに心配を抱かせないように行動して欲しいと思っただけの事だ。では、俺はこれで」

「あ、おい!せめて名前くらいは名乗ってけ!!!」

不良女子の言葉は大声ではあったが、千聖はスタスタとその場を後にして名乗ることは無かった。

家に戻り、

「ただいま」

「おかえり!ちさ」

帰ると同時に、フランが千聖に抱きついた。

「あ!ずるい私も!!」

続いて愛美も抱きついた。

「夕飯にするから2人とも離れてくれ、その後だったら、満足するまでそうしてくれて構わないから」

「言いましたね!!」

「うん、言った」

「ちょっと、マッサージもやってよね。少しは構ってくれないと寂しいわ」

「すっかり、シアさんも虜になってますね」

「な、これは違くて!」

「シアァァ?」

「ま、まって、別に独り占めしようとしているわけでは無いわ、ただ2週間以上してないから、身体を解して欲しいのよ」

「千聖くん、夕飯なら私たちで作るから、構って上げてていいよ」

「う、だが」

「いいからいいから、キッチンに入ろうとしないで」

美希に背中を押されて、キッチンから追い出される千聖

「なら、舞夜。少し手合わせ願いたい」

「!わかりました、」

その一言で2人は別棟に行った。入った部屋は道場のような部屋で他の部屋より大きい部屋だった。2人は部屋に入るなり木刀を持って互いに構え始める。

「勢いで見に来てしまったが、2人とも凄い気迫だな。」

「手合わせって言ってましたけど、なんでなんでしょうかね」

「実力の確認とかじゃないですか?」

「では、少し賭けようか」

「それは、どっちが勝つかってやつですか?」

「あぁ、ちなみに私は千聖に賭ける」

「まぁ、普通に考えて見れば千聖よね」

「私は舞夜かな」

「ワシもじゃ」

「ほぅ、以外ですね」

「まぁ、見てればわかるよ」

「···舞夜、手合わせと言っても、本気で来て欲しい、殺しにかかってきても構わない。」

「千聖様、それはさすがに出来かねます」

「まぁ、さすがに冗談だ。だが、本気で来て欲しいのは事実だ」

「了解いたしました」

「では、開始の合図は私が勤めよう終了条件はどちらかの手から木刀が離れたら敗北とする。···では、初め!」

凪紗の合図と共に互いに距離を詰める。

カンカンと木刀が交わる音が部屋に広がる。2人の早い動きに、みんなは目がついていけない。そして、勝負は直ぐに決着がついた。

「黒咲流 剣術 暗刳残亨」

前方から詰め寄り、剣を振り切るところで千聖の背中に周り木刀を弾いた。

「やめ!! 勝者 黒崎 舞夜」

舞夜は驚愕していた。千聖の弱さに

「千聖様、決して手加減されていた訳では無いですよね」

「もちろん、最初にあれだけのことを言っておいて、手を抜く必要性がどこにあるんだ?」

「···」

落ち込んでいる千聖をみて、言葉を失う舞夜。

「シア、試したいことがある」

「その感じだと、私の障壁が壊せるのかも分からないからかしら」

「あぁ、だから確かめたいんだ」

「ただでは出来ないわね、そうね前みたいに割れなかったら、10分を30分に増やしてもらうわ、割れたら10分から5分に短縮でどう?」

「短縮しなくていい」

「千聖がそういうならいいわ、じゃやってちょうだい」

シアは障壁を展開する。前と同じように(第10話 参照)手の周りに光の線が輪を作る、拳を握りと拳全体を覆った。

「白咲流 拳闘術 太極拳 槌覇燥霧魈」

空気圧が辺りに流れ、みんなが目を閉じるか逸らした。技を繰り出した千聖は驚きで止まっていた。そう障壁が砕けなかったのである。シアも驚いていた。

「え!ビクともしてない」

「···いいえ、少しだけではあるけれどヒビが入ってるわね」

「ここまで衰退しているとはな···ソディー、どうしたら以前のようになる?」

「鍛え直すしか方法ないよ、幼い頃にあったあの訓練よりも」

「そう落ち込むでない、今の主は完全に回復しているとは言えないんじゃ、ゆっくり取り戻せとはいわん、それは主のプライド許さないじゃのうからの」

「···千聖様、」

舞夜を初めみんなが心配の視線を向ける

俯く千聖。スーッと扉があいて、

「夕飯の用意できたからみんなリビングに、、、って入ってくるの不味かったかな」

栞と美希が呼びに来た

「いや、大丈夫だ、さぁ、みんな戻るぞ」

少し顔を上げた千聖の声は生気を到底感じられるものでは無かった。リビングに戻り食卓を囲み、食事の途中で

「舞夜、、あとは任せる」

「!!はい、承知致しました」

千聖の言葉はいつも言っている事のなのに、暗くそして、重い口調だった。

トレーニングルームに繋がる扉をバタンと閉じて、出ていった千聖

「今、なんか暴走しかけてなかったかしら」

「!よく気づいたね。シア、でもあれは暴走しているんじゃなくて、怒っているってだけ」

「誰に対して?(*’ー’)」

「弱くなった自分自身だと思う。さっきのちさ、落ち込んでたように見えたから」

「正解じゃよ、今の主に何を言っても言うことを聞かんじゃろうから、今そっとしてやってくれ」

「···嫌です。」

愛美の一言に驚く一同

「そっとした所で、私たちの見ていない所で、無茶するだけじゃないですかそんなの私は嫌ですよ」

「私も同意見」

フランも同情し1番驚いていたのはラテだった。

「...何故?そこまで主に干渉できるんじゃ」

「そんなの一つに決まってる。」

「好きだから」

「好きだからです。というか、ここに住んでいる皆さん何かしら、千聖先輩に好意はありますよ。そうじゃなかったらここに住む選択を選ぶはず無いですから」

「愛美に言われちゃ、懲りないわね」

「(もう、あの頃とは違うわけか)」

「そう、か良いのお主ら」

一同驚いた顔をしていたが、

ラテの一言で誇らしいげな表情と安堵が見られた。

「ところでなんだけど、千聖君の呪いは全部ないんだよね?」

「そうだよ」

「食事はこれからも出来ないの?」

「···それなんだけど、呪いが体質化してるみたいでこれからも食べられません」

「呪いが体質化しているということは他の呪いも同様なのですか?」

「どうだろう?わかんないけど明確になってるのは味覚障害だけだよ。それ以外はまだ何も分からない!まぁ、問題ないよ、これから探るから」

「時間が経たたいとわからないわけね。焦っちゃダメよ、特にフラン」

「!シアに言われたくない」

閑話休題、

「ご馳走様じゃ、···さて、そろそろかの」

「???」

ラテが時計を見てセリフを放つとみんなは何事かと注目する

「皆、ワシについて来るんじゃ」

ラテが椅子から降りて先程出ていった千聖が開けた扉を開けると

開けた先に倒れた千聖がいた。

「千聖くん!!」

心配の表情で走って駆け寄る一同。

うつ伏せになっている千聖を仰向けにして顔を見る栞。すると

「Zz…」

「え、寝てるの!?」

「活動限界じゃよ、何度か見ているじゃろ」

「何度かと言っても、体育祭の1回しかなくないですか?」

「確かにそうかも」

「あぁ、そうか主の活動限界を迎えるときはお主らいない時じゃったわ」

「それって、大抵は夜に限界迎えてたってこと?」

「そうじゃ、」

「チサ2時間位で起きちゃうから、この状態のチサに会ってないと思う」

「睡眠時間のなさฅ(º ロ º ฅ)」

「1時間経たずにこれだと、ちょっと心配だなぁ、でも起きたら訓練始めちゃうだろうし、」

「なら、見張ってればいいじゃない」

「そうしようか、先程愛美が言ったように見ていないところで、こう倒れては心臓がいくつあっても足りないのでね、1日中とはいかないから、1、2時間程度で交代して、見守っていれば問題は無いだろう?」

「なにか問題が出来ても、皆さん呼べば大丈夫そうですし」

「賛成!!」

「とりあえず、どうにかして起こしましょう、そろそろマッサージして欲しいわ」

「欲に忠実になりましたねシアさん。千聖先輩がこんな状態なのに」

「関係ないわ、日課だもの!!」

シアのとっさな行動と欲により、千聖をどうにか起こして、マッサージしてもらう。その途中

「なんか、精度落ちたわね」

「すまない、どうも力が入りにくくてな」

「そう、まぁ気持ちいいからいいわ」

「そう言って貰えると助かる」

そうして、掛けどおり30分マッサージした。時間が過ぎて、辺りは月の光しか指す時間の頃。先程舞夜と手合わせした道場に足を踏み入れ、縁側に座り夜空を見上げる。

「眠れなくなったか、いくつか呪いが体質化している。これは困ったな。また、平穏な1人の夜か、さて、どうするか」

考え事をしていると、脳裏に1人の能力者がよぎった。

「···久々に文通でもしてみるか、あの方も喜ばれるだろう。···ラビィお嬢様貴方は今どうなされていますか?」

黄昏る千聖の後ろで開いているドアからフランが、

「誰?その人?」

「!フラン!!まだ、起きる時間じゃ無いだろう!?」

「もう、四時だよ」

フランの言葉に信用も持たずスマホの時間を見ると

「え、ガチだ!」

時間を確かめて驚いている千聖に急接近して、

「それより、今の名前の人誰!?」

「···ラビィお嬢様はクラークで執事の実習をしていた頃の主だ」

「舞夜が言ってた、空白の3年間の頃の話?」

「まぁ、そうだな、その3年間しか関わりは持ってなかったが、時々文通を通して、連絡は取り合っている」

「その人も能力者?」

「あぁ、あった時から覚醒していた」

「···どんな人?」

「あった時は警戒されていて、ろくに口も聞けない感じだったな、結局心許してからは、我儘で元気な少女になったけどな」

「···会いたい?」

「···いや、クラークにはまた足を踏み入れることは難しいからな、会いたいという感情は無いな。」

「···」

無言になったフランは千聖の腕に抱きつく。

「寒くないのか?」

「···こうしていれば暖かいから平気」

「俺の手は冷たいだろ?」

「それでも大丈夫。」

というフランだったが、心配になった千聖がその場から離れず、物体移動で襖を開けて中から布団を取り出すとそれをフランに掛けた。安堵したフランの寝顔を見て。

「(安心出来る世の中に本当にこの世は向かっているのだろうか?差別や軽蔑の無い。能力者が行きやすい世界に出来ているのだろうか?1人の力で世界の理を変えるのは無謀なのかもしれないな。···それをやり遂げた初代は何者なんだ?)」

時が過ぎて、朝食を食べ学校に登校する準備をして、教室に入って席に座る。

しかし、いつもと空気感が違っていた。

「ど、どうしたの···この緊迫感?」

「あの不良女子、如月焔が朝っぱらから登校しているんだけどな、どうやら人探ししているみたいでよ、全クラスにツラ出して暴れてやがる。」

「朝からバタバタしているわね」

「さっき来たんだけど、圧が強すぎてみんなひよっち待ってよこんな感じになっちまった。」

「誰なんだろうね、探している人?」

「さぁ~な、あのレッドクイーンを怒らすくらいだ、意外と千聖だったりしてな」

「でも、探しているのは生徒みたいだし、教師の千聖はないじゃないかな」

「分からんぞ稔海、千聖の事だ。何かしら絡んでいるかもしれんぞ」

「どうなんだろうね」

団欒していると教室の前扉が開いて、千聖が教卓の前に立つ。

「HR始めるから号令頼む」

起立礼着席から始まり

「あれ、千聖がHRやるなんて初めてじゃん。」

「美春先生が病院に午前中だけ通うため、俺がやることになっただけだ。あとエマ。先生を付けろ」

「ほーん、わかったよ千聖先生」

「じゃ、今日の予定だが、一限の国語が五限の数学と交換になったから準備すること以上だ、各自準備しろ」

そうして、生徒達は各々準備をして、授業に備える。いつも通りの時間が過ぎて、五限目美希のいるクラス似て、授業をしていると、ガラガラと扉を勢いよく開ける音ともに如月焔が入ってきた。教卓の前を通った時

「遅刻してきたが、参加する意欲があるとみて出席にしておくからな」

「ハっ、そりゃどう···も···って···あぁ~~~!!!」

指を刺して驚く焔

「その声昨日の野郎じゃねぇか!!てめぇ邪魔しやがって、どこいるっと思ったら」

「話があるなら放課後に聞こう、今は授業中だ、さぁ席に着きなさい。」

「ハッ、お前誰に向かって!」

「いいから、席に着け」

鋭い眼光が焔に向けられ、恐怖を感じた焔は怖気付いて大人しく席についてそっぽ向いた。何事もなかったのように授業進め、放課後、談話室にて、

「で、なんで昨日助けた、てかなんでしがない学生とか言っときながら教師の立ち位置にいんだよ、訳わかんねぇ」

「···訳分からないのは、学校に登校していないからだろう?」

「うっせぇ、来るか来まいかは自由だろ、お前が決めんな、つーか最初の質問に答えろ!」

「視界に入ってしまったからな、身体が咄嗟に動いただけだ」

「お前、何者だ?あの空中旋回、並の人間じゃ無いだろ?」

「厳しい訓練を乗り越えて来た軍人と付け加えておくか?」

「なんで!疑問形なんだよ。そこは自信持てよ。···まぁ、いいや。これは単なる疑問なんだが、お前あの動きなんかの流派か?」

「そうだ」

「白咲流か?」

「そうだ。よく気づいたな」

「···ま、クソみてぇな両親のしつけのせいで、動き見ただけで気づいちまったんだよ。」

「···つかぬ質問をするが、両親はどうした?」

「んなもん死んだよ4年前にな!!」

「そうか、すまない。気を重くさせた」

「別に気にしちゃいねぇけどよ、あんたは私をどうしたいんだ?」

「強制はさせたくはないんだが、できる限りで構わない授業に出席だけでもしてくれないか?」

「やなこった、テストで赤点取ってねぇんだ別にいいだろ?」

「テストだけではダメだな、出席日数も成績に関わってくるものだ。これでは留年してしまうぞ。むしろよく2年に上がれたと関心するほどにな」

「そりゃ、出席日数計算しながらあれこれやってたからな」

「そこまで器用にできるのなら、周りに迷惑をかけないという考え方はできないのか?」

「逆に聞くが、できると思ってんのか」

「···思っている。今聞く限りはな」

「どういう意味だ。ゴラ」

「まだ、知らない事ばかりだと言うことだ。とりあえず、もう街の路地裏には入るな、危険すぎる」

「そんなもん私の勝手だろうが、もういい帰る」

勢いよく立ち上がり、カバンを持って談話室から退室して言った焔。

「?」

座っていたところにハンカチが落ちていることに気づいた千聖は、それを持って焔の後をおった。外に出た焔を追う千聖

家の屋根の上から焔の同行を伺う。

「(これではまるでストーカーと同類だな。だが、生半可な尾行では、如月にバレる可能性がある。そうなると非常に厄介なことになってしまうな、如月が目的地に着いた所で、さりげなく···いやこれは如月の事を知る絶好の機会か、ここは限界まで追ってみるか)」

その後も焔の後を屋根伝いに追いかけ、焔の足が止まったのは、外見からでも分かるくらいのボロボロになった一軒家だった。

「さて、あいつらにあげるもの上げないとなって、あれハンカチがない...まさか!!学校に忘れたか。チッまぁいいや明日探すしかねぇ」

玄関の横扉を開けて中に入る。中も古風が感じる廊下で老朽化が進んでいた。

「焔お姉ちゃん、おかえりなさい!!」

小さい子供達が、焔に笑顔で近づく

「今日は何を持ってきたんだ!?」

「今日はたい焼き買ってきた。夕飯の後にみんなで食べような」

「やったぁ~!!!」

5人いる子供男児が3人の女児が2人それぞれ個性のある子ども達だった。

「焔お姉ちゃん、今日はお客さん連れてきたの?」

「え、そんなわけ」

焔が後ろを向くといたのは千聖だった

「な!お前!!なんで!!!」

「まさか焔姉ちゃんに、ついに彼氏か!!」

「んな、どこでそんなの覚えた!?」

「わぁ!顔赤くなった!!」

「あ、赤くなってねぇよ!!」

「わぁはぁー逃げろ、姉ちゃんが怒ったぁ!!!」

男児3人が廊下を勢いよくしかも笑顔で駆け回り部屋に飛び込んで行った。

「···俺はただ、忘れ物を届けに来ただけなんだが?」

「はっ?忘れ物」

疑問に思う焔に先程落としたハンカチを渡すと

「!」

驚いた焔は即座に千聖の手からハンカチを回収して、

「これ、何処に落ちてた」

「先程まで、話していた談話室に落ちていた。勢いよく立ち上がった時に落ちたんだろう」

「そっか、要は済んだろ、さっさと帰れよな」

「え、帰らせちゃうの?それじゃ彼氏さんが可哀想だよ、」

「!!!だから、彼氏じゃないっての!!!」

「じゃなくても、可哀想だよ。せめてもてなすべき」

「お前らいつの間にそんな言葉知ってんだよ。大人かよ」

「わかったよ、おい夕飯くらい食ってけ」

「いや、別に俺は要件が済んだら帰るつもりだったんだが」

「···もてなされて行かないの?」

「かっこいい彼氏さん」

女児2人の輝かしい視線に耐えきれず「わ、わかった、夕飯は一緒にしないが、もてなされては行こう」

「いぃやったぁ!じゃ、こっちこっち!!」

2人に腕を引かれて家に上がらされる千聖。部屋に連れてかれ、そこには長いテーブルが引かれており、先程の男児が騒がしく座っていた。

「こら、お前ら。大人しく待ってろ今夕飯作ってやっから」

「えぇ、姉ちゃんまた唐揚げとか言わないのねぇ~」

「なんだよ、いいだろ唐揚げでも」

「さすがに食い飽きたよォ~」

「違うもの食いてぇー」

「こら、男子たち、お姉ちゃんに贅沢言わないの、お姉ちゃんの料理は唐揚げ以外壊滅的なんだから、自分たちで作れないのに文句言っちゃダメ!!」

「おい、それが1番来るぞ、てか、まじでお前ら何処で覚えただよそんな言葉!!!」

「お姉ちゃんが持ってくる本に書いてあった」

「センスなさすぎだよ、お姉ちゃんは」

子供達の見境の無い言葉の嵐に焔の精神はグサグサと刺さっていった。

「···如月、冷蔵庫の中を拝見してもいいだろうか?」

「なんだよ、お前が作るってかぁ?」

「まぁ、そんなところだ。」

「子供たちの話を聞く限り、欲求不満のようなのでな。」

「え、彼氏さんが作ってくれるの!」

「食べてみたい」

「俺も俺も」

「唐揚げ以外で美味しければなんでもいい!」

「···と、子供達は言っているが?」

「チッ、わかった、もう好きにしろ」

「では、そうさせてもらう」

そうして千聖が、キッチンに立ち冷蔵庫を開けて、考える。ものの数秒で冷蔵庫の中から、材料を並べて料理していく

「ねぇねぇ、彼氏さん!」

「···あぁ、その彼氏さんと言い方やめてもらっていいか、俺は城ヶ崎 千聖 千聖と呼んでくれ」

「じゃ、千聖お兄さんだ!」

「(真白もこのくらい素直になったらいいんだがな、今言ってもどうにもならないが)」

「君は素直で明るくていい子だな」

「エヘヘー、褒められたぁ」

「良いなぁー、私もして欲しい」

「君は欲張りな子なんだな」

物欲しそうに見る女児2人に頭なでなでする千聖。焔が男児3人を相手し、千聖が料理しつつ女児2人の面倒を見ていた

「さて、出来た」

出来た料理を更に盛り付けていく。それを部屋に持っていき縦長のテーブルに置いていく。

男児達が待ちきれずつまみ食いをしようとするがそれを焔が止めた。最終的に数多くの料理が並んだ

「これで全部だ」

「この短時間でこの量作るとかマジかよ...まぁ、いいやほらみんな手洗って来い。」

「ハァーイ」

子供達は元気に洗い場に行って、帰ってきた

「ほら、挨拶してから食べろ」

「ハァーイ、いただっきまぁーす!!」

子供達は両手を合わせて大きな声で、挨拶をし箸を持って食べ始めた。皆が美味しく食べる中、焔だけが、警戒していた。

「なぁ、変なもん入れてねぇよな」

「子供達の要望に応じただけで、警戒するようなものは入れていないから安心しろ、それに子供達の表情がそれを何も無いと物語っているだろう?」

「チッ(反論出来ねぇ)」

「姉ちゃん食べないなら食っちまうぞ!」

「あぁもうわかったよ!食えばいいんだろ食えば」

勢いよく口に運んだ焔は

「まじで美味いじゃん、これ」

「口にあったようで何よりだ」

「ん?でも待てよ?」

焔は立ち上がって、キッチンの冷蔵庫を開ける

「お前まさかこれ、野菜だけか?」

「いや、冷蔵庫にあった肉も魚も使っているが?」

「じゃ、なんで冷蔵庫にあった野菜減ってんだよ!」

「···今並べている料理に使ったからだ」

「え、、こいつら野菜ほとんど食わないのに」

「だろうと思って、ペースト状にして、味の分からないように濃い味付けをしている。こうすれば好き嫌いのある子供でも食べられるようになる。元の野菜本来味は変わらないがな」

「え、お野菜使ったの?」

悲しい表情をする女児

「使ってはいるが、食べててそう違和感は感じないだろう?」

「うん、ないけど。でもぉー」

箸を止めた女児の頭にポンポンと手を置いて、

「無理に口に運ばないでもいい、好き嫌いは誰でもあるものだ。好きなだけ食べなさい、だがな、この先苦手あるいは嫌なことでも、やらなきゃ行けないことがあるんだ、それを乗り越える勇気を今のうちにつけておきなさい」

「どうすればいいの」

「···そうだな?如月みたいに誰にでも怖気づかない、立派な大人の女性になれば、きっと乗り越えることが出来るだろう」

「うん、わかったやってみる」

「おい、変なこと吹きかけんな、俺みたいになったら不良になんだろうが」

「不良という自覚はあるんだな?」

「馬鹿にすんじゃねぇ」

そうして、千聖の振舞った料理は残さず食べられ、満腹になった子供達は眠りについた。皿洗い中

「まさか、あんまり食べない美波のやつまであんだけ食べるなんてな」

「如月も箸が止まってなかったように見えるが」

「正直ガチで美味かったんだよ、言わすな一々」

「それはすまない···ところで如月が学校に通わなくなったのは、あの子供達が原因か?」

「まぁ、そうだけど...詳しいことは

...

···

・・・次回話す!!!」

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