第13話 双誠

朝早くから身支度を整える真白。今日は稲葉学園で行われる延期の遠足である。2日前に雨で延期になり土曜日に決行することになった。学校にいつもよりも圧倒的に早く送り届け。すぐに家に戻り。リビングで凪紗と一緒に頭を抱えていた。

「え、どうしたの?」

「いや、秋華祭までに色々と間に合いそうになくてね。どうするかと悩んでいる」

「まさか、あそこまで切羽詰まるとはな」

「毎度のことだよ、ただ今回は以上なくらいだ」

祭りに間に合わないと暗く澱んでいると

「千聖様。この包みは誰のものでしょうか?」

キッチンの上に置いてある弁当の包み

「あ、真白だな」

「え、てことはお弁当忘れていちゃったの!」

「...届けるか」

「・・・え?届けるってもう児童を乗せたバスは出ているのだろう?...まさか」

「そのまさかだ、直接現地に赴く今から出れば昼には間に合うだろう。...舞夜、一緒に来い」

その言葉に目をキラキラさせる舞夜

「よろしいのですか!」

「あぁ、すぐに出るぞ」

「お受け致します」

そうして舞夜の部屋がある方に出て物置に入ると大型二輪のバイクがある。ガレージの扉が開いて、エンジン音を鳴らしハンドルを切って行った。

一方真白は先生の先導のもと山を登っていた。日が登りつめた頃真白達も登りきってそこでお昼を食べることになったがこの時真白はお弁当を忘れてきたことに気づいた。表情が真っ青になり、真白は焦っていた。と、その時。ガシンガシンと重い音が近づいてきた。銃を持ったテロリストが襲撃してきたのだ。児童も先生も恐怖に怯え出す。

この時千聖達はと言うと、整備された山道を通っていた

「千聖さん達の近くに武装反応を確認しました」

「悪いがこちらの用事を済ませてからだ」

「ここに来るまでに排除しすぎて間に合うものが間に合っていませんから」

「うぅ、それはすみませんこちらも仕事ですので。とりあえず座標送ります。近くにオッドアイ能力者の反応もありますのでできるだけお早めに」

ポケットからスマホ出して座標の確認をする。その後に能力を使って再度確認する。

「同じ反応。好都合だな...舞夜。戦闘態勢」

「承知致しました」

バイクに座っていた舞夜がバイクに立ち上がり、上空へと舞い上がる。

「ツクヨミ」

そう言ってはるか彼方から紫色に光るものが降ってきて。舞夜はサイボーグを装着する。そして次にバイクに運転したまま。

「ソディアス」

と言うといつも通りのサイボーグを装着したが、乗っていたバイクも同じように白い装甲に金色の線が駆け回るように変身した。山道のガードレールを飛び越えて林を通っていく、この時に舞夜も乗り直した。林の間を猛スピードで通り抜け飛び出したのは、怯えている児童達の前だった。空中でバイクを蹴り飛ばしてテロリスト集団を吹き飛ばすと、バイクを華麗に受け止めた。

周りの児童が千聖に注目している中真白の背後にお弁当の包みを置いた舞夜は空中に飛び上がり、残りの残党を始末する

「白咲流」

「黒咲流」

「機械術 鋼縛 華蹴」

倒れているテロリスト達を一瞬でひとまとまりに拘束。身を寄せあって気絶しているテロリストを持ち上げて上空に投げ飛ばした。

その後は何事も無かったようにバイクに乗ってその場を颯爽と消えていった。

児童たちが呆気に取られていると、真白は背後にある包みに気づいて開けると

お弁当と一緒に紙があり、そこには、渡し忘れたましたすみませんと書いてあった。バイクで走行中。サイボーグを解いた2人は

「さぁ、千聖様。これからどう致しますか?」

「さすがに時間が掛かりすぎたからな。この際、買い物して帰る。」

「フフ、つまり2人だけでデートという訳ですね!」

「飛躍し過ぎだ。そういうこと言うのならすぐに帰ってもいいんだぞ」

「うぅ、わかりました言いませんからお買い物に行きましょう千聖様」

「なら、このまま急行する」

山道を下って、最寄りのスーパーで買い物をする。終始舞夜は嬉しそうな表情を浮かべていた。買い物が終わりエコバッグを持って家に帰宅する。リビングでは午後も変わらず凪紗が酷く悩んでいた。

「ただいま。って皆どうした?」

「いやぁ、終わる仕事が終わりそうになくてね。皆にも協力してもらったんだが見ての通りさ」

「こんなこと毎日のようにやってるわけ!...よく身体持つわね凪紗」

「いやいや、毎日はないよ。時々こういった波が来るだけさ」

「それでもこれはキツすぎです」

「おかげで、こちらは順調に進んで来たから感謝するよ」

「それならいいですけど」

「とりあえず。次に学校に行く時はまた一段と忙しくなるよ。千聖」

「気合いを入れないとだな。」

そういった話をして、翌日学園は祭りの準備で1層慌ただしくなっていた。

体育館にて、

「千聖、どうだい順調かい」

「まあ、だいたいは出来上がってきている」

「すまない。君にここを任せるのは酷だと思っていたが任せて正解だったようだね。」

「そりゃどうも」

作業を止めて話していると、壁の飾り付けでハシゴに乗っていた。女子生徒が足を滑らして、落ちた。それを千聖が咄嗟に支えると

「大丈夫か?」

「あ、はいお陰様で」

「常に周りに注意して、行動してくれ真希...?いや美希の方か」

「!」

十佐姉妹の妹の美希は驚いた表情をした騒動に気づいた姉の方の真希が

「すごい音したけど大丈夫!美希」

「あ、うん。助けてもらったから...それより真希ちょっといい?」

そう言って美希は真希に耳打ちする

「ok、わかった」

そうして、2人が千聖の前に立ち

「千聖。どっちが真希でどっちが美希か言ってみて」

真剣な表情で2人はそう問いかけると千聖は真顔で。

「右が真希で、左が美希。だろう?」

「!?...もう1回、今度は千聖目を瞑って」

千聖は大人しく目を瞑ると、しばらくして

「うん、いいよ。開けてまたどっちがどっちか答えて」

「今度は変わったのか右が美希で左が真希」

「あたりだぁ!!どうしてわかったの!?」

「見た目は似ているが性格や声の性質に若干だが違いがある。それで気づいた」

「すごいな千聖、私でも間違えるのに」

周りのみんなも共感する。それには理由があった。十佐姉妹は学園でも有名な美人姉妹で告白は何回もされている。される度に千聖にやった様にどっちがどっちかの質問をしている。見た目だけの判断で常にされているため中身を見ているのか試している。告白した男子生徒達はこれに答えられず、撃沈していた。

「真希、千聖なら頼んでもいいんじゃないかな」

「え、でも、申し訳なく無い。2人共助けてもらったけど流石に...」

「?どうした?」

「あ、いえなんでもないです。さぁ、作業を続けないと間に合わなくなっちゃいます!!」

焦ったようにその場を離れ、装飾作業に入った真希につられみんなも焦りつつ作業に取り組んだ。

「よし、体育館の装飾は終わったな。みんなお疲れ様」

みんなが疲れ切っている中で凪紗と千聖は平常心だった。

「千聖、少し頼まれてはくれないかい?」

「なんだ、会長?」

「先程、十佐姉妹の方に来賓用のパンフレットをコピーして欲しいっと言って置いたのだが、時間がたちすぎていてね。私はこれから打ち合わせがあるし、千聖にしか頼めないんだ。行ってくれるかい?」

「わかった。どこに行ったかだけ教えてくれ」

「パソコン室に行っていると思う」

「了解」

千聖は体育館を急いで出て本校舎のパソコン室に向かう。勢いよくドアを開けると、血相を変えた十佐姉妹がいた。

「千聖、どうしよう。データ消えちゃった!!」

「!?消えたって何かエラー表示が出たのか?」

「ん、いや、消えた」

「?見せてくれ」

十佐姉妹が場所を開けてその空いたところに千聖が入りパソコンを動かす。

「(ハッキング問題は解決しているから外部の可能性は低い。となると)

あ、ほんとに消えてる」

「本当にごめんなさい!!間違って消してしまいました。」

真希が全力で頭を下げてくる。

「気に病む必要はない、このくらいではキモは冷えないからな」

「え、それって」

千聖はポケットからUSBメモリを取り出してハードディスクぶっ刺した。

「念の為にバックアップを取っておいて正解だった。これで元通りだ。会長から言われた部数は?」

「えっと、150部って言われた。」

「了解。これであとはコピーされるまで待っててくれ。全部出来たら体育館に持って行ってくれ」

「ありがとうぅ千聖!」

「次からは、気をつけてくれ真希、美希

じゃ頼むぞ」

パソコン室を出ていって、廊下を早歩きで通り過ぎていく。取り残された姉妹は

「なんか、変な感覚」

「私も」

クラスにて、

「おぉ、やっと来たか!城ヶ崎」

「すまない、色々と取り込んでいて遅れた。それじゃ始めよう」

取り掛かろうとするとフランが千聖の服を強く掴んで、

「ちさ!...顔色悪い」

心配の眼差しでそういった。

「やることが多くて休んでいないだけだ。心配をすることは無い。休める時にはちゃんと休むから」

「なら、休め!城ヶ崎。どうせまたこれから生徒会の仕事で忙しくなるんだろ!」

「まぁそうだが、いいのか、俺がいなくて」

「千聖はやり方を教えればいい( *´꒳`*)」

「そうです。その間千聖様は座って休まれてください。その間はクラスのみんなで喫茶店の準備を致しますので」

「...そういうことなら言葉に甘えよう」

そうして、千聖は座りつつブレンドのやり方を教えて、メニューが完成した。

「うん、これなら充分店で出せるレベルね。いいんじゃないかしら」

「甘さ控えめなのにコクがあるのが絶妙だね」

「よぉ~し、これでクラスの出し物は揃ったな。衣装は用意できてるし、間に合ってよかったぜ」

「それは良かった。当日はクラスにベッタリとは行かないだろうが、大成功で収めよう」

「おお!」

準備で時間が過ぎて、夕日が沈む頃、生徒会の仕事で帰りが遅れた千聖の前に十佐姉妹がたっていた。

「どうした?」

「今日は色々っていうか先週から何かと助けて頂きありがとうございます」

「別に気にしなくていい偶然が重なっているだけだ」

「たとえそうだとしてもお礼がしたいの...だからもし迷惑じゃなかったら、今から家に寄ってください。」

「!わかった。そういうことなら同行しよう」

そうして、姉妹の側を歩いて、バスに乗り遠く離れた家に着いた一行は中に入る

「どうぞ」

千聖の目の前にお茶が置かれる

「随分と広い家だが、両親は居ないのか?」

「親は2年前に学園に上がる頃に死んだ」

「!それはすまない。軽卒なことを聞いた」

「ううん、大丈夫もう割り切ってるから」

「じゃ、ここでは2人で暮らしているのか」

「そう」

「親戚に引き取ってもらったりは?」

「それも叶わなかった。2人は無理どっちか1人って、でも私たちは離れたくないしこの家を捨てたくないの。だからこうして2人でこの家に住んでる」

2人の表情はだんだんと落ち込んで行った。そこに漬け込むように千聖は質問を繰り返す。

「どうやって生活を食いつないでいるだ?」

千聖の表情もだんだんと強ばって行く

「お隣の御家族が状況を理解してくれてたまに食材差し入れしてくれるからそれで生活してるけど、お金に関しては1文無し」

「バイトはしないのか?」

「それも考えたけど、ドジするから邪魔になちゃって何度かクビになった」

「...また、心を抉ることを聞いてしまったな。所でなぜ、俺をここに呼んだ?恩返しだけとは思えないんだが?」

「それは...」

3人で話し合っていると、突然ドアが強く叩かれ

「おい!!いるのはわかってんだよ早く出て来いゴラァ!」

男の怒声と叩く音で、姉妹は恐怖に染った。姉妹はお互いに抱き合って

「真希ぃー」

「だ、大丈夫だよ。美希。今回も引いてくれるよ。だから、大丈夫」

そういった2人の身体は震えていた。

「(何やら、大きな問題を抱えているようだ)」

そして、真希が

「ちさとぉ、助けて、お願いあの男の言いなりになると、私達が壊れちゃう」

その言葉に千聖は立ち上がって、千聖はメガネを外して目はガチになった。

「いいだろう、その願いに誠心誠意を込めよう」

震える姉妹を後に廊下に出て、玄関を開ける。すると男以外に老年の女性がいた。

「誰だ?お前?」

「真希と美希の友達とでも言っておこう」

「はぁ~なんでそんな奴がここにいるんだよ!」

「2人の恩返しを俺は受けに来ただけだ」

「あ、何言ってんだお前?」

「そんなことより早く出て来ないさいよ。」

恐怖に染まった2人が恐る恐る廊下に出た。千聖は守るように仲介に入って話をする。

「あんたらは何が目的だ?」

「あなたには関係ない。これは身内の問題なのよ部外者は黙ってなさい」

言われた通り黙ったが怯えている二人を見て。千聖は反論する。

「関係がない訳では無い。俺がここにたっている時点で関係は持っている」

「あぁ~、ほんと何言ってんだてめぇ...とりあえず、おいさっさとどっちか俺の女になれや!どっちがなっても変わらねぇだろうが、いつまでも先延ばしにしてんじゃねえよ」

男の怒声にずっと震え続ける。

「(そういう事か)ここまで聞いたからには後戻りは出来ないな。...真希、美希。2人には4つの選択肢をやる。

一つ、これからも今まで通りこの家で暮らす。だが、この親子のやり取りは継続する。

二つ、真希がこの親子に引き取られて美希は俺の家で暮らす。

三つ目は二つ目の逆だ

そして、四つ、この家を捨てて2人一緒に俺の家で暮らすか...の4つだ。悪いが時間がないからこの場で決断してくれ」

「ちょっと待ちなさい。なに勝手な事言っちゃってるのよ!!」

女性まで怒声をあげると、千聖の怒りは頂点まで達していた。

「黙れ、これは2人の道を歩く上で必要な選択だ。身内であろうと首を突っ込むな」

千聖のオッドアイの輝きに親子は恐怖を覚えた。一方、千聖の選択肢に姉妹は目を合わせてお互いにうなづいた。そして真希が

「2人で一緒に暮らせるならどんな所で構わない!!」

「...いい決断だ。よく言った。...という訳だお引き取り願おうか」

「調子に乗ってんじゃねぇよ」

男は懐からナイフを取り出して千聖に斬り掛かるが、それを華麗に避けてる。しかし真希が吹き飛ばされて、美希が人質に取られる。

「どけぇ!!大人しくしろよ、お前らが悪いんだからな!」

ナイフを突き立てて、近づかせないようにする男

「今ならまだ間に合うわよう、ほらさっさとどっちか来なさいよ」

高みの見物をする男の母親

真希は痛がりつつ起き上がり、顔をあげた途端。

「美希!!!」

と叫んだ時、真希の両目が光輝き手元に銃が生成され引き金を引いた。銃弾が手にあたり男は悶え苦しむ、そのすきに美希が抜け出した。この光景を見た母親は逃げ出そうとするが、なにかに地面に叩きつけられた。なぜかと言うと美希の両目が光輝きを放っていた。

「一体何がおこってるっていうのよ」

「2人とも覚醒したか、これ以上2人に関わるな。警察のお世話になりたくなければな」

千聖はそう言ってのそのそと帰る親子を見逃した。

「さて、問題は解決した訳だが、本当に俺のところに来るのか?」

「?どういうこと」

「変わらず、ここに住み続けてもいいということだ。あの親子との関係は斬った。という事は二人を取り巻く恐怖を排除したことになる...俺のところに来るもよし。変わらずここに住むのもいいだろう、困った時は頼って貰って構わない」

再度顔を見合わせて

「ねぇ、真希?」

心配の眼差しで名前を呼んだ

「うん、分かってる...千聖、本当にごめんなさい私達は一緒ならどこでも住んでもいいの。だから、本音はここに住んでいたいし、この家を捨てたくは無いけど、お願いします。私達二人を引き取ってください」

頭を下げてお願いする真希と静かに頭を下げた美希。

「わかった。なら、身支度整えておいてくれ、俺は1度帰って二人を向かい入れる準備をしてくる。...そうだな。1時間で、支度できるか?」

「うん、大丈夫」

「そんなに持っていくものないから」

「なら、1時間後にまた、ここに来るから準備しておいてくれ。」

「はぁーい」

そうして、十佐姉妹の事件は幕を閉じた

一方、千聖家リビングにて、

「はい、紅茶」

「おぉ、これはこれは、悪いね」

「いや、いいよこれくらい。秋華祭の準備でここのところずっと険しい顔してたから」

「私そんな顔に出ていたかい!?」

「(゚ー゚)(。_。)ウンウン」

凪紗の驚きにみんなは口を揃えて頷いた。

「あぁ、...所で、真白」

「!あ、はい!」

「そう緊張しないでおくれ。明日は臨時休校なんだってね」

「あ、はい遠足休日に行ったので振替で、」

「なら明日、真白も学祭に来たらどうだい。家で1人というのも寂しいだろう」

「え、でも、千聖お兄さんに1人で外に出るなって言われてて」

「あぁ、そうか、狙われるから。だったら明日学園に送るために私の部下たちを同行させよう。それならなんの問題もないだろう。舞夜?」

「...はい、千聖様も把握していれば、問題はありません。」

「千聖に言わないとダメなのかい?」

「それは、どういうことでしょう」

「フッフッフ、理由は簡単さ、千聖の驚いた顔がみたいに尽きる。...彼と行動してわかったが、表情が硬い。笑いもしないし、驚きもしない。だから見たいんだ」

「千聖先輩は時たまではありますが、驚く表情は出しますよ」

「え、そうなのかい」

「えぇ、目を大きく開く時が驚いている時の表情です。まぁ、他の表情見たことないですけど」

「私が見ていないだけか...ふむ」

「まぁ、驚かしたいのであれば、おそらく言わなくてもいいかと思います。私も千聖様が驚いた時の顔を見たいので」

「あぁ、」

舞夜の発言に落胆する一同

「所で、明日が本番な訳だけど、やることは間に合ったわけ?」

「あぁ、ここにいるみんなの協力のおかげで、何とか間に合ったよ。」

「ふ~ん、なら良かったわ。また話は変わるのだけど...千聖の左腕を直したの栞が直したのよね?」

「う、うん、確か能力が蘇生と再生って千聖くんは言ってた。」

「それ、上手く行けば、どんな怪我でも直せるってことですよね。」

「うん、そうだね。正直実感無いけど」

「え、ないんですか!?」

「うん、千聖くんが初めてだったから」

「...一つ問いたいのですが、千聖様を直した時何をしましたか?」

「舞夜さん、怖いです」

「えぇ~っと、恥ずかしくて言えない!!」

手で顔を覆うって、隠す栞、笑顔が笑ってない舞夜、それに一線引く一同。

「...接吻したまでだ。というよりそれしか方法がないのは知っているだろう?」

「うわ!!びっくりした。急に出てくるじゃないわよ。肝が冷えるじゃない」

「すまない、こちらも急いでいたのでな」

「お帰りなさいませ。ち・さ・と・さ・ま」

「そう機嫌を損ねるな。悪いがまた外に出かけないといけないから、すぐに夕食にするぞ。栞、真白悪いが手伝ってくれ」

そう言って、キッチンに3人が並び、夕食の準備を始めた最中

「それと、皆に言っておくことがある。...この家に二人加わることになったからよろしく頼む」

「また、増えるの?ฅ(º ロ º ฅ)」

「あぁ、皆も知ってる人物だと思うぞ」

「じゃその二人を迎えに行ってくるってことですか?」

「あぁ、それと恵那、俺が帰ってきてから、練習をしたいのだが、付き合ってくれるか?」

「はい、付き合います!!」

「よし、じゃ、俺は行ってくるからゆっくりしていてくれ」

そう言って再度家を出ていった。

十佐家にもう一度顔を出すと、いくつかのダンボールが重なっていた。

「あ、千聖ごめん、見繕ってたらこんなになってしまった!」

「これはさすがに難しいよね?」

「...それで全部か?」

「うん、忘れ物はないよ」

「なら問題はない、すぐ運べる」

「え、どうやって?」

その時千聖の両目は光輝き一瞬でダンボール達を持っていった。

「え、すご!」

「よし、荷物は全て送った、あとは2人だけだ。悪いが2人とも目を閉じてくれ」

そう言われた2人は目を閉じる、次に目を開けた時そこは千聖家のリビングだった。みんなも驚いた顔をして

「まさかとは思ったが、まさか十佐姉妹とは、侮れないな」

「おぉ、見慣れた顔ぶれがいる。...って委員長じゃん、やっほぉー」

「あ、うん、えっとぉ、美希ちゃん?」

「真希だよ」

「あ!ごめん」

「いいよいいよ毎度のことだし」

「じゃ、まずは夕飯食べてくれ、荷物は運んであるから、あ、いやその前に、部屋のことなんだが二人一緒でいいか?」

「うん、大丈夫」

「なら、問題ないな。さぁ、ゆっくり食べててくれ。」

みんなが食べている中に入って、箸を進める姉妹。

「!これ、誰が作ったの!」

「味付けは千聖くんだけど」

「美味しい、久しぶりにこんなちゃんとした料理食べた」

「え、あなた達、日頃どんなの食べていたわけ?」

「裏山に生えてる草とか、食べてたよ」

「ないんという、

サバイバル精神ฅ(º ロ º ฅ)」

「まぁ、これからはこういった料理が毎日食べられるんだ、ゆっくり堪能すると...いい...さ」

凪紗がそういった事とは反対に、ものすごい勢いで食べ尽くす姉妹は

「オカワリ!!」

と言ってご飯がなくなったお茶碗を差し出した。

「ん、わかった」

千聖はそれを受け取り、よそって再度姉妹に渡した。そして、再び、慌ただしく食す。そうして、食べ終わると満足した表情で

「いやぁ、食べた食べたぁ」

「もう、流石に入らない」

「千聖君が追加で作るくらいに食べ尽くすなんて、驚きだよ」

「そうね、まぁ食べたことだし、お風呂行きましょう」

「2人も入ってこい」

「え、いいの!?」

「その間に部屋を片付けておくから」

「うん、わかった」

そうして、女性一同は浴槽にゆっくり浸かりつつ会話を楽しんでいた。しばらく時間がたって皆がお風呂から上がった時

「舞夜、2人を部屋に案内してやってくれ」

「はい、承知致しました」

「じゃ、恵那よろしく頼む」

「ハァーイ、朝までやっちゃいましょう」

「いや、2時間ほどで終わらすぞ。明日は一段と早いのだからな」

「むぅ、真面目ですか、さすがの私も寝たいです。朝まではやりませんよ。ただ、満足するまでやりましょう」

「...まぁ、それでいいか。...じぁ、練習始めるぞ」

そう言って作業室②に入っていった。

「では、お2人ともこちらにどうぞ」

舞夜は2人を連れて、自室に案内する

「はい、ここがお二人の部屋になります。隣の部屋は私なので、なにかお困りであれば、私か千聖様にお申し付けください」

「...広!」

「...オォォ...」

2階にある。皆の自室よりも倍広く。ベッドふたつとダンボール大量にあった部屋だった。驚きつつ部屋に入り散策する二人

「あとは、休まれてください明日は早いですから」

舞夜が自室に戻ろうとした所を真希が止めた。

「あ、待って!」

「はい?何でしょう?」

「正直に言って欲しいんだけど、やっぱり私たちって見分けつかない?」

「えぇ、そうですね見た目だけではさっぱりわかりません」

「うぅ、そっか、ありがとう。じゃ、おやすみなさい。」

「はい、おやすみなさい」

そうして、みんなは就寝したが、凪紗は生徒会の仕事の残りを片付け、千聖と恵那は夜中まで練習した。翌日、日がまだ刺さない薄暗い時間帯の中、キッチンで作業していた千聖。リビングを横切るように歩く足音に気づき、

「あまり熟睡とは行かなかったのか?

真希」

「え、なんで気づいたの?」

「あまり大きい声を出すな。皆が起きてしまう。」

「あ、ごめん。...ねぇ、千聖ハサミってある?」

「?...あるにはあるが、どうするつもりだ?」

「私のこの髪を切るの」

「そういうことなら...貸さない」

「え、なんで」

「表情が強ばっている。なにか後ろめたいものがあるじゃないのか?...ものと言うより想いのほうが近いか」

「...ほら私たちって見分けつかないじゃん、だから、髪を短くして違いを出そうかと、それに...長いの邪魔でしかないから早く切りたい」

その言葉に千聖はしばし悩んで

「まぁ、いいか、真希こっちに来い」

「え、うん」

リビングに通じるまだ公開していない扉を開けると、そこは大きい鏡と、立派な椅子があった。周りには美容師セットのようなものが多くある部屋。

「じゃ、椅子に座ってくれ」

「え、なに、千聖が切ってくれるの?」

「資格は持っているから心配しなくていい。それに自分でやるよりは綺麗に仕上げられる。それとも、外でやってもらうか。金もかかるし、朝からやっているところなんてそうそう無いぞ」

「いえ、お願いします」

「ん」

そうして、千聖は真希のクビに布を巻いて、ハサミを取り出して、早速切っていく。

「どういう髪型にしたいとか要望は?」

「うーん、特にないので動きやすいように切ってもらえれば」

「了解した」

ハサミでチョキチョキと真希の長い髪を切っていく。

「真希に言っておきたいことがある」

「?どうしたの?」

「正直、俺も2人を見た目で見分けるのは難しい」

「え、そうなの!?」

「2人のオッドアイ能力者の反応で見分けただけだ。それが無ければ2人の質問に答えれていなかった」

「う、そうなんだ。やっぱり気づいてもらうには、何かしらの違いがいるよね」

「まぁ、そうだな、...よし、少しそのままで」

3面鏡を取り出して

「さぁ、お客様。こんな感じでどうでしょう?」

目を開けた真希は驚愕した。ロングヘアがショートボブになっていた。

「おぉー、すごいじゃん千聖!!」

「お気に召していただけたかな」

「うん、満足!!ありがとう千聖」

「起きてきたみんなの表情がどうなるのか楽しみが増えたな」

「そうだね!」

その後リビングに降りてきた皆は目をまん丸くして、驚くのであった。

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