第12話 欠損
学園では、中間テスト2週間後に秋華祭と言われるいわゆる文化祭が開かれる
「いやぁ、テスト終わったし、2週間後には待ちに待った秋華祭。学園生活を謳歌する絶好のチャンスじゃないか!そうは思わないか?城ヶ崎?」
「確かに、楽しいものになるのだろうが、俺は仕事が山ほどあるから、苦痛なものになるだろうな」
「あぁ、そっか生徒会にまじで入ったから放課後忙しいのかでもやってくれるんだよな」
「あぁ、頼みは聞く。そういうことだから、舞夜、シアみんなの事を頼む」
「言われなくても頼まれてあげるわ」
「はい、お任せ下さい」
みんなは先に帰ってもらい千聖は生徒会室に行った。生徒会のみんなと資料を見ていると
「どこのクラスも、やはり似たようなことに固まってしまうか」
「お化け屋敷やカフェとかがほとんどですね」
「まぁ、被らないように独自性を出してはいますが、」
「これでは、来賓達を喜ばせることが出来るのかが問題か?」
「別にいいだろう、文化祭の花は生徒たちだ。外の人間まで考える余裕はクラスのみんなにはないだろう。だったら生徒会が来賓にも喜ばれて、生徒たちにも喜ばれるものをやるしかないだろうな」
「実にいい案だ千聖。うんそうしよう」
「か、会長そんな簡単に決めていいのですか!?」
「なんだい、第二副会長反対するなら別の案を出して張り合ってくれないか?」
「く、なんでもありません。なんでだ、ポット出で生徒会に入ったやつに僕のポジションを取られた挙句。名前じゃなくて、第2副会長呼び、しかも、会長はこんなに幸せそうな表情を、城ヶ崎千聖覚えていろよ、いつかこの屈辱張らせてやる!)」
「よし、あとは私と千聖でやっておくから、皆は帰ってくれていいぞ」
「いいんですか会長!」
「あぁ、本番の日が大変になるだろうから、なるべく休息を取っておいて欲しいんだ」
「アハ!ありがとうございますでは失礼します」
書記担当の女子生徒は颯爽と生徒会室を後にした。
「そういうことでしたら、僕もお先に失礼します」
第2副会長も後に続くように出ていった
千聖がタイピングをして、凪紗が資料を読んでいると、
「さぁ~てやっと2人っきりに慣れた訳だが、少しはいやらしく手を出してもいいんじゃないかい?」
「そんなことを言う暇があるなら、俺も帰らせて欲しいのだが?」
「釣れないことを言わないで欲しいなぁ、そして、本気で帰らないでくれ」
「実行員の仕事も順調かい?」
「まぁ、まだやることが山ずみだが、当日までには間に合わせる。」
「余り無茶はするもんではないぞ。休息は適度に取りなさい」
そんな会話が日暮れまで続いた翌日
全校生徒を交えた集会の最中、千聖の小型無線機に通信が入った
「どうした?」
「武装反応を確認しました。テロリストの襲撃に備えてください。今回は許可が出ています。速やかに殲滅を」
「了解。舞夜いいな?」
「はい千聖様」
「シア、みんなの事を守ってやってくれ」
「えぇ、わかったわ」
と、その時学園の緊急サイレンが鳴り響いた。しばらくなり続け。体育館の中に武装したテロリスト達4人が入ってきた。銃を構え乱射していく。生徒たちはパニックなり外に出ようとするが、テロリスト達に包囲され身動きが出来なくなった。そして、千聖と舞夜が殲滅し始めた。
「白咲流」
「黒咲流」
「剣術 白狼 還沙煌絕塹」
各扉のテロリストを一瞬にしてまとめて再起不能にする術を2人で放った。
「生徒たちはその場で待機、命を落とされなくなければ絶対外には出るな。先生たちは、生徒たちの安否確認をお願いします!!」
そう言って体育館を出て学園本校舎入る途中で
「ソディアス」
「ツクヨミ」
2人のその声が、両者のXサイボーグの姿に変身した。
「学園本校舎内に、百人近くの武装反応があり、最上階に一般人多数とオッドアイ能力者の反応が1人あります。武装解除し能力者の救助を最優先にして下さい。」
無線機からの命令通り、本校舎の最上階を目指す途中急ブレーキをかけて、2人は止まり
「白咲流」
「黒咲流」
「機械術 止水仮想 鉄斬霊符」
サイボーグ状態の場合2人は流派を使えなくなる。その欠点を補うために編み出したのが、この機会術である。
この術は千聖の止水扇華同様だが銃はもちろん、身体の一部。今回は脚。をテロリスト全員分切った。テロリスト達は転倒し、這い蹲ることしか出来なくなった
最上階に向かい縄に縛られた先生達を解放その中には凪紗もいた。解放したあと、終わったと思っていたところに
「千聖さん、まだです残党が残って今体育館に!」
無線機の言葉を聞いて最上階窓から飛び出して体育館に飛び入り、テロリストを今度こそ殲滅した。 警察の到着を待つ間。テロリスト達を縄で拘束しグラウンドに集結させていると、
「おやおや、あんなにいてもう終わりですか仕事が早い人は困りますねぇ?」
若い男性の声が千聖の後ろから聞こえてきた。
「やはり、貴方でしたか、双聖学園数学科教授、儽司矢友永」
千聖が振り向くと、1人の女子生徒を拘束した友永が不敵な笑みを浮かべていた
「何をする気だ」
「何って、素敵な実験をするまでですよ。ここでね」
ドス黒い色をした注射器を女子生徒の首に流し込むと、ぶくぶくと広がり物理法則を破った変化が起きた。2本の脚でたって居ても、人の形はしていない。まさに化け物が誕生した。歯がむき出しになって目はなく、口が大きく開いている。
「さぁ、暴れろ!」
怪物は一目散に千聖に突っ込んでいき。直前で上空に逃げ友永の方に近づく
怪物は拘束されたテロリストを無差別に惨い音立てながら食べていった。
「な!」
「アハハハ、成功、大成功だ、これが本当のオッドアイ能力者の成れの果て、人の血と肉を常に欲するだけの化け物、怪物」
「能力者の成れの果てだと!?」
「あぁ、そうさ、刺したのは能力者達の血を複数混ぜたもの、それを能力者じゃない生身の身体に侵入されると拒絶反応をすぐ示して自我を無くし、あんなふうに無差別で貪り尽くす」
「あんたは、テロリスト側なのか!?」
「まぁ、能力者を狙うっていう時点ではテロリスト側だが、命の取引はしていないからね、それに僕は何も手を下していないし、というかこんなのんびりしていいのかな?あの怪物は次の標的を狙うようだよ」
「!...この人でなし!」
怪物が走り出したのは、体育館だった。
でかさの余り扉から入る事はできず。その後に千聖に吹き飛ばされた。
「今すぐ本校舎に逃げろ!!喰われるぞ」
再びパニックなった、生徒たちは先生の指示のもと、本校舎に逃げた。
未知なるものとの戦いは苦戦の一手だった。
「白咲流 抜刀術 白凪 駆嫘瑠裂破嶕」
腹部付近を一刀しても、すぐに再生して、致命傷を取れない!
むしろ千聖が防戦一方になり、怪物は千聖を丸ごと喰いちぎろうとしていた。
押される一方でグラウンドの砂に足を取られた隙を狙って腕でなぎ飛ばされた
バックヤードに身体を打たれ、意識が朦朧とする中、怪物の後ろ遠い方に避難したはずのフランの影があった。そして
「緊急戦闘態勢 強制装甲承認」
「(待て!)」
そう言っても止まらず、サイボーグの装甲を纏わされた。それを見たフランの脳裏に今まで見てきたサイボーグの活躍が浮かんだ
「チサが、今まで戦っていたんだ!」
その後も怪物と千聖の戦いは続いた
サイボーグを着用したとしても未知の相手となるとそうそう手出しできず。また、斬ったところですぐ再生されて戻ってしまう。激しい攻防が続きに続き最後には怪物が吹っ飛ばされた。その生え際に千聖の剣を投げ飛ばし、それがフランの目の前に突き刺さった。
装甲が崩れ、千聖の苦しい顔が出てくる
その苦しい表情を見て、フランは
「チサ!!」
目の前に突き刺さった剣を思いっきり上空に投げ飛ばすと、怪物の視線がフランに向き血を求めるかのごとく、フランに突進していった。
「まずい!」
投げ飛ばした。剣は無視して喰われるフランに千聖も向かった。
フランは死を悟り目を瞑った
怪物がフランを食べようとした時。
喰ったのはフランの頭ではなく、千聖の左腕だった。ボキボキと骨を砕く咀嚼音が怪物からなった
「どうだ。上手いか血に飢えた物の味は...」
そう言った千聖の左腕から血がドバドバ出てきて。目を開けたフランは驚愕する千聖の腕から血が大量に出て、怪物はそれを堪能していた。フランは
「いやぁぁぁぁ!!!」
悲鳴を上げ、両目が光り輝くと怪物の動きが止まり、爆散した。
辺りに血の雨が降りグラウンド全体が赤に染まった。
「チサ!!!」
意識が朦朧とする千聖を正気に戻そうと身体に触れ呼びかけたその時、千聖は何も言わずにフランの方に倒れ込んで目を開けることは無かった。
しばらくして、警察救急車が学園にきて、気を失った千聖は担架で病院に連れていかれた。千聖の家に住んでいる一同は心配の眼差しで、救急車を見送った。
そして、
「フラン、何故私達から離れたの?」
シアが怒りと心配で質問した
「チサが危ないと思って」
俯きつつ、自信なさげにそう言った
「だからって、フランが危険を背負う必要は無いでしょう」
「...それでも行かなきゃって思って」
「そのせいで、千聖があんなふうになったのは見ない振りをするつもりかしら」
「..違う!!確かに私のせいでチサがあんなふうになった。けどチサだけが危険な戦いをしているのが見てられなかった」
怒り俯きつつ話すフランにシアは手を挙げ用とした時、パチンとフランの頬を叩いたのは愛美だった。シアも皆も驚いていた。
「いい加減しろ!!フラン先輩が加勢した所で足でまといになるだけでしょ。加勢しなければ今頃千聖先輩は私たちの前にたっていたかもしれないのに!」
怒りの声が辺りに響いた。血溜まりのグラウンドを見に行っていた舞夜が
「そこまでにしましょう、みなさんで争っても何も生まれない。関係が崩れるだけです。見せたいものがあるので来てください。」
「なんで貴方はそんなに冷静なわけ?」
「?...千聖様が死んだわけではありませんから、大丈夫ですよ。また私たちの前に現れてくれますから。とりあえずこっちに」
舞夜の背中について行き、血溜まりのグラウンドを見ると
「あれを見てください」
血溜まりの境目が蒸発しているかの如くぶくぶくしていた。
「あれは何?」
「順応している途中です。手前が千聖様の向こうが怪物のものになりますね。」
「なんか...不気味("'._.)」
「また、あんなのが生まれるんですか?」
「どうでしょう、私の見解ですが。化け物になるための肉体、母胎がないとあんなふうにならないと思います。あれは過程に過ぎないかと、...では、みなさんこちらにもお願いします。」
血溜まりを避け舞夜がたったのは、千聖の剣が刺さった前だった。
「この剣は何?」
「千聖様の剣です。この剣は千聖様の余命を表しています」
「どういうこと?」
「この剣の輝きが無くなった時。千聖は消滅します」
「そ、そんな!」
「今は辛うじて保ってはいます。ですが千聖様には余命がありますから、そう長くはないかと思います」
「その余命って、どのくらいなわけ」
「詳しくは千聖様しかわかっていませんが、残り2ヶ月程かと思われます」
「はぁ!それって生まれつきですか、それとも呪いですか!?」
「わかりません。千聖様はそう言ったことを教えてはくれませんから。ですが、呪いかと思われます。千聖様は能力者としてはイレギュラーで複数の能力と呪いを所持していますその中に余命がある呪いも例外ではありません」
「それって今までもあったってことですか」
「はい、そうです」
舞夜の返答に言葉を失う一同
「ここにいても、仕方がありません。とりあえず帰りましょう。」
そうして、一同は暗い感情を持ちつつ家に帰った。リビングで会話もなく待っていると、栞のスマホに電話がかかってきた。知らない番号からの電話に渋々出てみると
「はい、もしもし...はい、そうですけど
...え!美春先生!...あ、はいわかりました、すぐ行きます。」
電話が終わり
「みんな、千聖くんが目を覚ましたってすぐに病院に来て欲しいって!!」
支度を素早く済ませて、病院に向かう
途中受付の待合室で美春先生と出会う
「先生!千聖くんは?」
「あいつなら今屋上にいる...あとアイツのことお前らに任せるぞ」
栞の肩をぽんっと叩いて先生は病院を後にした。
屋上にて、北風に揺られ患者服の千聖が夕焼けの街を眺めていると屋上に繋がる扉が開いて、皆が出てきた
「来たか、心配させてすまなかった」
皆は唖然としている
「千聖くん、腕が!?」
風に揺られ、服の袖がなびいていた
「あぁ、これか、あの未知なるものを片腕一本の消失凌げた。それに喰われたのが左腕なのが好都合だなんの生活にも問題は無い。」
「千聖様、こちらを」
そう言って舞夜は剣を差し出した
「!まさか、回収していたとはな、とはいえ、やはり輝きが弱まっているか」
「ねぇ、舞夜からある程度の説明は受けたけれど千聖から話してくれないかしら」
「まぁ、残り少ないし話してもいいか...残り2ヶ月無いくらいだ、それは呪いにより生命を絶たれる。どんな事をしても回避は無理に等しい」
「なん....で、言ってくれなかったの!」
フランが涙ながら聞いてきた
「聞かれなかったし、いずれ消滅する身、行ったところでそこまでの事だ」
千聖の視線は常に真っ直ぐだった。
その目に皆は言葉を失った
「まぁ、そこまで落ち込む必要は無い誰でも人はいずれ朽ち果てる身それが決まっているだけだ」
「・・・」
皆の沈黙が続く、
「これ以上は精神に来るだろう。先に家に帰っててくれ、俺はしばらく入院生活することになっているから」
「わかりました、無事に帰って来れるよう祈っています。」
そうして、落ち込んだまま屋上を後にし階段を下っていると、
「ごめん皆先に帰って、私用事があるから」
そう言って、下っていた階段を栞は再度駆け上がって行った。
再び屋上に戻ると夕焼けの見ている千聖がたっていた。
「はぁ、はぁ、はぁ、」
荒い息の呼吸をして、話を切り出した
「千聖くん!!その腕ってこれからどうなるの?」
「...入院生活中に検査をして、義手を作ってもらう算段になっているが、それがどうした?」
「なんかね、自分の身に何が起きてるかわからないんだけど、千聖くんの腕を直せるような気がするの...」
「1つ質問をする身体のそこから何か湧き上がってくる感じがあるか?」
「うん、あるよ」
「...それは...覚醒の予兆だ。能力者としての力が目覚めようとしている証拠だ...賭けてもいいかもしれないな」
「?」
「栞、これからやることは栞の覚悟がいる、それと俺の責任もな」
「う、うん。で、どうすればいいの」
「・・・フランと舞夜にもやったんだが、...舞夜が暴走した時俺がやったことを覚えているか?」
「え!?」
この時栞の脳裏にシアに怒った舞夜の光景のあとその後にやった千聖の行動を思い返した。その途端栞の顔が赤くなり
「え!まさか私からそ、そのき、キスするって事!!」
「あぁ、悪いが俺からやっても意味が無い。...栞にはいつも頼っているからな無理をしなくていい」
「む、無理はしてないよ。それに頼られるのは慣れてるから平気だよ、そ、それよりもそうすれば千聖くんは治るの?」
「さぁな賭けだからな治るかもしれないし治らないかもしれない。まぁやってみるしかないさ」
「わ、わかった。やるよもう、千聖くんにも皆にも悲しい顔して欲しくないから」
そうして、真っ直ぐな目で見ていた千聖はゆっくりと瞳をとじた。それに合わせ栞は千聖の口に合わせた。その時、千聖の左腕が生え 、口を離すと
「え、治ったの!?」
「そうみたいだな、蘇生や再生の類だろう」
そう言いつつ腕と手の感触を確かめる
「よ、良かったぁ」
「し、栞!」
腰が抜けて座り込んだ栞に手を差し伸べる千聖は
「これならすぐに退院できるだろうから、一緒に来てくれ」
「うん、わかった」
一方先に帰った一行は家の前に立ち止まった。なぜなら家の前に凪紗がキャリーバッグをもっていたからである。一行に気づいた凪紗は
「やぁ」
と言って手を振った。
驚き出しつつ凪紗を家に入れリビングで早速今日の出来事を凪紗に説明した
「なるほど、そうなっていたのか。とりあえず理解はした。千聖にお礼とお願いをしにここに来たのだが、そうか入院か。...明日千聖の所に行って説明しなければならないな」
深く考えていると
「あのォー、会長さんだけわかっても私たちが分からないんですけど?」
「おっとぉ、これは失礼。まぁ簡単に言ってしまうと私もここに住むということだ」
「いきなりね」
「・・・えっと、この家に住むにはオッドアイ能力者をもちろん特殊な書類が必要なのですが?御用意は?」
「........フっ、抜かり無いさ」
ドヤ顔でそう言って書類を手に持った
「少々、拝見させてもよろしいでしょうか?」
「あぁ、構わないよ」
凪紗から書類を受け取った舞夜は書類の面々を見てすぐに凪紗に返した
「はい、問題はありません。千聖様がお帰りになられた時にこれを渡してください。」
「了解した」
それから、病院を退院した千聖と栞は外に出て、歩いていた。
「病院の先生、驚いてたね」
「まぁ、義手を付けるような大怪我おっておきながら、次見た時には何も無かったように治っているんだ当然の反応だろう」
「う、うん。ところでさ、なんで警察署に?」
足を運んだのは家ではなく、警察署前だった。中に入ると漣が驚いた
「え、千聖さん腕喰われたって聞いったすけど、大丈夫なんっすか」
「見ての通りだ」
「なら、良かったっす」
「それで、犯人はどうなった?」
「逃走を測ってた見たいっすけど。つい先程逮捕され、本署に連行されたっす」
「現場の方は?」
「地面に散らばった血を検査したら、被害者の他に複数のオッドアイ能力者の順応した血が混ざってたっす。そこには千聖さんの血を含まれてるっす」
「その複数って誰だかわかっているんですか?」
「あぁ、それは今調査中っす。混ざりすぎて何がなんだがわからない状態っすけど」
「得られた情報はそれだけか?」
「はいっす、今はってところっすけど何か分かったら連絡するっす」
「じゃ、また何かあったらその時は頼む」
そういって警察署を後にし、帰路にまた立って、家に帰る。するとソファに座っていた凪紗が先程と同じように
「やぁ」
といって手を振った。
「入院していると聞いていたが、ここに帰って来たということは、退院出来たのかい。おめでとう」
笑顔でそう行ってくる凪紗は書類を渡すその凪紗に対して、
「まさか、会長が今日のことでこの家に住み着くことになったとは」
「おっとぉ、会長という呼び名はやめて欲しいなぁここは家だろう。ラフに行こうじゃないか」
「あぁ、そうだなよろしく頼む。凪紗」
そうして、家に凪紗が加わり食卓も一段と豊かになった。1人家族が加わっても普段と生活も変わらなかったが、千聖の腕を喰われたのを気に皆の中にひびが入って様子だった。真夜中リビングから続く。まだ、千聖以外入ったことのない部屋に千聖は電気をつけた。部屋の中には数々の楽器が建てられていたり、ドラムセット、グランドピアノ、キーボード、ギターベースバイオリンなどなど、千聖の作業部屋②。この部屋に何をするかと言うと、ピアノに指をかけおもむろに弾き始めた。悠雅に優しくピアノが鳴り響く。一方リビングに降りてきた恵那は
「こんな時間に起きてしまった。喉乾いたからなにか飲もうっと」
キッチンの冷蔵庫あけ、水を取り出し飲んでいると、微かにどこからか音がなっているのに気づく。
「この音って、ピアノの音?でもどこから?」
恵那は不思議そうに音ので初めを探し始めると、リビングに続く扉の前にたって
「(?ここからなってる。でもここって誰も開けてなかったような...こういう時は勢いよく開けちゃえ)」
そうして、恵那は扉を勢いよく開けると演奏を止めた千聖と目が合った。その後に部屋を見渡すと
「もしかして今弾いてた曲って新曲ですか!!!」
と目をキラキラさせ、大声を上げて聞いてきた。それに対して
「あまり大声を出すな。夜はかなり響く」
「あ!ご、ごめんなさい。扉閉めますね」
扉を閉めてそして、新曲の話になった。
「それで、新曲なんですか!?」
「まぁ、本来なら次の恵那の曲になるはずだったものだ」
「あ、そっか今休止中だから、その曲も」
恵那は一気に落ち込んだが
「あぁ、今の歌い手は作った俺だけだが、1週間後に迫った文化祭の有志の発表でバンドとして出すことは決まっている」
「え、それってボーカル千聖さんがやるんですか!?」
「まぁ、そうだな」
「つまり!JT様。もとい千聖さんの生声が聴けるってことですか!!!」
「そういうことになる」
「ひぁぁ!!最高過ぎませんか!それ!!...でもなんで?」
「以前から同じクラスの江間にバンドを組まれていてな。江間達は俺がJTであることは知らないでいるようだが」
「言わないんですが?」
「言ったところで、だろ?」
「あぁ、気づいてもらえなさそう」
「...寝ないのか?」
「それ千聖さんが言うんですね。まぁ驚きで眠気飛びましたぁ、ハハ...千聖さんお願いがあります。今ここで歌わせてくれませんか?私の中に眠るアイドルの意志が収まってはくれないみたいです」
「いいだろう。伴奏は任せてくれ」
「出来ればデュエットで歌ってください!!」
恵那の押しに負け、千聖は伴奏を弾きつつ一緒に1年前から恵那に対して作って来た曲全てを朝まで歌い続けた。
朝日が部屋に差し込み一通り歌い終えると2人は汗を流しながらぐったりしていた。
「ハア...ハァ...楽しいぃってもうこんな時間ですねぇ、長い夜だったなぁ。私歌ってる時こんな時間がいつまでも続けばいいのにって思っちゃいました。えへへ」
「なら、もう一度歌ってみるか今度はステージで」
「!!!それって!まさか私も千聖さんのバンドにってことですか!!」
「あぁ、恵那さえ良ければな」
「やります!やらせてください!」
最初から最後まで恵那の目の輝きが失うことはなかった。そして、いつも通りの朝が始まった。学園に登校しると慌ただしく、出し物の準備がされていた。江間にボーカルが増える話をすると
「マジでか!しかも前まで現役アイドルだったあの恵那と城ヶ崎が一緒に!」
目をまん丸くして驚いてそれを聞いていた稔海の魂は昇天していた。
「まぁ、いいか楽しけりゃなんでもいいや」
「なら本人にも言っておく」
「おお、頼むぜ」
このことを恵那に話すと恵那は大いに喜んだ。その後クラスのみんなで喫茶店の準備に取り掛かった。クラスで決めるとなった時1人の女子生徒が千聖の執事姿をもう一度拝みたいということで押し切られ、喫茶店になった。内装を煌びやかにし、メニューをどうするかの話になった。
「内装はこれでいいとしてあとはメニューだな。」
「ソフトドリンクは出すとして、ちょっと変わったもの提供しないと、インパクトは薄いよね。」
「だったらブレンドの珈琲と紅茶でも出すか?」
「それでもいいけど、誰がやるんだよ」
「俺がやろう」
と言った時だった
「それはダメよ。千聖くんには受付やってもらうのだから。裏方には絶対に行かせないよ!!」
「圧が強いよ圧が」
「そういうことなら、当日の客を入れるまでにある程度の準備は俺がしよう。それなら構わないだろう?」
「まぁ、そのくらいなら。でも当日は執事の正装にプラスしてメガネ外してコンタクトにして。いいね」
「あぁ、悪いがコンタクトはしないこのメガネは伊達なのでコンタクト必要ない」
「あ、そうならいいや」
「あとは、頼んでいいか。生徒会と実行委員会の仕事があるのでな」
「おお、いいぞ。しっかり働いてこい城ヶ崎」
「言われなくとも、じゃ行ってくる」
そうして、雨雲に寄せられた淀むクラスを後にし生徒会室に向かう途中
「真希、持ちすぎそのままだと落ちちゃう」
「大丈夫だよ美希このくらい平気平気」
中に色々と入っているダンボールを持った姉妹の生徒が階段を降りていた。
真希の方が階段で足を滑らし、階段から身を放り投げた。そして、ちょうど角を曲がった所で千聖が身を出して、落ちてきた真希を咄嗟に受け止めた。
持っていたダンボールも片手で受け止めもう片方で真希を支えていた。妹の美希は心配な様子で降りてきた。衝撃で目を瞑っていた真希が目を開けると、目の前に千聖の顔があった。
「お、貴方は色々と有名な人」
「隣のクラスの 城ヶ崎千聖さんでしょ?」
「まぁそうだが実行委員の仕事かあまり無理はしない方がいい怪我されて人手が減る方が問題になるからな」
「あ、はい気をつけます」
「実行委員の仕事頑張ってくれ」
そう言って片手に持ったダンボールを起き真希を立たせて階段を上がって行った
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