狂戦士登場

狂戦士


「自分が『狂ッテイル』と自覚したのはいつからだったか。気がつけばいつも戦いの場に赴いていた。気がつけばいつも俺の周りに化け物の骸があった。気がつけばいつも、俺は一人だった。人々は俺を恐れ遠ざけた。構わない。そんな事はどうでもいい。ただ化け物を殺すことだけが、俺の精神安定剤だから」








――狂戦士の前には無数の黒くうごめく影がある。








狂戦士


「そうだ。来やがれ……。ヒヒッ。殺したりねえ。殺したりねえ! もっと来やがれ! もっと俺を楽しませろぉ!」










――狂戦士は戦闘を開始した。上半身裸になり、狂気的な動きで敵を葬っていく。










剣士


「おい狂戦士! 何やってんだ!」








狂戦士


「よぉ剣士! 久しぶりだなあ!」








剣士


「もうよせ! もう身体中真っ赤じゃねえか!」








狂戦士


「るせえ邪魔すんな! 俺は殺す! そのためにここにいる!」






剣士


「そんな事して何になるっていうんだよ!」






狂戦士


「俺様の殺戮衝動は分かんねえだろうなあ! 温室でぬくぬく育ったテメエにはよお!!」








剣士


「そういう問題じゃねえ! お前がさっきから殺してんのんは、『蚊』じゃねえか!」








――狂戦士の周りには蚊がたくさん飛んでいる。








狂戦士


「蚊だからどうしたぁ!」








剣士


「いや近隣住民が怖がってんだよ! 上半身裸で発狂してる男がいるって」








狂戦士


「え、やだ怖い。どこにいるの?」








剣士


「お前だ、お前!」








狂戦士


「へっ、そうだ。俺様の殺人鬼としての匂いを連中は怖がってるのさ!」








剣士


「鏡見ながらもう一回同じ台詞を吐いてみやがれ」








狂戦士


「ぐあっ!」








剣士


「どうした?」








狂戦士


「強烈なかゆみが……! これが呪いか」






剣士


「いやただの虫刺されだろ! これから蚊取り線香焚くから、下がってろよ」








狂戦士


「うわっ、よせ! ぐわあああああ!」








ーー狂戦士は死んだ。








剣士


「ええっ!? お前は蚊か?!」










狂戦士


「蚊かって変なツッコミだな」








剣士


「生きてんじゃねえか!」










狂戦士


「それはそうと俺はもうキレたぜ! 女だろうと容赦しねえ!」








剣士


「血を吸う蚊って全部メスだもんね」








狂戦士


「おい剣士テメエも脱ぎやがれ!」










剣士


「いやだよ!」










狂戦士


「じゃあ俺様が尻を出すぜえ!」








剣士


「いや代替案おかしいだろ!!」








狂戦士


「俺は自分の手が折れようが足が千切れようが魔物を殺ぉす!」








剣士


「お前は尻出してるだけだろ!」








ーー狂戦士は尻を蚊に噛まれながら尻を叩いた。








剣士


「どんなナレーションやねん」








ーーその時、人間の尻を舐めるのが好きなヤギがやってきた。










狂戦士


「うわっ! 何だこいつは!」






剣士


「類は友を呼ぶ。だな」








狂戦士


「ちょっと剣士助けて!」








剣士


「帰ろ」








狂戦士


「おい! 待っおっっほおおおおおおおおおおお!!!」










ーー狂戦士のお尻から季節外れのタンポポが咲きました。










おわり


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