狂戦士、星になる。

剣士


「さて、今日も剣術道場に行こうかな」








――人間と同じくらいの大きさのカマキリが目の前を横切った。








剣士


「えっ!? 何だあれ、デカすぎるだろ! あんなのに人が捕まったら……!」








狂戦士


「ヒャッハー! デカいのは全部俺様の獲物だあ!」








剣士


「お、おい危ないぞ!」








――狂戦士はカマキリに捕まった!








狂戦士


「ぎゃああああ! 助けてー!」








剣士


「よし、これでしばらく一般人は安全だな」








狂戦士


「サイコパスか!」








???


「キシシ……」








剣士


「誰だ!」








バッファー


「あたしは『バッファー』よ。バッファーのマリッカだよ」








剣士


「バッファー?」








バッファー


「そう。味方の能力値を上げたり、相手の能力値を下げて戦闘補助をするのさ」








剣士


「よく分からんが、あのカマキリをどうにか出来るか!」








バッファー


「キシシ……お安い御用さ。あのお兄さんの攻撃力を高めてあげよう。それっ」








――突然狂戦士の筋肉が盛り上がった!








狂戦士


「うおおおおお! 何かパワーが湧いて来たぁ! おらぁ!」








カマキリ


「きゃいん!」








剣士


「犬かな?」








狂戦士


「ふん、オカマキリ風情が」








剣士


「オカマキリて。ありがとうバッファー。お前のお陰で助かった。何かお礼をさせてくれ」








バッファー


「キシシ……。それじゃあバフを掛けさせてくれないかね」








剣士


「バフっていうとさっきの身体能力を強化する感じの?」








バッファー


「そうよそうよ。あたし、人にバフを掛けるのが大好きなのよ。キシシシシ」








剣士


「(何か関わっちゃいけない人っぽいな)」








狂戦士


「面白ぇ! じゃあ既に最強の俺様をバフったら世界を征服できるなあ!」








バッファー


「キシシっ。0に何を掛けても0だって知ってるかい?」








狂戦士


「んだとテメエ! 0だとコラぁ」








剣士


「やめとけ狂戦士」








狂戦士


「もっと分かりやすく言えや!」








剣士


「いや小学校の算数じゃねえか」








バッファー


「キシシ……。お兄さんは頭にバフを掛けた方が良いよ」








狂戦士


「じゃあ掛けろよ早く! 頭にかけて頭に!」








剣士


「嫌味が通じてねえ」








バッファー


「キシシ……。じゃあ頭の回転が速くなるバフを掛けるよ。えいっ」








狂戦士


「うおおおおお! 何だか視界がスッキリしてきたぞおおおお!!! 2×2=9! 10+3=18!! 9-3=1!!!」








剣士


「すげえ! 全部間違ってる!」








バッファー


「手遅れです」








狂戦士


「足りねえ! もっとだ! もっと俺様に力をよこせ!」








バッファー


「キシシ……これ以上は副作用が出るかもしれないよ? それにお兄さんの頭がこれ以上良くなるとは思えないよ」








狂戦士


「るせえ! 早くしろぉ!」








バッファー


「どうなっても知らないよ。ああ、知らないよ……えいっ」








――狂戦士の顔が左右に激しく駆動し始めた。残像で狂戦士の顔が3つに見える。








剣士


「お前はキングギドラか」








狂戦士


「言ってる場合かあっ!」








――更に駆動スピードが上がる








狂戦士


「ぶるるばあ! ぶるるばあ!」








剣士


「ちょっと何言ってんのかよく分かんない」








狂戦士


「んばばばあっ!」








剣士


「おいバッファー。そろそろ元に戻してやれよ」








バッファー


「キシシ……。今お兄さんの頭は右から左へ、左から右へと動いている。これとは逆に左から右へ、右から左への力を加えたら、相殺されて頭の動きは止まるはず」








剣士


「あれ、その理屈ちょっとおかし……」








バッファー


「えい」










――狂戦士の顔が10倍の速さで上下左右に動き始めた。








狂戦士


「ボボボボッ!!! ボボボボボボぃっ!!」








剣士


「頭の立体機動か」








バッファー


「こういうヨーヨーあるよね」








剣士


「って悠長に言ってる場合じゃねえ! これ以上やったら本当に狂戦士の首が取れるぞ!」








バッファー


「キシシ……。さて、そろそろ本気で止めるよ。えい」








――狂戦士の乳首が回り始めた。(時計回り)








剣士


「何この世界一汚い風力発電!?」








バッファー


「キシシ……。間違ったよ」








剣士


「どう間違ったら乳首が回るんだよ!」








バッファー


「もう一回。えい」








――下半身の剣が回り始めた。(反時計回り)








剣士


「汚ねえ!! お前さっきからわざとやってんだろ!!」








バッファー


「そんな事より見てよ。夕日が綺麗だよ」








剣士


「いま昼の12時だよ!!!」








――その日、揚力を得た狂戦士は天に昇り、星になった。








おわり


























































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