第10話 勉強会と相談
「もうすぐ中間テストです。みなさん、初めてのテストですが気合を入れていきましょうね。」
朝のHRで園井先生が定期テストへの準備について話していた。今日は金曜日なので、来週からテスト週間だ。
「テストか…ウチ、大丈夫かな…」
「西宮さん、勉強苦手?」
「嫌いなわけじゃないんだけどね。なかなか身に付かなくって。」
「そっかぁ。僕でよければ教えるよ?」
「ホント!?じゃあお願いしちゃおっかなぁ〜」
「じゃあ廉也達もよんでファミレスかどっかでやろう。」
「うげ。綾人クンは分かってないな!まぁでも仕方ない。そうしよう。」
「うん、あとで誘っとくね」
「りょー」
こんな感じで勉強会が開催されることになった。廉也と美奈ちゃんは軽々了承してくれたが、市川さんは、「あの女め…」と謎めいたことを呟いていた。結局了承してくれたけどね。また西宮さんと市川さんが喧嘩しないといいけど…。
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次の日、僕たちはファミレス近くの駅前で待ち合わせすることになっていた。せっかくの待ち合わせなので、西宮さんを除いた四人はあえて別々で行くことにした。駅に着くと、すでに美奈ちゃんが待っていた。
「おはよう、美奈ちゃん。」
「おはよう綾くん。」
「なんか、こうやって休日に集まるの、中学校以来だね。」
「そうだね、最近はみんな部活見学で日程が合わないからね。綾くんは何部に入るつもりなの?」
「僕は当分帰宅部かなぁ。美奈ちゃんは?」
「私は廉ちゃんと同じバスケ部で、マネージャーすることにしたよ。」
「廉也のこと頼んだよ。あいつ、夢中になるとすぐ周り見えなくなるから。」
「うん!廉ちゃんのことは任しといて〜そこでなんだけどさ、実は綾くんに相談したいことがあって…」
「え?僕に相談?」
「実はね…」
美奈ちゃんが何か言おうとした時、大声で僕たちを呼ぶ声が聞こえた。
「お〜い!綾人〜!美奈〜!」
めちゃくちゃタイミング悪いですよ廉也さん!?あれ、隣にいるのは…
「おはよう。二越くん、美奈ちゃん。」
白一色に染められたワンピースを着た市川さんが立っていた。なんというか、可愛い。
「二越くんどう?ちょっと変だったかな?」
そう言って市川さんはくるりと回った。
「全然変じゃないっていうか、可愛いよ。」
「か、可愛い!?はぅぅ…」
市川さんが美奈ちゃんに支えられている。顔真っ赤だけど熱あるんかな?今後の体調が悪そうだったら中断も考えなきゃ。
「綾くん、可恋ちゃんだったら大丈夫だからね。」
さっきの不安を見抜いたかのように美奈ちゃんは僕に言った。そろそろかな……と思ったその時、目の前が暗闇に包まれた。
「だーれだ?」
こんなことするのは一人しかないというかあと一人しか待ち合わせしてない。
「西宮さん?」
「せいか〜い」
後ろを向くと西宮さんがいた。黒のタンクトップに水色のスウェットパンツ、深緑のジャケットを羽織っている。清楚ギャルって感じだな。
「綾人クン、ウチどんな感じ?」
「すごく似合ってていいと思うよ。ちょっとドキッとした。」
「う〜む、まぁ及第点かな。」
褒めが足りなかっただろうか。
「じゃあ、みんな集まったことだし早速いこーぜ!」
「廉ちゃん、あんまりはしゃがないでね。今日はあくまでも勉強会だからね。」
やはり廉也のことは美奈ちゃんに任せておけば安心だな。それはいいんだけど、それ以外が…
「あら、茜ちゃんは清楚ギャルで攻めてきたのね?」
「そういう可恋はただの清楚で攻めてきたんだ。」
「喧嘩売ってるのかな?ここでやってもいいんだよ?」
「吠えてるだけで楽しいの?まぁウチは正々堂々やらせてもらうけど?」
「「ぐぬぬぬぬぬ………」」
また始まった。とりあえず止めなければ。
「あの…二人とも?そろそろ着くから落ち着いてもらえると嬉しいんですけど?」
「そ、そうだね。ごめんね二越くん、この子が。」
「綾人クン、この子が喧嘩を売ってきて無視できなかったの、ごめんね。嫌いにならないでね?」
「大丈夫だよ。僕は二人とも嫌いにならない。」
「まぁ二越くんがそういうなら仕方ないね。」
「綾人クンに嫌われたら元も子もないし、仕方ないか。」
そうして二人の喧嘩(再)は収まった。いつも仲良くしてほしいものだけど…二人は犬猿の仲のようだ。
ファミレスに着いてからは、真面目に勉強会が開始された。僕と美奈ちゃんが先生となって、三人を教えていた。特に廉也は重症で、大変だった。勉強会中、特に市川さんと西宮さんの間にいざこざはなかったので助かった。マジでいつもこれで頼む。
無事に勉強会が終わって、また次のテストの時にやろうということになった。残り一週間は自分の勉強に集中しよう。
帰り道、美奈ちゃんに聞いてみた。
「そういえば、美奈ちゃん。相談したいことって?」
「あぁそうだ、今朝は廉ちゃんにタイミング無くされたんだった。やっぱりテスト終わったら話すね。」
「了解。」
それにしても、美奈ちゃんが僕に相談か…。美奈ちゃんは昔からしっかり者だから、僕が相談に乗ってもらう方が多かったんだけれど…それだけ重要なことなのだろうか。
家に帰ってもう一度考えたけれど、結局何かはわからなかった。今はとりあえずテストに集中だ。そう思いながら、ベッドの上で眠りについた。
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