第7話 遭遇、倉持玲央!

「は〜い。じゃあ今日の帰りのHRは終わりです。みんな気をつけて帰ってね〜」


よし、今からは図書委員会の顔合わせだ。なんだか緊張する。図書室へ向かう準備をしていると、市川さんが話しかけてきた。


「二越くん、一緒に帰らない?柳原くん達部活の見学に行くって言っててさ〜」


「いいよ。と言いたいところなんだけど、僕今から図書委員の集まりがあるんだ。ごめんね。」


「そっかぁ〜それってすぐ終わりそう?」


「ん〜係決めとか当番決めとかあるから遅くなるかも。申し訳ないけど今日は先に帰っててもらえるかな?」


「ちぇ〜まぁ委員会だから仕方ないね。じゃあまた明日ね、二越くん。」


「うん、また明日。」


市川さんはそう言って手を振って教室を出ていった。それと同時に西宮さんが教室に入ってきた。


「ごめ〜ん、綾人クン。友達と喋ってたら時間忘れちゃって。」


「あ、全然いいよ。ちょうど僕も準備できたとこ。」


「じゃあ行こっか。」


そうして僕たちは図書室へ向かった。


—————————————————————


図書室に着くと、多くの女子が入口付近にいた。なんの騒ぎだろうか。どうしよう。


「ちょっとあんた達、私たち図書委員だから、そこどいてくんね?」


西宮さんが先手をとった。


「はぁ、なに!?あんたみたいなやつが倉持君に会っていいわけないでしょ!?」


「そうよ!何様なの!?」 


「西宮なんて女子ファンクラブにはいないわよ!?」


ファンクラブ!?なんじゃそりゃ!?アイドルかなんか来とるんか!?ん、待てよ?確か女子Aが…倉持?どっかで聞いたことのあるような…はっ!


「それって倉持玲央か!?新入生代表の挨拶してた。」


「あら、モブくん倉持君をご存知のようね。」


「ちょっとあんた!くらもちかあげもち知らないけど、綾人クンはモブなんかじゃないわ!というか、倉持なんてやつ聞いたこともないわ!そっちの方が真のモブなんじゃないの!?」


「あら?じゃあそのモブ君は一体あなたの何なの?」


「そ、それは…」


あ、西宮さんは僕が答えられないほどにモブだということに気づいてしまったのか。いとかなし。と思っていると、突然引き戸が開いた。


「おや、君たちどうしたんだい?」


銀髪の少年が出てきた。

「「「倉持様!!!!!」」」


「あ、ちょっとそこの、もち!こいつらどうにかしなさいよ!」


西宮さん敵増やす行動ですよそれ…しかも倉持のこと「もち」って呼んでるし。


「あぁ彼女達がすまないな。君たち、これから委員会があるから彼らを通してもらっていいかな?」


「「「もちろんです!」」」


倉持ファンクラブの女子三人はスタコラサッサとどこかへ行ってしまった。


「彼女達が迷惑をかけたね。代わりに謝らせてくれ。すまなかった。」


超絶イケメンに新入生代表で新たに紳士というステータスまで!?ハイスペックすぎて声が出ない…というか西宮さんは女子三人の変わりように驚いている。


「まぁ、別にアンタは悪くないし気にしないで。私は西宮茜、そして隣の彼は二越綾人クン。どちらも一年三組の図書委員よ。」


「自己紹介ありがとう。僕は一年一組の倉持玲央だ。よろしく頼むよ。」


「よ、よろしくお願いします。」


やれやれ、ようやく僕たちは委員会に参加できるそうだ。僕は気になることがあったので勇気を出して倉持に質問をしてみた。


「ね、ねぇ倉持。」


「玲央でかまわないさ。」


「じゃあ、玲央。あの女子達、ファンクラブって言ってたけど、ほんと?」


「う〜ん。僕は誰が入っているかはわからないんだけども、本当だよ。」


「公認なんだ。」


「ルールは設けさせてもらったけどね。他人に迷惑をかけない。とか」


いや、今破ってましたよ…それにしても一年生にも関わらずファンクラブができるのか。多分入学式の代表挨拶で多くの注目を集めたのだろう。くそ…なんで周りはこんなすごい人ばっかりなんだ。僕が情けない。


「あ、一年生も揃ったね〜それじゃ委員会はじめよっ」


三年生の眼鏡をかけてる先輩、ここでは眼鏡先輩と呼ばせていただこう。スケジュールや、図書当番は委員長になった眼鏡先輩が取り仕切って、スムーズに決めることができた。


「はい。じゃあこれで委員会はおわりたいと思います。何か分からないことがあったら顧問の私か、委員長に言ってくださいね。」


顧問の先生がそう言って委員会は終わった。教室に戻ろうとすると、玲央が話しかけてきた。


「綾人、少しいいかい?」


「ん?どうかしたか?」


「連絡先を交換して欲しいと思って。これから君とは長い付き合いになりそうな予感がするんだよね。」


「お、おう。じゃあ交換しようか。」


「そちらの方もよろしいかな?」


「ウチ?別に構わないよ。」


そうして僕たちは連絡先を交換した。帰ったらメッセージを送っておこう。


「じゃあ、僕はこれで。二人とも気をつけて帰るんだよ。」


「ありがとう。じゃあな。」


僕たちは倉持と別れてから、教室に戻ってきた。「教室で少し喋ろう。」と西宮さんが言ってくれたので、そうすることにした。


「倉持ファンクラブ、ねぇ…どんな組識なのやら。」


「西宮さん、ファンクラブに加入したいの?」


「私?別に興味ないよ。それにさ…」


「それに?」


「ええと、その… あ、用事思い出した!ごめん、ウチ今日はもう帰る~!」


「え!?あ、ちょっと…行っちゃった。」


西宮さんはとんでもないスピードで教室を出て行ってしまった。よほど大事な予定があったのかな?まぁ仕方ないか。僕もそろそろ帰ろう。




その晩、西宮さんから突然帰ったことへの謝罪のメッセージが届いた。僕は「全然気にしていないから大丈夫だよ。」と送っておいた。今日また美男の友達が増えた。

その夜はずっと雲が空を覆っていた。



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