第9話 美少女バトルとメロンパンと妹

「二越くん、おはよー」

「綾くんおはよー」

「おっす、綾人」


「あ、みんな!おはよう。」


いつもの三人が来た。僕は今日日直だったのでみんなよりも早めに家を出たのだ。 


「あ!綾人クン!おはよ〜」


「西宮さんもおはよう。」


遅れて西宮さんが入ってきた。隣からはふわっと心地よい香りがした。


「綾人クン、前はいきなり帰っちゃってほんっとごめん!」


「え?あぁ、委員会の時のことね。全然気にしてないから大丈夫。むしろ、用事の方には間に合った?」


「う、うん。マニアッタマニアッタ…」


なんだか返事がぎこちないが、まぁ間に合っていたのなら問題ない。それより、市川さんがこっちを見てる気が…


じーっ。


やっぱり見られていた。


「い、市川さん、どうかした?」


「べ、別に?なーんにもないけど?ただお楽しみですね〜って思ってただけ〜ふふふ〜」


目が笑ってないよー市川さーん。目のハイライト消えちゃってますよー。怖くて冷や汗が出てきた。


「綾人クン?大丈夫?汗かいてるよ、ほれちょっと動かんといてな。」


「え?」


そう言って西宮さんはハンカチを僕の額に当てた。え、これってどういう状況?てか、今のハンカチ西宮さんのだよね!?やばいやばいやばい。とりあえず、最低限のことはしなきゃ。


「え、えと西宮さん?ありがとう。そ、それとそのハンカチ洗って返すから」


「え〜全然気にしなくていいんよ〜それとも、いかがわしいことに使用したりするのかい?」


「そんなわけないわっ!…あ、今のはその西宮さんに魅力がないとかそういうのじゃなくて…」


「冗談、冗談だよ綾人クン。まぁでもほんとに大丈夫だから。」


「ほんとに?それならいいんだけど…」


「うん!だいじょぶ~」


これはもう僕にはキャパオーバーだ。完全に西宮さんの手のひらの上で踊らされている。


「二越くん?やっぱり仲がいいんじゃない?」


市川さん、また目のハイライト消えてる。消しゴムで消されたのか?誰か彼女に目の色を塗ってあげてくださいお願いします。


「え?あ、まぁでも西宮さんは誰にでもフレンドリーだからね。」


「う〜ん、なんかそれだけじゃないような…ね?西宮さん?」


「ウチは別に…友達なだけだよ。あとウチは茜でいいよ。」


「わかった、私も可恋でいいよ。西宮さん、私負けないからね?」


「なっ…!?ウ、ウチだって負けないし!」


二人は何を争っているんだ?やはりもうすぐある中間テストだろうか。


「これから綾人は大変だなぁ」


「そうね。でも、あれだと二人の方が苦労しそうだけどね。」


美奈ちゃんと廉也も意味のわからないことを言っている。多分勉強のことだ。


「ねぇ綾くん、私と廉くん今日先帰るから、可恋ちゃんよろしくね。」


「了解。」


二人で下校か…高校に入ってからはほとんど四人できてたから慣れない感じするなぁ。


「そっかぁ〜美奈たちと帰れないのは残念だけど、二越くんだし安心だね。」


「なんで僕?」


「だって、帰りは二越くんが守ってくれるんでしょ?」


うっ。これもキャパオーバーだ。美少女って恐ろしいな。


「こら、綾人クンが困ってるでしょが。」


「あれ、西宮さんもさっき同じことしてたからおあいこじゃないの?」


「なに、やっちゃうの?」


「受けて立つけど?」


ゴゴゴゴゴゴゴ…なんかものすごいオーラを感じる。危険だ。僕は静かにトイレに逃げるか。音を立てずに席から離れ、すぐに扉に手をかけ……ガシッ。


「あれ?どこへ行くのかな?」


西宮さんに肩を掴まれていた。


「二越くん逃げるのは良くないと思うよ?」


「いや……二人が険悪そうだったから…」


「「君のせいでしょうが!!」」


なんか怒られた。てか僕のせいなのこれ!?


その後二人はそれぞれの席に戻っていった。結局なんの戦いだったんだ…?


—————————————————————


昼になって購買へ急いでいると、女子の群れができていた。彼女達は何かを囲んでいるようで…。あ、なんとなく見当ついた。


「ま、まぁまぁ君たち。とりあえず僕は購買に行かなければならないから、道を開けてくれな…「「「お供します!!!」」」わ、わかった。じゃあ行こうか。」


言葉が遮られた。ちょっと困りながらも従者三人を連れていったのは紛れもなく、倉持玲央だった。


購買についた僕は、真っ先にメロンパンを取った。この購買のメロンパンはその辺のコンビニで売ってるような物とは格が違う。パン屋さんで食べるような味。どういうことかというと、めちゃ美味しい。


「あ、君はいつぞやの図書委員君じゃないか。」


振り返ると倉持玲央がいた。


「あ、玲央。さっきの子達は大丈夫なのか?」


「彼女達なら帰らせたよ。それより屋上で一緒に昼食をとらないかい?」


「ちょうど買ったとこだし、いいよ。」


「ありがとう。では行こうか。」




屋上への扉を開くと、多分カップルと思われる男女が何組かいた。くそ。


「ははは。綾人、そんなに難しい顔をしなくてもいいじゃないか。」


「僕今そんなに顔に出てたか?」


メロンパンを食べながら、彼のファンクラブの話や互いのクラスの様子について語り合った。


「今日は本当にありがとう、綾人。またご一緒させてもらえると嬉しい。」


「うん。また機会があったら。」


こうして今日の昼は終わった。


—————————————————————


「ただいま〜」


「あ、お兄ちゃん!おかえり〜」


家に帰るといつものように妹が出迎えてくれた。だが…


「こら、真希。そんな格好で現れるんじゃない。」


額に軽くデコピンをした。


「いっち〜。なにすんのお兄ちゃん。もしかして、妹に欲情したの?」


「それは断じてない。」


そんなこと、兄としてあったらおしまいだ。真希は今キャミソールにストライプのパンツしか履いてない。これはいかん。ほんとに。


「それはそれでショック〜」


「はいはい。さっさと服着てきなさい。」


真希はテトテトと自分の部屋へ向かった。


「今日はほんとに大変だったな〜ちょっと寝るか。」


僕はソファに横になって仮眠をとった。三十分の仮眠のつもりだったけど僕が起きたのは三時間後だった。起きてから明日の宿題が残っていたことに気づいた。最悪。


—————————————————————


真希「今日はお兄ちゃんを誘惑してみた!」


可恋「ちょ!?え!?なにしてんの!?」


真希「顔真っ赤にしてたなー」


可恋「真希ちゃん何したの!?一線超えてないよね!?」


真希「一線?なんのことやらー」


可恋「ぐぬぬ…真希ちゃんおそるべし。」


意外にも攻めが早かったのは妹だったらしい。

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