第12話 嵐を呼ぶ合宿準備
美奈ちゃんのカミングアウトから数日、特に変わった様子は無かった点…と言いたいところだが、明らかにおかしい。廉也の前になるときょどるのだ。
「なぁ美奈、もうすぐレクリエーション合宿だろ?班は美奈、俺、綾人、市川さん、西宮さんでいいよな?」
レクリエーション合宿。高校に入って間もない新入生達が、クラスメイトとより仲良くなりやすいようにと、先代の校長が考えたそう。一泊二日でいろんな体験ができるのだ。
「ふぇ!?いいと思うよ!」
「美奈ちゃん、さっきから廉也の前できょどってるけど、大丈夫?」
僕は美奈ちゃんに耳打ちした。
「いざ意識するとかえって恥ずかしくって…」
いや、乙女か。乙女だけども。美奈ちゃんって普段がしっかりしてるからギャップがあるな。
「美奈ちゃんは可愛いなぁ〜うりうり〜」
「ちょ、可恋ちゃん、やめて〜」
実は、市川さんにしつこく聞かれたので、美奈ちゃんに許可を取ったら、「可恋ちゃんは信頼しているから大丈夫」とのことだったので、僕の方から説明させてもらった。市川さんも、「全力で応援する!」といってくれた。美奈ちゃんにとっては心強い味方が増えてよかった。
「美奈ちゃん、次の合宿、決め手じゃない?」
「確かに、二越くんの言う通りだよ。あそこで思いっきり伝えたら?私たちが雰囲気作ってあげるから。」
「う、うん!不安だけど…伝えてみる。でも、もしもダメだったらどうしよう…」
「そんなの、諦めずにガンガン行っちゃえばいいんだよ!」
「可恋ちゃん、私にはそんな勇気は…」
「美奈ちゃんの廉也くんに対する好きはそんなものなの?」
「そんなこと、ないっ!!」
美奈ちゃんから思ったより大きい声が出た。その声に前の方を歩いていた廉也が反応する。
「うわっ!びっくりした〜三人とも内緒話してないで行くぞ〜てか置いてくぞ〜」
「ねぇねぇ、二越くん。美奈ちゃん、意外とガッツあるね。」
「市川さんは監督か何かなのかな?」
「まぁね〜監督兼選手ってとこかな」
「どういうこと?」
「まだ知らなくて良し。さぁ、進め進め〜」
教室に着くと、みんな遠足の話題で持ちきりだった。
「おはよう西宮さん。」
「ん、おはよ。綾人クン。もうすぐ遠足だね〜」
「そうだね。そういえば、前ファミレスに行ったメンバーで班を組もうって話になったんだけど、いいかな?」
「え、いいの?ウチ部外者じゃない?」
「何言ってるの?僕たちもう友達だし、なんか西宮さんはこう…既視感?がすごい。」
「既視感?」
「なんか僕たちにすぐに馴染んでて、まるで前からいたような感じ。多分気が合うんだろうね。」
「そ、そっかぁ…でも綾人クンと同じ班ならいいやー」
「ほんと!?ありがとう!じゃあ今日のLHRな時によろしくね。」
「ん、りょー」
そんなこんなで、僕たちの遠足の班は決まった。
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その日の放課後。
今日は西宮さんと僕は図書委員の当番の日なのでみんなには先に帰ってもらった。この時期の図書室は全然人がいない。静かな空間に二人、不思議と気まずさはなかった。当番の仕事も終わり、下駄箱に向かっていた時、西宮さんが話しかけてきた。
「ねぇ、綾人クン。」
「ん、どうかした?」
「今週末さ、買い物行かない?」
「買い物?」
「そうそう、合宿って色々必要じゃん?だから一緒にどうかなって。二人で。」
ふむふむ。一緒に買い物か…んんんん????それってデートでは!?買い物デートじゃないですか西宮さん!?
「でもそれって…デ、デ、デート…」
「デートでいいじゃん!とりあえずいこ〜ね?美少女とデートできるいいチャンスだから!」
自分で言っちゃうのねそれ。まぁほんとに美少女なんですけれども。
「わ、わかったよ。詳細は帰ってから決めようか。」
「おっけ!メッセ待ってるね〜」
西宮さんはそう言うと走って帰っていった。全く元気の有り余る人だ。
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「ただいま〜」
「あ、おかえりお兄ちゃん。」
真希はキッチンで料理をしていた。急いで荷物を片付けて、手伝いに回る。
「真希、頼みがある。」
「な〜に〜?この可愛い妹様が聞いてやろう。」
随分とお偉くなったもんだ。
「妹様、どうか私にデートコーデというものを教えてくださらないでしょうか?」
「デ、デ、デ、デート!?あのヘタレで超鈍感お兄ちゃんが!?ありえないよ〜」
「デートって言ってもただ合宿の買い出しに行くだけ。」
「何処の馬の骨よそいつ!」
「とりあえず服を選んでくれ。」
「ま、まぁいいよ。また今度その人紹介してね。」
「同じ班になっただけだが…機会があれば。」
どうせ興味を持ってるのは今日明日くらいだろう。明後日には忘れている。
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可恋「真希ちゃん、今週末買い物ついでに遊びにいこー」
真希「やった!全然暇だからおっけー」
可恋「ありがと〜予定は私に任しといて〜」
真希「了解!可恋ちゃんと遊ぶの久しぶりだから楽しみ〜」
可恋「私もだよ〜それじゃまた連絡するね」
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美奈「廉ちゃん、週末に合宿のために買い物行かない?」
廉也「おう!全然いいぞ!」
美奈「ほんと!?じゃあ集合時間は———で、場所は———でいいかな?」
廉也「おけおけ。綾人たちは?」
美奈「誘ったんだけど、全員予定があるって。」
廉也「そっかぁ。そりゃしゃーない。」
変化の嵐は、すぐそこに来ていた。
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