第20話 共同戦線

綾人と可恋のデート中、彼らを監視する二人組がいた…


「くっ…お兄ちゃんの笑顔を引き出すなんて…やるね、可恋ちゃん。」


「悔しいけどそれは認めるわ。ま、最後に勝つのはウチだけど。」


「いや、お兄ちゃんは渡さないよ?」


「綾人クンは私の男になるの。」


「え?聞こえなーい。」


「それが年上に対する発言かな?」


「「ぐぬぬぬぬぬ…」」


二人が言い争っていると…


「あ!お兄ちゃん達見失った!早く行くよ、茜ちゃん。」


「もう、真希ちゃんが喧嘩売るからでしょ。」


二人は見失った綾人達を追いかけて行った。二人が尾行するきっかけとなったのは、デート前日のこと。


「もしもし?茜ちゃん?」


『ん、どうしたの真希ちゃん?急に電話なんて。』


「実はね、お兄ちゃんが可恋ちゃんとデートに行くんだって。」


『はぁぁぁぁあ!?!?』


「そりゃ、驚くよね。私もびっくりしたもん。」


『可恋がここまでだったとは…不覚だわ。』


「そこで!私たち、共同戦線を張るっていうのはどう?」


『共同戦線?』


「そう!あの二人を明日尾行するの!可恋ちゃんが勝手に抜け駆けしないようにね。」


『抜け駆けって…手を繋ぐとか?』


「茜ちゃん初心うぶすぎるよ…抜け駆けって言うのはつまり…チューすることとか!」


『ちゅ、ちゅー!それって結婚する人にする奴じゃない!そんなことさせない!』


「はぁ……(茜ちゃんって見た目以上にピュアなんだね)」


『よし!明日は尾行するよ!』


「茜ちゃんならそう言うと思ってた〜じゃあ明日は駅前に九時に集合して……」


こうして、真希と茜による尾行(ストーカー)が決まったのだった。


時は綾人と可恋の集合直前に戻る。真希と茜は早速綾人を見つけ、監視していた。


「あ!綾人クンいた!」


「本当!?どこどこ?」


「ほら、あそこの木の前にいるスマホいじってる子。」


「ほんとだ!待ち合わせまで後十分。可恋ちゃんの場合そろそろくると思うけど…」


「綾人クン顔あげた!視線の先は……あ。」


「今日の強敵のお出ましだね。」


「可恋、可愛いなぁ…」


「あれじゃあ、惚れちゃうのも仕方ないのかなぁ…いや、弱いになっちゃダメ。振り向かせるのよ。」


「真希ちゃんも本気なんだね。とってもいいライバルだ!」


「お互い頑張ろ!あ、お兄ちゃん達歩き出した。最初はこの映画を見に行くって言ってたから…この上映時間のやつだ!茜ちゃん、行くよ!」


「う、うん。デートの日程知ってたの?」


「うん!可恋ちゃんからさりげなく聞いた〜」


「年下とはいえ恐ろしい子ね…」


真希と茜は手を繋いで映画館へ向かって行った。


「真希ちゃん、真ん中の列空いてたからそこにしたよ〜」


「茜ちゃんナイス!お兄ちゃんたちがどこに座るかまでは分かんないけど、同じシアターであることは間違いないね!」


「バレないといいけど…」


今日の二人はバレないために、普段と違う髪型にマスク、真希はサングラス、茜は伊達メガネと言うフル装備。一見不審者か?と思われるかもしれないが、広い目で見れば姉妹だ。とーっても広い目で見れば。


さて、シアターについた真希たち。


「「…………」」


「(ちょっと茜ちゃん!?どういう状況これ?)」


「(あはは…まさか二人が隣とは… )」


「(とりあえず、ここはバレないように耐えて!)」


それから九十分間、彼女らは綾人たちにバレないように声を抑え続けた。おかげでジュースを飲む暇もないほどの緊張だった。


「本当に一時はどうなることかと思ったよぉ。」


「お兄ちゃん達が映画に釘付けでよかったね。」


「そうだねぇ、とりあえず尾行を続けよう。」


「茜ちゃん、あれ見て。お兄ちゃんたちあそこのパスタ屋さんに入っていくよ。」


「間違いなく今日の可恋ならあのイベントを起こすに違いない…」


「茜ちゃん聞いてる?早く行くよ。」


「あぁごめんごめん。今行く。」


綾人たちを追いかけてパスタ屋に入った真希達。やはり起こってしまったイベントにそわそわしていた。


「可恋ちゃんが『あーん』を…」


「ぐぎぎぎぎ…」


「茜ちゃん…これ以上見ても苦しくなるだけだし、私たち帰る?」


「いや、せめてあの子が綾人クンに何していたかだけは見ておきたい。」


「そっか。それなら私も付き合う。」


それから真希たちは尾行しながら普通にショッピングを楽しんでいた。同時並行できているはずだったのだが…


「あ!お兄ちゃんたちいなくなっちゃった!」


「真希ちゃんがショッピングに夢中だったからでしょ〜?ちゃっかり私が褒めた服買ってるし。」


「それは茜ちゃんも同じでしょ?人のこと言えませーん。」


「まあ日も暮れてきたし、そろそろ帰ろっか。」


「そうだね。行こ、茜ちゃん。」


「今度は普通にお買い物いこーね!」


「うん!」


最終的には当初の目的をすっぽかしていた2人であった。帰る時も彼女たちはしっかり手を繋いでいた。


—————————————————————


茜の家にて。


ピコン♪と音がした。ん、メッセージか。真希ちゃんかなぁ。


画面には、「『可恋』より新着メッセージ:二件」とあった。はぁ…今日の自慢だろうか。


いざ内容を見ると…


可恋「今日は楽しかったね、映画♪」


可恋「彼にあーんしてるとこ見られちゃったなぁ、恥ずかし///」


「なっ!あの女私たちが尾行してること気づいていやがった!」


ピコン♪ 今度はなんだ?


「ぐっ!……」  送られてきたのはプリクラの画像だった。


「可恋…必ず超えてみせる。それまで怯えて待ってなさい…」


—————————————————————


一方二越家では…


「うんぎゃあああああああああああああああああ!」


真希は突然リビングで発狂し、二階にある自室へと駆け上っていった。


「おい!真希、どうした!」


「お兄ちゃんのせいだからね!」    バタン!


「俺、何かしたか…?」


真希もまた、可恋の手のひらで踊らされていたのだった。


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フツメンの僕にもラブコメを! 空舞 隼 @hayabusa_soramai

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