第20話 最強吸血鬼と愉快な仲間たちによる日本征服会議④



「あれじゃないかい。ほら、吸血鬼の心臓に杭を打つと死ぬってやつ」


「そういえば、吸血鬼にはそんな伝承もあったかも……ルナさん、どう?」


「ん? どうってなんじゃ?」


「今、杭を打たれたらどうなるのかなって」


「はぁ!? どうもこうもあるかい! 試しとるわけないじゃろ!!」


急に物理的検証を提案されて驚くルナ。



「あ、そうなんだ。堵々子さんは首が取れても大丈夫みたいだから、ルナさんも不死身の力は残ってるのかなって思ったんだけど」


「そういえば……そうなのか……?」


考え込むルナ。


「ルナさんは、そういうの自分ではわからないの? 魔力を感じとる……みたいな」


「我そういう細かいことやらんタイプなんじゃよなぁ。暴君タイプ的な?」


「つまり魔力の気配とかはわからないわけだね」


「わからないんじゃない!! やらないんじゃ!! めちゃくちゃ重要じゃぞここ!!」


「う、うん……でも、それだとルナさんに不死身の力が残ってるかとかわからないね」


「ふん、我は腐っても最強吸血鬼。不死身の肉体くらいの特性なら残っとるわい! 下僕の堵々子に不死が宿っとるのに主が不死じゃないとかあり得んじゃろ」


「じゃあ、試してみようじゃないか!」


ルナの言葉に、堵々子がごそごそと押し入れを探索し始める。


「え……いや、別に証明する必要はなくないか? こういうのは気持ちの問題じゃし……」


「いやぁ、それじゃあつまんないだろ? 盛り上がらないじゃないか」


「つまるとかつまらんとかで、決めることではないじゃろ!?」


ツッコむルナ。


「ああ、あったあった!」


ルナのツッコミをよそに、堵々子が出してきたのはキャンプで使うテントだった。


「これ……テントですか?」


「そうそう。今流行ってるって聞いてさ。とりあえず買っといたんだよ」


「堵々子さんって結構アクティブなんですね」


「降って湧いた続きの人生なんだから、遊ばなきゃねぇ。最近はパチンコにハマってるよ! あれ、面白いねぇ」


(それは……大丈夫なのか?)と能丸は思ったが心に秘めた。



「そんでこのキャンプにさ。ほら杭がセットになってるんだよ」


堵々子は、そう言ってテントを立てる用のペグと金槌を取り出す。



「おい、待て待て待て! それ我にぶっ刺すつもりか!?」


「え!? ちょ、本気なんですか、堵々子さん!?」


「大丈夫だって。アタシが死なないんだから」


「いや、それで試して、我が吸血鬼だったら死ぬじゃろ!? おぬしとは状況が違うじゃん!?」


後ずさるルナ。


「いや、さっき能丸ちゃんもルナちゃんはほとんど人間じゃん? みたいなこと言ってただろ?」


そう言って笑顔でにじり寄る堵々子。


「や、やめろ堵々子……! 落ち着け!」


「大丈夫だって。吸血鬼は杭を打たれると死ぬってことは、人間なら杭を打たれても死なないってことだろ?」


ものすごい帰納法を披露する堵々子。


「何言ってんですか、堵々子さん!?」


ツッコむ能丸。しかし


「……ん? そう、いえば……そうか?」


「ルナさん!?」


ルナは普通に超理論の帰納法を信じてしまった。



「そうそう、だから大丈夫だってやってみようじゃないか」


「ふむ……よし、やってみろ!」


大の字に寝転がるルナ。



「ええええええええええええええ!?」


能丸はツッコミが追い付かずただデカい声がでる。



「んじゃいくよ!」


杭を構えてルナの心臓に狙いをつける堵々子。


「見ておけよ能丸! 我の偉大さを!!」


高らかに笑うルナ。



「いやいやいやいやいや!! 待って待って! 人間でも心臓に杭を打ったら死にますから!!」


必死に止めようとする能丸だったが、時すでに遅し。


「よいしょ~!」


堵々子の手は振り下ろされてしまう。



「きゃあああああああああああ!!!」



串刺しロリが出来上がってコメディ小説でなく、スプラッタ小説になってしまうかと思われたその時。



ガキン! と鈍い音が響き杭が吹き飛ばされる。



「え!?」


「あれ?」


「おおん!? な、なんじゃ!?」


ルナと能丸と堵々子は、突然のことに驚く



「何アホな事をしているんですか、ルナ様」


ルナにとって聞き馴染みのある声が聴こえた。


「そ、その声は……」


ルナはガバっと起き上がる。



「マリラ!!!!」

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