第19話 最強吸血鬼と愉快な仲間たちによる日本征服会議③
「ほい、お茶」
堵々子から出されたお茶を一気に飲み干す能丸。
「ぷはっ……! はぁ~……あ、ありがとうございます……」
「あっはっは、驚かせて悪かったねぇ。能丸ちゃんのリアクションナイスだったよ」
「あれでびっくりしない人いないですよ……」
そう話す能丸に、ルナはフフンと腕組みドヤ顔を見せつける。
「すごいじゃろがい! これが我の真の実力なんじゃよなぁ~。マジで崇め奉るんじゃぞマジで」
(そういう雑な承認欲求の求め方のせいで、あんまり敬われないんじゃ……?)と能丸は内心で思ったが、本人には言わなかった。
優しさである。
「でも、堵々子さんを復活させられるなら、どんどん仲間を増やして世界征服もできそうだけど」
「前も言ったろう、我はもう血は吸えんのじゃ! 想像しただけでゲーするわい……」
身震いするルナ。
「そういえば言ってたね……」
「それに日本で食う人間の飯はうまいしのう~。あの味を知ったら血とか飲んでられんわい」
「それって……味覚が変わってきてるんじゃない?」
能丸が質問する。
「それがなんじゃ? いかんのか?」
「ダメってわけじゃないけど……例えば日光は平気なの?」
「そうそう! 我、こっち来てから太陽の光を克服してんじゃ! やばくね? 無敵では?」
鼻息を荒くするルナに、さらに堵々子が補足を付け加える。
「ああ、夜勤で残業があって日が昇っちゃったアレね。ションベン漏らして帰ってきたのはウケたね」
「ウケんな!! そしていらんこと言うな、堵々子!!」
怒り心頭でとびかかるルナを片手で制す堵々子。
それを見ながら能丸が言う。
「まあ、今のは聞かなかったことにするから……。それより、私が言いたいのはルナさんの味覚が変化して日の光も大丈夫なのって、もう吸血鬼じゃなくて人間になってきてるんじゃないかってこと」
「の、能丸……! 我が思ってても言わんかったことをあっさりと……!」
わなわなと震えるルナ。
「あ、ごめん……やっぱり気にしてたよね」
「ごめんで済むかい! 人間で例えると『猫ちゃんみたい~』とか『ワンちゃんみたい~』って言われたようなもんじゃぞ! 畜生扱いじゃ! 許されんぞ!」
能丸は、吸血鬼からしたら人間は食べ物なんだから、例えるなら牛か豚ではないかと思ったがまた騒がれたら嫌なので心に秘めた。
「でもさ。アタシを蘇らせる力はあったわけだし、まだ吸血鬼っぽい力も実は残ってるんじゃないかい?」
話を流し聞きしていた堵々子が言う。
「ふむ……そう言われたら詳しく調べ撮らんかったな」
「じゃあ、腕力とかどれくらいあるの?」
「ポリ公に取り押さえられると身動きできんくらいじゃな」
「なんでそんなピンポイントだけど、わかりにくい例が出てくるの……ルナさん、本当に悪いことしてないよね?」
「あやつが最初に因縁つけてきたんじゃ! 我なんもしとらんし!」
「完全に不良に言い分だけど……まあいいか。じゃあ、十字架が苦手とかは?」
「ないのう。我、神をも恐れぬ化け物じゃし?」
「警察は怖いのに変なところ強気だよね……じゃあ、あとは……」
少し考える能丸。
そこで堵々子がふと思い出したように言う。
「あれじゃないかい。ほら、吸血鬼の心臓に杭を打つと死ぬってやつ」
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