第22話  最強吸血鬼と愉快な仲間たちによる日本征服会議⑥

「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!??!!??」


ルナの絶叫が、家に響いた。堵々子が耳をふさぐ。

「ルナちゃん、近所迷惑だからやめな?」


「やめられるかい!! やめられない止まらないじゃろこんなん! なんでじゃ!? なんで帰れんのじゃ!?」取り乱すルナ。

「この世界には魔力がほぼないからです」とマリラが端的に話す。しかし

「はぁ!? じゃあなんでコンロから火が出て、この部屋に電気がずっと点いとるんじゃ。我を謀ろうとしても、そうはいかんぞ!」そう言ってまったく信用していない。


そんなルナに能丸がツッコむ。

「え……ルナさん、もしかしてコンロも電灯も魔法で動いてると思ってたの……?」

「……まさか、違うのか?」

「違うよ……コンロはガスを燃やして火をつけてるし、電気も火力発電ならガスを燃やして作ってるんじゃないかな」

「つまり、そのガスを魔法で出してるんじゃろ? こう大気とかに充満しとるマナ的な感じじゃろ?」

「違う違う! そもそも魔法もマナもないから!」

「なん、じゃと……」

_| ̄|○と膝をつくルナ。


そんなルナにマリラが声をかける。

「むしろいままで気づかなかったんですか?」

「しゃーないじゃろ! 生きるのに精いっぱいだったんじゃぞ、こっちは!!」

「とにかく、この世界にはほとんど魔力やマナと言ったものが存在しませんので、帰還の魔法陣を使えるほど貯めるには、かなり時間が必要ですね」

「そ、そんなバカな……」呆然とするルナ。

そんな彼女を能丸が励ます。

「ま、まあ、元気出してルナさん」

「…………むり」

本当にしょげているルナ。


それを見てマリラは真顔ではあるが、若干頬を赤らめている。

(あの最強種が、家に帰れずしょげている……)

ゾクゾクと背筋に快感が走る。


(かわいい……)


マリラは主人に対して歪んだ愛情を持っていた。

(無理して後を追っただけの価値がありました。しかし……)

しょんぼりしているままのルナをずっと見続けるのも飽きがくるのは明白だ。

(ルナ様にはまたアホなことをしていただかなければ)

少しほほ笑んだマリラは、ルナに話かける。


「ルナ様」

「……なんじゃ」

「魔法陣を使用するには時間がかかりますが、ルナ様の当初の目的をお忘れですか?」

「……世界征服じゃろ?」

「いえ、ルナ様は元の世界にお食事がなくなったからこの世界に渡ったはずです」

「……………………そう、いえば?」

ルナはいままで忘れていた本当の目的を思い出した。


「征服は物のついで。ルナ様は今、過去にないほどお食事を楽しまれているのでしょう?」

「確かに……こっちの飯はうまい……」

ルナが少し顔を上げる。

それを見逃さず能丸も励ます。

「そうだよ、帰れるまでこの世界で美味しいものたくさん食べればいいよ! それにルナさん、アニメ好きなら日本はすごくいいところだし!」

「確かに……!」

さらに顔を上げるルナ。


「ルナちゃん帰れないんなら、アタシの家にもまだ住んでていいよ」

堵々子が軽いノリで言ってくれる。


「おお、堵々子……!」

ルナは半べそをかきながら、堵々子を見つめる。


さらにルナの希望をつなぐ言葉をマリラが続ける。

「それに、この世界にも魔力がまったく存在しないわけではありません」

「な、なんじゃと!?!?!?」

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