第21話 最強吸血鬼と愉快な仲間たちによる日本征服会議⑤



「マリラ!!!!」


「ルナ様、先ほどから拝見しておりましたが、よくいままで生きていましたね」


「すごかろうが!」


フフンと鼻を鳴らすをルナ。


「褒めてないです」と真顔で訂正をするマリラ。



そんな二人を、ぽかんと見ている能丸。


「えっと……マリラさんって、ルナさんが迎えを待ってた人、ですか……?」


「そうじゃ! 我の右腕『マリラ・コンカルッサ』じゃ!」


「初めまして。以後お見知りおきを」


ルナから紹介されて、丁寧なカーテシーを披露するマリラ。



「おお~、こんなまともそうな子がルナちゃんの右腕してるんだねぇ」と、堵々子は興味深そうに話す。


「いえ、私がまともなどとんでもございません。勝手にお家に上がり込む非常識な行いを謝罪させてください」


「本当にまともだ……!」と驚く堵々子。


能丸もマリラの礼儀正しさに自然と拍手していた。



「それでルナ様、知能指数と肉体年齢がつり合ったことは、喜ばしいのですが、なぜそんなお姿に?」


「ふむ……話せば長くなるのじゃが……というか、ディスってないか?」


「気のせいでしょう」


「そうか……? まあ、その話は置いておくとしよう。とにかく我がこんな姿になってしまったのは、これまた深く深遠で奥深い訳があったのじゃ……」


「ルナさん、後半ほとんど同じ意味のことしか言ってない気が……」と能丸がツッコむ。


「はぁ? 重要なことじゃから強調しただけじゃし? これにツッコむのはヤボなんじゃが? 普通にワザとなんじゃが?」


苦しい言い訳をするルナ。


そんなルナに堵々子が追い打ちをかける。


「というかそんな深い理由あったっけ?」


「あるもん! これから5時間かけて語ってやるわい!! 我の波乱万丈な異世界生活を黙って聞いておれ!」


オホンと咳払いをしたルナは、マリラにこれまでの経緯を話す。


「では、マリラよく聞いておれよ!」


「なるほど。やはりチラシの裏に書いた魔法陣ではダメでしたか。そして吸血能力だけは失っていなかったが、堵々子さんを復活させる際に血液恐怖症になり、能丸さんはルナ様のわがままに付き合ってくれたと」



「なんですべてを把握しとんじゃい!!!!!!!」



せっかく一人で盛り上がっていたところに水を差されm、大声で嘆き悲しむルナ。



「ルナ様の一言から100を把握するのが、従者の務めですので」


「我の部下優秀すぎじゃろ! おかしいってちょっと!! 語らせて! この辛さに共感して!!」と、泣きを入れるルナ。



「はぁ、ではどうぞ」


「お、いいのか! いやぁ、これがホントに大変じゃったんじゃよ~。夜の女王にして世界の支配者であるこの我が、築70年のボロ屋に居候しながら、夜勤の派遣バイトで口に糊する日々だったんじゃぞ!」


「大変でしたね」


「じゃよな!? じゃよな!?」


満面の笑みを浮かべてはしゃぐルナ。


久しぶりにあった仲間に愚痴を言えて満足したらしい。


「ふぅ……では、マリラ帰るぞ」



「え!? ルナさん帰っちゃうの?」驚く能丸。


「当たり前じゃ! こんな東京砂漠で何が嬉しくて底辺生活せにゃならんのじゃ!」


「そうかい。まあ、また遊びに来なよ」堵々子は、そう言ってほほ笑む。


「ふん、次に来るときはガチじゃからな! 楽しみにしておけよ……! ガチのマジの我の真の力で3分で日本征服してやるわい! その時、堵々子と能丸は生かしておいてやる。正社員どもは全員苦役に処す!! わっはっはっは!」


完全に勝った気になっているルナは、高らかに笑う。


「さあ、マリラよ! 魔界へと続く魔法陣を開け!!」


そしてマントはないがあるフリをして、バサッと手を広げる。



「無理です」



「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!??!?!?!」

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