第12話「年金って将来本当に貰えるのかわかんなくて結構ビビるよねの巻」



「おまっ!? な●うの主人公どもが『絶対帰りたくない、オレは異世界で生きていく! 転生サイコー! ヒャッホー!』と速攻で移住を誓うような、この地獄(日本)で、チートなしで生き抜くというておるのじゃぞ!? 笑いごとじゃないわい!」



ルナは現代日本で生きる辛さを熱く語る。



「ふーん、まあ頑張りな」


「冷めすぎじゃろ! おぬしだって大変じゃなぁとか思わんのか?」


「アタシは年金あるから、生きてくのにそんな苦労しないんだよ」


「なんじゃそれ?」


頭に『?』を浮かべるルナ。


「ルナちゃんって変なことだけ知ってて、常識とかあんまり知らないよね」


「は? 常識などという他人の作ったルールは、全て拳でぶち壊してきたんだから当然じゃが?」


「今は壊せないんだから、知っといた方がいいと思うけどねぇ」


堵々子はさらりと正論を言った。



「うっ……それで、ネンキンとはなんじゃ? うまいのか?」


「年金は……えーっと、年取ると貰える金のことだよ」


「え! 年取ると金もらえるのか!? 流れるアンパン監視してたらお金もらえたり、わけわからん風習多すぎじゃろ……」


日本の文化にびっくりしているルナ、さらに詳しく話を聞いていく。


「それじゃあ堵々子、ネンキン貰えるおぬしはいくつなんじゃ?」


「たしか96歳……いや、7? 100歳にはなってなかったと思うけどねぇ」


「ええ!? 100歳にもなってないガキンチョでも貰えるなら、我は3兆円くらい貰えるじゃろ!!」


「年食ってるほど貰えるわけじゃないけどね」


「それでも、3000万は貰えるじゃろ!? やべぇじゃろ、ジャパン!」


ルナは興奮している。


「貰えて30万くらいだよ。というか、そもそもルナちゃん日本の人じゃないから――」


「うおおおおお! 待っておれよ、ネンキン!! 必ず手に入れてやろうぞ!!」


堵々子がツッコんでいる間に、ルナは奇声を発しながらダッシュで外に行ってしまった。


「あーあ……行っちゃったよ。そもそも場所知らないだろうに……まあいっか! アタシは池袋でも行ってみようかねぇ。せっかく若返ったんだ。第二の人生楽しまないとね!」


そう行って、堵々子の方も特にルナを気に掛けることなく出掛けるのだった。




「はぁはぁはぁ……! な、なんでじゃ……!!」


息を切らせながらルナが走っている。


路地に入り、なんとか行方をくらませようとする。


「こらぁ! 待ちなさい!」


「待つかバカめがー!」


捨て台詞を吐くが、国家公務員の脚力は伊達ではない。


魔力を失って弱体化したルナはどんどん距離を詰められていく。


「はぁはぁ……! くっそ……! このままでは追い付かれる……!」


ギリリと奥歯を噛むルナ。


「なんで……なんで毎回、ポリ公は我のこと追いかけまわすんじゃー!!」

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