第11話「詰んだ吸血鬼、異世界・日本でママが迎えにくるまで生きることを決意する。」

「そうじゃ!! 我は世界征服に来たんじゃよ!! この世界に!!」

めちゃくちゃ力説するルナ。

「我は山パンで精神と時の部屋を体験するわけでも、ぼろい平屋でアンデッドと談笑するために来たわけでもないわい!!!」

ちゃぶ台をバンバン叩くルナ。

「ああ~ん? そのボロい平屋がないとあんた、住所不定国籍なしだろ? 今から出てってもらってもいいんだけどねぇ~」

「!? お、おぬし! 我が復活させてやった下僕の癖に、脅す気か!?」

堵々子をアンデッドとして復活させたが、魔力が足りないため、支配がまったくできていないのである。

「あ~、路地裏で段ボールしいて寝てるルナちゃんが、警察に見つかって泣いてる姿が目に浮かぶねぇ」

そうしみじみと語る堵々子。

「ま、待て! わかった! 訂正じゃ訂正! この家は味のある平屋じゃな! 大掃除してシュッシュを50本撒いたからもう臭くないし、最高じゃよな!」

「そうそう、住めば都さ。あとファブリーズね」

「ファブ●ーズでもリ●ッシュでも、そんなことはどうでもええんじゃ! それより世界を征服せねば! 我は偉大なる夜の女王じゃぞ!」

立ち上がりグッとこぶしを握るルナ。

しかし、堵々子はふーんっといった顔。

「具体的に何するんだい?」

「そりゃあ~……近づく敵を片っ端から吹き飛ばしてると、なんかうまいこといくんじゃ!」

「雑ー」

ルナが元の世界で行っていた征服は、圧倒的な力を見せつけたあとは、優秀な部下たちによって円滑に進められていたため、一度世界を制服した経験があるくせに、知識が非常にふんわりしている。

「でもルナちゃん、魔力なくてどうにもならないとか言ってたのに、征服とかできるのかい?」

「うっ……それは血さえ吸えば……!」

「でも血液恐怖症だろ」

ハッとしてしばらく目をつむるルナ。ゆっくり目を開け堵々子に問いかける。

「…………もしかして、我って詰んどるか?」

「聞いた感じそうだねぇ」

_| ̄|○ と膝をつくルナ。

そのままサラサラと灰になっていく。

「ちょいと、掃除大変だから外でやっておくれよ」

「堵々子! おぬし、人の心とかないんか!?」

キレながら復活するルナ。

「この程度で灰に還ってたまるかい!! 詰んどるなら詰んどるでやり方はある!」

力強く宣言するルナ。

「そうなのかい?」

「おうよ!!」

再びグッと拳を握りしめるルナ。


「こっちの世界で、どうにかこうにか生き延びて、マリラに迎えに来てもらうんじゃ!!!」


ママに迎えに来てもらうという幼稚園レベルの他力本願を、自信をもって宣言するルナ。


「あっはっは! 夜の女王なのに!」

堵々子にもバカウケである。


「おまっ!? な●うの主人公どもが『絶対帰りたくない、オレは異世界で生きていく! 転生サイコー! ヒャッホー!』と速攻で移住を誓うような、この地獄(日本)で、チートなしで生き抜くというておるのじゃぞ!? 笑いごとじゃないわい!」

ルナは現代日本で生きる辛さを熱く語る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る