第15話 力は人間並みで血が飲めず、おいしくコンビニ飯食べるって、それもう吸血鬼じゃなくてただの人間では?

「なんでじゃ!!!!」

ルナはコンビニの駐車場で、怒りをあらわにした。


「ネンキン貰えるか市役所行ってみんと、わからんじゃろうがい!」

「う~ん……さっきも言ったけど、ルナさんって3000歳にしては若く見えるから難しいと思うんだ」

能丸がなだめるように言う。

市役所に連れて行っても職員の迷惑になるだけというのは、目に見えていたので、能丸がバイト先のコンビニまで連れてきていたのだ。


「若すぎって、人は見かけで判断しちゃいかんじゃろ! 心を見ろ心を! 魂で語れ!」

「ルナさんって人じゃないんじゃなかった?」

能丸はルナが主張する魔族や吸血鬼を、ただの設定だと思っているが合わせて話す。


「ぐ、ぬぬぬ……! それ我が言おうとしてたネタなのに! 我の持ちネタなのに!」

「え、ごめん……」

「くそう、もうええわい! 一人でも市役所行ってやるわい!」

ガキのように拗ね始めたルナ。


「あ、待って。コンビニでホットドッグとか買ってきたんだけど食べない?」

ルナの機嫌を取るために、子守りの王道である『食べ物で釣る作戦』を事前に用意していた能丸。


「え……人間って犬も食うのか……? 我、部下にワーウルフとかおったし、ちょっと厳しいかなって……」

だが、能丸の予想に反してルナは引き気味。


「違うよ! ホットドッグっていうのはこれ」

能丸がホットドッグを袋から取り出す。

「おいおい、我を謀ろうとしてもアウトじゃぞ~? どうせ、その中に犬の肉が入っとるんじゃろ? 我はもう学んでおるのじゃ。アンパンは見た目にはただのパンじゃが、中にアンが入っとるし、ジャムパンにはジャムが入っとるし、メロンパンにはメロンが入っとるんじゃ」

ドヤ顔するルナ。しかし、


「メロンパンにはメロンは入ってないよ」


「ええ!? う、嘘じゃろ!? だっ……ええ!? じゃ、じゃあ我がメロン味じゃと思ってたのは……!?」


「香料とか……? わからないけど」

「な、なんっ……!? わ、我が人間の血しか飲んだことないからって、そんな……! 詐欺じゃん!!!! 人間ども悪(ワル)が過ぎるじゃろ! いたいけな吸血鬼だましに来とるじゃん!!」

「落ち着いて、ルナさん。メロンパンは形がメロンぽいから、メロンパンって名前なんだと思うよ」

「え……じゃあ、このホットドッグとかいうのも、人間には犬に見えとるのか……? 人間の視力低すぎでは……?」

引いているルナ。


「いや、ホットドッグはまた違うから!」

「はぁ~? もう意味不明じゃろ~、なんじゃよそれ。統一せんか統一。我とか魔界を統一しまくりだったんじゃが?」

隙がなくても、脈略なく自分の自慢話を入れ込むルナ。

「ホットドッグの語源はまた調べておくから! というか、もうルナさんは、ホットドッグ食べないんだね? 私が食べちゃおっかな」

「あ、待て待てい! 食べないとは言ってなかろうが!」

素早く止めに入るルナ。


実はルナは、日本に来てから食事にかなり関心を持っていた。

いままでは血しか口にしていなかったが、血液恐怖症で血が接種できなくなり、意を決して人間の食べ物を食べてみたら、普通に食べれてしかも結構おいしかったのだ。


そもそも日本に転移してきた理由も、征服ではなく魔界にルナの食糧(人間の血)がなくなったからであり、その食い意地は折り紙付きである。

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