第5話「幼女に迫るポリ公の魔の手! ルナは生き延びることができるのか!の巻」
「うぇ~ん! 我なんにもしてないのに、公僕がイジメる~! おかあさ~ん! ダディ~! びぇぇぇええ!!! 」
ワザとらしい泣きマネをし始めたルナ。その演技は大根と呼ぶにもおこがましいレベルの棒である。
そしてチラっと警官の方を見るルナ。
「泣きマネしてもダメだよ」
冷めた目で呆れている警官。
(な、何……!? 我の迫真の演技をまさか見破っているというのか! いや、そんなわけ……だって、元の世界では我が主人公のオリジナル演劇をやったら、部下たちみんな拍手しとったもん!)
というわけで、ルナは泣きマネを続行する。
「びぇぇえぇぇ……!」
「はぁ……もういいからさ。一旦署まで……」
「びええええ……えうげぇええええ!?!? おうぇ……! ゲホゲホガハッ!? 変に高い声出したせいで喉が……! ブヘボヘオウェ……ゴホゴホ!」
「うっわ、汚っ! ちょっ唾とか鼻水がめちゃくちゃ飛んd……あっ!」
ばっちくて警官が少し手を緩めた隙に逃げ出すルナ。
「ゴホゴホッ! は、はん! 我の演技にまんまと騙されおって! 今日はこのくらいで勘弁してやるわい! 覚えておれよ!」
明らかに演技以外の要素で手を緩めたのだが、ルナの節穴には、か弱い美少女に警官が絆されたように映っているのだ。
そして、ルナは夜の女王とは思えない雑魚の台詞を吐いてダッシュする。
「あ、待ちなさい!」
それを追う警官。
「な……! 相手が捨て台詞を吐いたら、ため息をついて『始末する価値もないな』とか言って追ってこないのがお約束じゃろうが! 守れそういうルールは!」
「何言ってるんだ、止まりなさい!」
警官との追いかけっこが始まるが、幼女化した上に魔力を失ったルナと、国家公務員の脚力の差は歴然である。
路地を使ってなんとか撒こうとするルナだが、警官の追跡は止まらない。
「っはぁはぁはぁ……!! く、くっそ……! このままでは捕まる……!」
そんな時、路地を曲がった先で住宅街に出る。平屋の古い家屋が道の両脇に立ち並んでいた。
「こらあ! 逃げるんじゃない!」
警官の迫る声。
「っ! ええい、邪魔するぞ!」
追いかけっこでは、勝てないと踏んだルナは、近くの住家に飛び込んだ。
幸いなことに玄関の引き戸には鍵がかかっておらず、入り込むことができた。
「ぜぇぜぇぜぇ……このままやり過ごし………………って、くっっっさぁあああぁ!?」
玄関にはなぜか異臭が漂っていた。
例えると、夏の車内に放置してしまった100g98円の豚バラ肉のような臭さである。
端的には腐臭である。
「な、なんじゃこの匂いは……! いや、でもそこはかとなく、どっかで嗅いだことあるような……」
鼻をつまみながらルナは、思い返す。
「あ、そうじゃ! これあっくんの家じゃ!」
ルナは魔族の部下の一人、アンデットのあっくんの家がこんな匂いに包まれていたのを思い出す。
あっくんの家はモルグを改装したアットホームなお家で、いつもカビと腐臭に包まれていた。
「ということは……異世界にも魔族がいるのか!」
態度はデカいが結構寂しんぼのルナは、パッと表情が明るくなる。
匿ってもらえると判断したルナは、勝手にお家にお邪魔していく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます