第440話 僕のレベルアップと僕のレベルアップの賞品

 代理とはいえ七大魔王のふたつ目を倒した僕ら、

 まとめてレベルアップ確認をしにきたラストに、

 勇者ポーターである僕のレベル確認をしている、まずは勇者から。


「レベル90の勇者魔法か何か憶えてたりしますか?!」

「はい、その名も『ラージサイズパーティー』本来八人までのパーティーが、

 勇者デレス様をパーティーリーダーにする事でなんと! 十人まで組むことができます!!」


 うん、アンジュちゃんから聞いて知ってた、

 確かに凄いけどヘレンさんの『持ってるサモンが憶えている魔法全部使える』の方がもっと凄い、

 なのに、アンジュちゃんはなぜこっちの方を教えてくれたのだろうか。


(僕の方が大事だから、大切だからとか言われたら、照れるな)


「いかがなさいますか、『ニィナスターライツ』のリーダーに登録し直しますか?」

「い、いや」「それは断る、リーダーは私だ」「ニィナさん……」

「わかりました、では今まで通りで!」


 冒険者ギルドへの登録リーダーと、

 ダンジョンや狩場へ行く時のパーティーリーダーは、

 確か別のはずだよね、だったら無理して交代する必要性は無い。


(あっ、でも妖精の指輪を使う時はパーティーメンバー多い方がいいのかな)


 狩場によるのかなそこは。


「凄いですね十九歳でレベル90の勇者! それ以上のレベルの勇者に会った事はありますか?」

「ええまあ、一応」


 コロメは三十八歳でレベル97だったっけか、

 まだその年齢の半分だし、また七大魔王を倒したら次はおそらくレベル95、

 なんだかコロメみたいに悪い事をし放題できそうだ、やらないけれども!


「ちなみに勇者レベル100で『勇者ハンドレッドクラブ』に入会できます!」

「なにそれ」

「レベル100の勇者が集まって、世界を救う情報交換をする集まりだそうですよー」


 そんなのあるんだ、

 レベル90になったら教える規約でもあるんだろうか、

 冒険者ギルドに。


「それってメリットありますか?」

「様々な超高レベル勇者の方々とお会いできます!」

「デメリットは?」「入会金として白金貨五枚、年会費は白金貨一枚ですっ!」


 ならいいや。


「好きな街に銅像が立ちますぞ」

「えっ、イワモトさんマジでー?!」

「さらに十二文字以内で好きな肩書も付けられますぞ」


 正直、そんな自己顕示欲は、無い。


(むしろ目立ちたくないというのに)


「僕って勇者ポーターなんですけど」

「あっ、たとえ勇者であっても入会は義務では無いのでご安心を」

「ですよねー」


 ニィナさんが僕の肩に手を置く。


「そんな事に使うくらいならモグナミの給金の足しにした方が良い」

「えっ」「えっ」「えっ」「「「「「「「ええっ」」」」」」」

「いや、もうそれ、いいですからっ!!!」


 いいかげん、しつこくなってきた。


「あのー」

「あっ、ニッチさん、続けてどうぞ」

「はい、続いてポーターですが、レベル75となっております!」


 い、いつのまに、そんなにい?!


「内訳は」

「はい、帝国内での物資運搬経路を転移魔方陣で作った事、

 更にシャマニース大陸での、冒険者の運搬等だそうです」


 でもそれってクラリスさんやアンジュちゃんがやった事では?!


「ええっと、僕がやった事になっているんですか」

「ニィナスターライツが受け持った運搬系のクエストは、全てデレスさんに付けられていますね」

「いつのまに!」「ポーターはひとりしか登録されておりませんから、必然的に」


 だったら『かにもぎ師』のシカーダちゃんか、

 猫獣人のペロちゃんあたりをポーター登録しておけば良かった、

 いや、いつもパーティーに入れて一緒に行動する訳にはいかないけれども。


「わかりました、でもそれだけポーターレベルが上がると依頼がいっぱい来そうで怖いです」

「とても重要な依頼以外は基本、受付けないって書いてありましたよー」

「えっ、いつのまに」「ニッチさん、それ言ってはいけない記載です」「えっモグナミさん本当に?!」


 なーにやってるんだか。


「そ、それでですねっ」

「あっ、ニッチさん誤魔化してる!」

「話を進めているだけです! ええっとレベル70の賞品があります」


 まーた変な人形かな?

 デスデリカ人形、シッキちゃん人形、そして今度は何だろう。


「じゃん! お婆ちゃんのポーターポーター焼きせんべい サラダ味 24000枚ですっ!」


 そっちかーーーい!

 でっかいアイテム袋が受付テーブルの上に!!


「うっわ、これ全部?!」

「いえ一部です、まだ1000枚です、残りは取り寄せますか? それとも」

「どこへ行けばいいの」「帝都か他の国だとそこで一番大きな商業ギルドですね」


 シュッコの商業ギルドでも貰えるってことか。


「ニィナさん、取りに行く方向で良いですよね?」

「ああ、というかサラダ味とは何だ」

「普通の塩味ですな」「イワモトさん知ってるんですか」「こっちの世界の常識ですぞ」


 知らんがな。


「以上です、それでザザム冒険者ギルドからの依頼なのですが」

「それはリーダーである私が聞こう」


 と、僕をマントの中へさささっと仕舞うニィナさん、

 僕はまたビキニアーマーにすっぽり収納される、男としてこれはどうなのか。


(あんまり『男としてのプライド』どうこう言うと、食べられちゃうから黙っておこう)


「魔王城が無くなったのは良いのですが、人魚族の皆さんがまだ出られません」

「つまり海の掃除か」

「はい、できれば一掃していただければ、と」


 一掃ってこの広い海を?!


「ふむわかった、人魚族はどこに」

「ええっと地図を……」

「モグナミは案内できないのか」「今は商業ギルドの受付嬢ですから」


 そうだった。


(マントの隙間から聞いてみよう)


「モグナミさん、商業ギルドの受付が終わったら暇になりますか?」

「いえ、今夜は娼館でお仕事ですね」

「えっ、ザザムにあるの?!」「はい、七日に一度の夜だけ開く、嬢は私だけですが」


 どんだけ働くのこの人。


「ええっと、僕の所へ勤務する事になったらそれは」

「いただける休日をそちらの日に割り振りますね、続けます」

「お客さんは居るの?」「最近はさっぱりでしたが、リゾート客が戻ってくれば」


 ……お値段とか気になるけど、聞くのはやめておこう。


「よしデレス、今夜はデレスは休みにするか」

「いや気を使わないで!!」


 最近は黙認がじわじわ怖い。

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