第381話 情に流されるのが僕の悪いところらしい
「ストレーナ嬢は私とクラリスとアンジュに用だろう、別室へ」
そう言って席を立ったニィナさんが僕を見下ろしながら一言。
「アムァイ氏については頼んだ」
「あっはい」
頼まれちゃった。
それに反応するアムァイさん。
「デレス殿がお相手なら話は早そうですね」
「ええっと、まずは座って下さい」
あっ、いつのまにか居た知らない幻術師も横に座った、いいのかなこれ。
(まだ間に合うな)
「ニィナさん!」
「……どうした」
「このお方は」
手で指し示すと少し考えたのち……
「こちらの案件だな、ストレーナ嬢と共に来てくれ」
良かった、引き取ってくれた、
これで残ったのはアムァイさんだけだ、
僕の方はあとはヘレンさんとナスタシアさんか。
(イワモトさんはアンジュちゃんのウェポンだよ!!)
ビッグマムもついて出て行っちゃったので、
お茶を娘のシカーダちゃんが出してくれている、かわいい。
「いやあ失礼、両方の親の所へ行っていたからね」
「あっ、そうですよね、アムァイさんのご両親と、ハズッキさんニッチさんのご両親と」
「今度こそ永遠の別れになるかもしれないってなると、どうしてもね」
じゃあ逆に置いて来て良かったのかも。
「だったら一泊くらいしてきても」
「そうはいかないさ、あのギルマス、リンゼンの話を聞いちゃあ」
「ああ、あのジャイアントデスドワーフでしたっけ、樽に漬けておきたい系の」
って自分でも何言ってるんだか。
「話は聞いた、想像はつく、勘違いしないで欲しい、彼は男に厳しいだけだ」
「あっ、特に僕が弱いからとかじゃなく」
「特に大陸外の男に対しては、ああいう対応で『俺を認めさせてみろ』っていうタイプだ」
確かに他所の大陸から調子に乗ってやってきたような連中、
しかも第三都市という危険のある所まで来た男の冒険者に対しては、
ああいう対応をするのもギルマスとしては確かにひとつの方法なのかもしれない、が。
「うーん、でもニィナさんの機嫌を損ねたのは駄目ですね」
「それとキミがとても強いという事をわかっていながら挑発したのがね」
「あーそのあたりも聞いてたんですか、ってあれわかってて言ってたんですか」
その割には頭下げてたけど、ってそれはニィナさんにか。
「きちんと君たちのパーティーについて再度、説明しておいた、
おそらく言葉が足りなかったのだろう、本当に申し訳ない」
アムァイさんまで頭を下げた。
「いえいえ……これはまぁアムァイさんのせいでは」
「そこで再度お願いする、アンテカを助けてくれないか」
「見に行くだけならアムァイさんひとりにお願いします、転移スクロールまたあげますから」
二枚じゃ足りないよね、あと他の都市へも行きたいし。
「行くにしても危険が、敵に占領されている可能性が」
「その場合は、飛べないから大丈夫ですよ」
「そうなんですか? それでも護衛は欲しいです、私の、ザザムの冒険者ギルドから依頼という事で」
何度も頭を下げてきている。
「シャマニース大陸へはどっちみちまた行きます、他の都市に一瞬でも行きたいので」
「では、そのついでに」
「ついではアムァイさんが」
あ、今度はテーブルに手をついて頭を下げた!
「……行って消息不明になった者に、私の古くからの知り合いも居るんだ」
「だったら尚更、アムァイさん自身で」
「私だけでは何かあった時に、助けられない、この通りだ」
(うーん、ちょっと可哀想だけれども……)
「旦那様」
「はいヘレンさん」
「あまり情に流されて良い物ではないかと」
うんそうだよね、
それは何度も注意されている、
天使族の件で危険性もよく身に染みてわかっているし。
「アムァイさんの方で、コガタンの冒険者ギルドで護衛を募って下さい、
あのリンゼンさんと協力して、シャマニース大陸で認められている方々と行けば良いでしょう」
「しかし」「リンゼンさんも簡単な仕事って言っていましたよ」
考え込んでいる。
「……もしもの時に、転移で逃げられる幻術師様が居るパーティーがやはり」
「あーアンジュちゃんが居れば確かに、それ目当てですか」
「私が安心して護衛を任せられるのは」「お断りしますわ」
ヘレンさんが断っちゃった。
「と、いうことです、ごめんなさい」
「そんな!」
「それよりザザムの魔王城の方を、なんとかしましょう」
うん、こっちのがよっぽど僕に関係あるし。
「……わかりました」
「とりあえず魔王城を片付けてからで」
「では、その後に!」「それはまあ、どうでしょう」
……やっぱ甘いな、僕は。
「旦那様」
「ヘレンさん、わかっています」
甘い所を直さないと、ね。
「とにかく最終決定権はニィナさんです、強さに関係なくリーダーが決めます」
(決定権が強さ順だったらアムァイさんにとって良かったんだけどね)
一番がアンジュちゃんで二番が僕、
三番目がニィナさんだけどサモン含むだとヘレンさんが一気に上がっちゃうのかな。
(あっ、ナスタシアさんが真っ直ぐに挙手した!)
「はい、ナスタシアさん」
「私、ひとりでも構いません、行きたいです!」
「ヘレンさんがさっき言ってたよね、うーん……」
そんなに慌てて武勲を立てる必要は、無いんだけどなあ。
(さっきはここで来客で、話が止まったんだっけか)
「ナスタシアさん、こういう形で僕から離れて欲しくないんだけれども」
「まあ……!!」
「ひとりで行って危険に身をさらすような事は、僕は喜ばないよ」
気持ちはわかるけれども。
「そ、そうですか」
「そもそも奴隷ひとりで行かせる選択肢は無いよ」
「では旦那様、私が責任を持って同行致しましょうか」
ヘレンさん……
「うーん、そうは言っても」
「もし転移先で重病人が苦しんでいたら、私なら」
「あーゴッちゃんか、うん、アレだもんね」
動く(ほぼ)無限エリクサーが居るとはアムァイさんの前は言い辛い。
(アムァイさん、すがるような目で見てきてるし)
「誰でもいい、何でもいい、助けに来て貰えるなら」
「……引き換えにモグナミさんをください、とか言ったら?」
「そ、それは……」
まずい、これで交渉成立しちゃったら、どうしよう。
(あの枕は固そうだゾ!)
コン、コンッ
「はいどうぞ」
「話は終わった、ストレーナに例の魔道具を渡した」
「え、ニィナさん何ですか」「幻術師無しで、転移魔方陣を使える人形だ」
あれかぁー。
「デレス殿」
「はいアムァイさん」
「モグナミを抱きたいのであれば、個別に交渉してくれ」
(何でそうなるのおおおおおおおお?!?!?!)
戻ったニィナさんに速攻で聞かれる話がそれですかーーー!!!
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