第329話 アサシン大集合とうってつけの個人スキル

 食後、僕はニィナさんヘレンさんナスタシアさんと、

 冒険者ギルド一階、業務エリア中央ソフィーで待っていた。


(オープンスペース過ぎて、落ち着かないなぁ)


 なにせ敷居が無い、

 あえて言うなら外国人側と帝国側の受付テーブルに挟まれているくらいか。


「おお、フラッシャザアワーの皆さんまで! 助かります」

「重戦士の皆さんは、ありがたいのですが今からですと足の速さに自信のある方々が……」

「まだ最下層までは魔物も救助隊も、到着していないと思われますが」


 ……受付の会話を聞いていると、

 冒険者を冒険者が助けるってちょっとアレだなあと、

 うん、ニィナさんの『見捨てよう』っていう判断も、わかる。


(僕ってやっぱり、お人好しなんだろうなあ)


 でも僕だって『さあ今からみんなで救出へ』とは言わなかった、

 こういう事をいちいち助けてたらきりがないのと、

 助けたからって助けられた側が好意で返すとは限らない。


(と、いうのは天使族で学んだ)


 いや、あれはあれで好意かもだけれども、

 厚意に返す好意が僕を丸ごと寄こせっていうのは悪意を感じる。

 痩せこけて可哀想な外見に騙されちゃあいけない、実際そうであっても。


「デレスくーん、ただいまー」

「うわ、早かったね、どうだった?」

「はい、使えるアサシンを出来るだけ多く連れてきましたわ」


 クラリスさんの後ろに見知ったアサシンがぞろぞろ。


「えっと最初はアンジュちゃんのお友達の」

「シューサーくん、だよっ」


 ぺこりと頭を下げる少年、て言っても十五歳くらいだっけ?


「学校は?」「それは私が説明を」「はいクラリスさん」

「あちらの学校に説明し、人命救助である旨をお伝えした結果、

 こちら帝国のティプタプから『冒険者ギルドを通じての依頼』であるなら、

 授業の一環としてふたりを出すとの事です、ただし命の保証はして欲しいと」


 意外と融通が利くなあ、

 まあアンジュちゃんで勝手に儲けてたってのもあるからか。


「わかりました、依頼を出しておきましょう」


 横耳で聞いていた陰キャ眼鏡が素早く書類を書きはじめた。


「それじゃあアンジュちゃんは」

「一緒に行動して問題ないかと」

「ボク、アサシンになったほーがいーいー?」


 あ、その手もあるのか、素早さ増えるかな?


「まあそれは後で、続いてはええっと」


 見覚えある男性にニィナさんが対応する。


「私の兄弟子、シーザス殿の所の」

「はい、ソウルミニスターのサブリーダー、ムーランです」

「まだアスリクに」「ニィナ殿にはよろしくとのリーダーの伝言です」


 ありがいけど素早さはどうなんだっけ。


「ねーねーデレスくーん、ムーランさんおもしろいよー」

「どうしたの、何かしてもらったの?」

「保有スキル アサシンスクエア アサシンのみでパーティーを組むと人数分、

 素早さが二乗、三乗、四乗と最大八乗まで増えて行く、だってー」


 なにその恐ろしいスキル!!


「それ、本当ですか?!」

「はい、でもいくら素早くても狭いダンジョンでは限度があります、

 それにアサシンだけのパーティーなんてめったに無いし、あっても……」

「あー裏稼業でしょうね」「ですから今のパーティーで満足しています」


 勇者八人のパーティーとかそうそう無いのと一緒だ、

 いやもっと勝手が悪いか、でも仲間にもうひとりアサシンが居ても……

 それをしていないっていうのは、やはり長期戦闘に向いてないんだろうな。


(バランスが一番、か)


「次は、ってシューサーくんが思いっきり離れてますよナツネェさん」

「えへへ、ちょっと性的に虐めすぎちゃったみたいで」

「アスリクの顔役がそんなこと言ってていいんですか!」


 あーあ、シューサーくんナスタシアさんの後ろに隠れちゃった。


「これからって冒険者予備軍をケモナー沼に引きずり込むのはやめて下さい」

「わかってます、ポイントチャームは使いません!」

「ちゃんと『普通に』面倒見てあげて下さいよ、今回のリーダーなんですから」


 えっ、ていう表情をしている、

 うん、だってたった今、僕が決めたんだから。


(レベル的にも実力的にも申し分ないっていうか、彼女しか居ないし)


「あと最後はアマリちゃん、どうして来てるの」

「アサシンだもーん」

「いやいやレベル1でしょ戦闘未経験でしょ」


 ここではクラリスさんが説明を。


「ムーランさんの個人スキルを聞いて、一応、連れて参りました」

「あーそっか、居るだけでも素早さが、ってアマリちゃん、ついて来られるかなぁ」

「私が背負っちゃいますよー」「ナツネェさん、心強いけど……」


 それでも階段下りる時とかに、

 高速でどっかにぶつけるとか、あったら困る。


「あっ、ヘレンさん、シルちゃん出してアサシンに」

「可能ですが、それですと私もパーティーに入らないと」

「んー、ヘレンさんがパーティーに入ったうえで故意に離脱とか」


 その場合、サモンだけ残ってくれないかなパーティーに。


「やるだけやってみましょう」


 ヘレンさんが亜空間からシルバーサキュバスを出す、

 そしてシューサーくんに変身、いやシューサーくん美少女ヴァージョンか。


「シル姉ちゃん、アマリちゃんを徹底して護れるかな」

「それだけに特化して良いのでしたら」

「あーでも目的は冒険者の救出だしなあ」


 アマリちゃんを常時抱えてたら、

 ひとり助け出すスペースが無くなるか、

 でもアンジュちゃんが帯同するなら転移で一発だよなぁ。


「アンジュちゃん、アサシンになろっか」

「あいあい」「あ、ちょっと待って!!」


 サモンでアサシンが可能なら、ひょっとして!!


「なーにー?」

「アンジュちゃん、アサシンの前に、まずサモナーになってみて」

「あいあい、ちょっと待ってー」


 何か確認している、

 アンジュちゃんにしか見えない物を見ているようだ。


(サモンでアサシンスライムとか出せないかな、まあ無理か、でも、もしかしたら??)


「どうかな?」

「んー、四人居て、一人呼べるー」

「呼べるって、何を?」「異世界人だってー、あ、アサシンひとり居たー!」


(何なのその、謎のアサシンはーーー?!?!?!)


※やっと、ようやく章題の『謎のアサシン』登場です!!!

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