概要
四季の女神・春から消えた雀始巣の代わりとなる一人の少年を押し付けられた玄鳥至(つばめきたる)は、この少年の前世がスズメではなく、人なのではないかと気づく。
なぜ人が暦に選ばれたのか。
玄鳥至は新入り雀に暦の世界のことを教えながら、次第に雀のこと、自分たち暦のこの先のことについて深く考えるようになる。
すべての二十四節気を巡り終えた時、暦たちは未来を決断する――
※ 七十二候の読み方は、
『暮らしを楽しむ 開運 七十二候』(神宮館)
『七十二候で楽しむ日本の暮らし』(角川ソフィア文庫)
を採用しています。
※『2、啓蟄』までは1話の文字数多めですが、その先からはだいたい1話2,000〜3,000文字くら
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!人の姿をした暦たちと共に四季を巡る、ちょっと風変わりな現代ファンタジー
二十四節気七十二候プラスアルファ、日本の暦が人の姿を取った四季の宮。
新しい『雀始巣』に選ばれた少年と、その面倒を見ることになった『玄鳥至』を主人公に、四季を巡りながら、彼らに起きている小さな異変を紐解き、物語の奥深くへと分け入って行きます。
キャラクターは擬人化された暦たち、四季二十四節気七十二候、さらには雑節と干支までいます。凄まじい数です。
それでも不思議と識別できるのは、暦の持つ個性、言葉とイメージの力ゆえでしょうか。
背景にあるのは、変わりゆく四季と自然、そして人の心。気候変動を考えるとなんとも悩ましいところですが、これら暦たちがこれからも変わらず在ってくれることを願わずにはいられ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!想像してみてください。もしも時候が神格であったとしたら?
日本で暮らしている方々、そして日本の文化に興味がある方々。
この作品を読んで暦のことをもう少し詳しく知ってみませんか。
日本の四季は春夏秋冬だけで区切られているわけではありません。
農耕民族である日本人は古来より農作物を効率よく収穫するために、季節を時候として細かく分けて作業の時期を見定めてきました。
けれど想像してみてください。
もしその暦の時効が一癖も二癖もある神々だったとしたら……。
このお話では二十四節気七十二候を個性あふれるキャラクターとしてそれぞれに生き生きと立ち居振る舞わせることにより、美しくも苛烈な四季を鮮やかに描き出しています。
またメインキャラクターである玄鳥至と…続きを読む - ★★★ Excellent!!!四季彩る暦たちの奥深き、心温まる物語
「つばめきたる」は、暦を擬人化した独創的なファンタジーです。時を司る「暦」たちが季節ごとに生き生きと活動する様子は、日本の四季の美しさを改めて感じさせてくれます。
個々の暦が持つ個性や物語は、我々の日常に密接した季節の移り変わりを、より豊かなものにしています。また、複数の伏線や謎が絡み合いながら進む物語は、読み進めるごとに新たな発見があり、その深みに引き込まれます。古代からの知恵と情緒が交錯するこの物語は、現代に生きる我々にとって、新鮮で、かつ懐かしさを感じさせる稀有な作品です。まるで季節を感じる詩集を読むような、そんな豊かな読後感を味わいたい方におすすめします。
つよ虫 - ★★★ Excellent!!!時の移り変わり、風景の移ろい。エモい諸行無常が詰め込まれたストーリー!
ライト文芸とタグがありますが、ライト文芸じゃない気がしないでもないです。私は文芸寄りの小説だと思っているので、ライトノベルが好きな人は、もしかしたら合わないかもしれない小説です。
なぜ、そういうことを言うかというと、哲学的なんですよ、この小説。時の移ろい、季節の移ろい、なんというか、諸行無常というか、小説なのに、詩集を読んだかのような読了感があって、エモい小説を読んだ後のような切なさがあったり、上手く表現ができない、独特の世界です。
このくらいのネタバレはいいと思いますので、というか、サブタイトルにかいてあるので、いいますが24節気や季節の擬人化なんですが、これが本当にエモい。読み終わっ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!波瀾万丈の歳時記ファンタジー
春の到来に悦び、夏の暑さに耐え、色づく樹々に秋を知り、木枯らし吹いて冬に備える…
いにしえより大和びとは、巡る四季を愛で、慈しんで参りました。春夏秋冬、景色は移ろい、接する心持ちもまた変わります。俳句の詠み人に限らず、歳時記は、わたしたちの暮らしに密着したものと申せましょう。
そうした人の生活の陰で、季節を司る「暦」たちは日々、奮闘しているのです。
四季だけではありません。その下には、二十四節気があり、更に七十二候。およそ五日にいっぺん季節は細やかに移り変わります。しかし、巡る季節は一筋縄では行かず、暦を司る者は大忙しで、不具合もアクシデントもまた日常的。いつも頭を悩ませています。
…続きを読む - ★★★ Excellent!!!まるで日本神話のようにたおやかな雰囲気の「暦」ファンタジー
登場人物は「暦」です。
日本の(古代中国から伝わったものも多いと思いますが)暦には実にいろいろな「季節を表す言葉」があるのですね。
日本文化の勉強になるなあと思って読んでいましたが、今ではすっかり和風ファンタジーの雰囲気に魅せられています。
空の上におわす神様たちの仕事場という雰囲気で、のんびり明るい空気に癒されます。
でも物語を通して解き明かされる「謎」もあります。
それは主人公の存在と、前任者が消えた理由。
あとから冒頭のプロローグが重要なシーンだったことに気付いて読み直してしまうくらい、しっかり伏線が張り巡らされています。
でもそんな謎解きにこだわらなくても、色とりどりの描写を味わ…続きを読む