波瀾万丈の歳時記ファンタジー

春の到来に悦び、夏の暑さに耐え、色づく樹々に秋を知り、木枯らし吹いて冬に備える…

いにしえより大和びとは、巡る四季を愛で、慈しんで参りました。春夏秋冬、景色は移ろい、接する心持ちもまた変わります。俳句の詠み人に限らず、歳時記は、わたしたちの暮らしに密着したものと申せましょう。

そうした人の生活の陰で、季節を司る「暦」たちは日々、奮闘しているのです。

四季だけではありません。その下には、二十四節気があり、更に七十二候。およそ五日にいっぺん季節は細やかに移り変わります。しかし、巡る季節は一筋縄では行かず、暦を司る者は大忙しで、不具合もアクシデントもまた日常的。いつも頭を悩ませています。

主人公は、春・清明の頃を取り仕切る玄鳥至(つばめきたる)。その者の元に、代替わりの新入り雀が現れたことから、どうにも奇妙で例年とは少々異なる一年が始まります。

謎めいて、滑稽で、奥ゆかしくなく、時にほっこりさせられる折々の逸話。擬人化された「暦」たちの立ち振る舞い、暮らしぶりは、現代風でもあり、上代風でもあります。

語り口は軽妙洒脱、面白可笑しく歳時記の細部を学べる一方、季節を巡った後に何の真実が明かされるのか、興味も関心も高まる構成です。オリジナティ豊かに唯一無二の小説ながら、親しみ深い神話のような味わいを秘めています。

さて、四季の変遷の先に何が待ち構えてるのやら。この趣向を凝らした歳時記の行方や如何に。皆様、ご一緒に、移ろう季節を過ごし、実りある冬を迎えましょう。

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