現代的なテーマを織り込んだ社会派ファンタジーの傑作です。
とある年の三月、大規模災害の影響で就職先を失った主人公は、除染作業のアルバイトを始めます。
汚染が懸念される川。そこで奇妙な緑色の生物と出会いました。河童です。とても愛くるしい河童ちゃんです。
伝説上のUMAとコンタクトし、棲家に誘われた主人公は、河童族が高度なテクノロジーを誇る先住民の一種と知ります。太古の地球には、私たちが学んだものとは異なる別の歴史があったのです。
人類と河童族の関わりは? 彼らは何故、地上から姿を消してしまったのか?
明かされる真実に驚愕しつつ、主人公はアパートの一室で独りの河童ちゃんと同棲を始めます。互いの生活様式の違いに戸惑いながら、暮らす二人。中盤のコミカルな生活描写も味わい深いです。
そして、河童族には壮大な思惑がありました。全人類に自らの存在を広く伝え、交渉をしたい……実は、人類が頭を悩まし、争いの種ともなる問題を一気に解決できる知恵を彼らは持っていたのです。
本国政府との駆け引き、多国間の交渉。更に、作品にタイトルで示されたようなインターナショナルな展開、大舞台が待っています。
切実で、考えさせられる部分も多い社会派作品と言えますが、決して説教臭くなく、思わぬロマンスも巧みに取り入れて、物語は流れるように進みます。
寓話ではありません。芥川の最晩年の『河童』のようなユートピアを示唆するものでもありません。背景には徹底したリアリティがあって、人類は問題を突き付けられ、選択を迫られます。
どう回答するのか、そして地球の未来は?
最後の最後まで緊張感に溢れ、同時に楽しめる痛快な“問題作”です。
河童ちゃん😇好きに限らず、万人向けと言い切れる作品で、是非、多くの読者に手に取って頂きたいと願ってやみません。