第7話

【秀一視点】



 やや時間が経ってから――


 桜がドアをノックして部屋に入って来た。


 そして、臭いをかぐ。


「うんうん。頑張っちゃてくれたみたいだね。どう? 私のパンツは役にたったかしら?」


「はい、大変お世話になりました! ありがとうございます!」


 きっと顔から火が出る思いとはこういう物を言うのだろう。


 いくら直に見られてないとはいえ、やっちゃったことは事実なわけで……


 彼女が良いって言うから甘えちゃったわけで……


 手にしたパンツをクンクンしながら堪能してしまったと知れたら嫌われやしないだろうか?


 ついついそんなことを考えてしまうので桜を直視できない。


 にもかかわらず桜は、気にした様子もなく。


 ぼくの手からパンツを受け取ると、その場で履いて見せてくれた。


「桜は、その、恥ずかしくないの?」


「どうせ結婚するのに恥ずかしいもなにもないでしょう? それに性癖は人それぞれだし、しゅうくんが望むならどんなプレイでも付き合うつもりだよ」


 まるで、そう言うのが当たり前みたいに。


 桜は、淡々と言葉を並べるだけだった。


 信じられない。


 ぼくの彼女は、思ってた以上にエッチな事に対して寛容みたいだ。


 でも、このままじゃなんか負けた気がして悔しくもある。


「だったら、こんどからは桜に性処理頼むよ」


「うん。分かったわ。って言うか最初からそう言ってくれたら話が早かったのに」


 ヤブヘビだった~!


 いくら桜でも少しくらいはちゅうちょするかと思ったのに、真顔で言われてしまった。


「あ、いや、今の、冗談だから!」


「うん。分かってる。でも言ったからには覚悟しておいてよね。って言うかいい加減着替えなさい。下で葵がずっと待っているのよ」


「そう……だよね」


 いくら桜と付き合い始めたからって葵の事が嫌いになったわけじゃない。


 桜とばっかり話したりしてるのは、なんだか葵をのけものにしてるみたいでいやだ。


 だから早速とばかりに着替えようとするが桜が部屋から出て行く気配がない。


「ほらほら。いまさら着替え見られるくらいなんともないでしょう」


 どうやら桜は、ぼくの着替えを見たいみたいで、たたみかけてくる。


「さっきも言ったけど。どうせ結婚するんだから恥ずかしいとかいらないんだからね!」


「わ、分かったよ……」


 まさか着替えを見られるだけではなく、手伝われるとは思いもしなかった。

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