第16話
【秀一視点】
昨日も衝撃的だったけど……
今朝も衝撃的だった。
ぼくは、二日続けて桜とエッチなことをしてしまった。
だからだろうか?
少しばかり、ぼーっとしながら朝食を食べてしまっていたのは――
「うふふ。良かったわね。秀一。可愛い恋人ができて」
気付けばテーブルの向かい側に母さんが座って微笑んでいた。
「あ、うん」
「分かってるとは、思おうけれど。きちんと責任取るのよ」
「わ、分かってるよ! きちんと桜とは結婚するつもりで付き合うつもりだから!」
勢いにまかせて言って気付く。
葵の事だ。
ぼくと桜が仲良くなればなるほど、葵の事をのけものにしてしまうような気がして心が痛んだ。
昨日、好きだって告白しておきながらなにもしてあげていない。
かと言って、桜と同じようにエッチな事をすればいいとも思えない。
そんな、少し悩んだ顔を見逃してくれるはずもなく。
「やっぱり、葵ちゃんのことが気になるの?」
「あ、うん。なんか葵だけのけものにしてるみたいな気がしちゃってさ……」
「だからって二人そろって恋人にするわけにはいかないでしょう?」
「わ、分かってるよ!」
そんなこと言われなくたって分かってる。
分かってるけど、納得できないんだよ。
物心ついた時から一緒に居て――
一緒に居るのが当たり前で。
これからもずっと一緒にいれるものだと思っていた関係が崩れてしまったのだから。
「とにかく。秀一は、そこらへん不器用なんだから。今は桜ちゃんを幸せにすることだけ考えるようにしなさい」
反論したいけど、ぼくの考え方が間違っているのは分かってるから。
「分かったよ……」
いかにも、それっぽい言葉を無理やり出して、朝食をたいらげたのだった。
それから、二階に上って自分の部屋にノックしてから入る。
すると、桜が数学を、葵が国語の宿題を進めていた。
「お昼まで、全力で頑張るわよ~」
そう、桜が言うと、葵も続く。
「今日も、お弁当作ってきたから楽しみにしててね」
「いつもありがとう」
ぼく達の夏休みの過ごし方は決まっている。
前半戦、それもなるべく早いうちに宿題をかたづけ。
残った日々を遊びまくるというものだ。
そして、ぼくの部屋で宿題する時は、決まって桜か葵のどちらかがお弁当を作ってきてくれるのだ。
きっとぼくの好きな物ばかりで構成されたおかずばかりなのだろうと思うと嬉しくなる。
少しばかり、葵の浮かべた笑みに罪悪感を覚えながら……
ぼくもローテーブルに宿題を広げてかたづけはじめたのだった。
数時間が経過し――
お昼になると、宿題をどけてお弁当が広げられる。
少し甘めの卵焼きに、ミートボール。
たこさんウインナーにコロッケ、エビフライ等々。
予想通り、ぼくの好きな食べ物ばかりだった。
「今日は、私が作ったのだから」
満面の笑みを向けてくる葵の顔が直視できなかった。
胸が痛む。
葵にもなにかしてあげたいのに、どうすればいいのか全く分からない。
そんなぼくの心境なんておかまいなしとばかりに葵が箸でつまんだ卵焼きを差し出してくる。
「はい、しゅうくん。あ~ん」
「あ~ん」
モグモグ、ごっくん。
「美味しい?」
「うん。今日も美味しいよ」
「良かった」
にっこりとする葵。
その笑顔に何も返すことが出来なくて痛む胸。
正直に言ったら少し息苦しい。
そんな息苦しさから少しでも逃れようと視線を桜に向ければ……
美味しそうにお弁当をぱくついている。
まるで、勝者の余裕みたいなものすら感じる。
なんとなくモヤモヤしたものが胸に渦巻く。
それがなんなのか分からないまま――お弁当を食べ終わり。
少し休憩した後。
午後の分の宿題をかたづけると――
葵は、「じゃぁ、私、先に帰るから」と言って帰ってしまった。
残されたぼくと桜。
昨日と同じように唇を奪われてベッドに押し倒される。
流されるままエッチなことをしてしまった。
ただ昨日と違ったことがある。
途中から心のモヤモヤをぶつけるみたいに、ぼくから桜を求めたのだ。
それこそ、精魂尽き果てるまで――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます