第13話
【秀一視点】
自室に入りエアコンのスイッチをON。
制服を脱いで、ラフな格好に着替えベッドに腰を下ろす。
「はぁ~」
思わず、深いため息をはいてしまった。
桜か葵どちらかを選ばなければならないのに……
せっかく桜と葵が話し合って決めてくれたと言うののに……
ぼくは、葵に告白してしまった。
これじゃ、ふりだしに戻ったも同然じゃないか。
いくら葵が喜んでくれたからって二人同時に付き合うなんて出来るはずもないのに……
でも、葵を誰にも取られたくないってのは本心であり。
「どうすれば、いいんだろ……」
いくら悩んだところで誰も答えを教えてくれないし。
相談できる人も居ない。
仮にいたとしても贅沢な悩みだと言って一蹴されちゃうだろうし。
「あ~」
ホント、どうしたらいいんだろう。
一人で、頭を抱えていると、ドアがノックされた。
「しゅうくん入るね~」
「うん、いいよ~」
リボンの色は桃色。
桜である。
その後ろに、青色のリボンをした葵が続いて入って来た。
そして、当たり前のように僕の隣に座る。
桜が右側で、葵が左側だ。
まるで、何事もなかったかのように僕の腕をとって胸を押し付けてくる。
近過ぎる距離。
でも、安心できる距離。
「その、二人ともゴメン。せっかく話し合って決めてくれたのに……ぼくのせいで……」
「いいよ。しゅうくんが私達の事同じように好きでいてくれて嬉しかったし」
桜が優しい口調でささやくと、葵も続く。
「そうだよ。むしろどっちか一人を選ばれちゃう方が嫌だったしね」
「え?」
「だってそうでしょう。しゅうくんが選んじゃったら。さすがに私達も考えなくっちゃいけなくなっちゃうし」
葵の言っている意味が分からない。
「だから、とりあえず私達の方で選んだってだけの話。万が一にでも他の誰かにしゅうくんが取られちゃったら後悔してもしきれないからね」
桜の言ってる意味もいまいち理解できない。
そもそも――
「ぼくは、今でも二人ともお嫁さんにしたいって思ってて。そんなのいけないことだって分かってるのに……」
桜と葵。
二人そろって同時に――
ぼくのほっぺたにキスをしてくれた。
「しゅうくんは何も悪くないよ」
桜がささやくと葵も続く。
「悪いのは、私達の事を否定する世間とか常識とか法律とかだから」
「でも……」
「いいの。しゅうくんは、これからも私達のことを好きでいてくれたらいいだけだけだから」
桜の言葉に、反論しようとするがキスで言葉をさえぎられた。
流されていくのが分かる。
この流れに乗っちゃいけないことは分かっているのに……
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