第3話
【葵視点】
予定時刻を過ぎても私のスマホに対し――
しゅうくんからの電話はなかった。
きっと作戦通りに事が運んでいるという事なのだろう。
ファーストキスはどちらが奪うか?
なんて、話は持ち上がらなかった。
なにせ幼いころ。
はじめて、しゅうくんとちゅーしたのは私が先だからだ。
もちろん両家の親が見てる前で。
その後、桜もしゅうくんとちゅーして実に微笑ましい空気が流れていたのを覚えている。
だからこそ、あの時の事は根強く私達の心に残っていた。
端的に言ったら恨みと言う言葉が似合うだろう。
幼い子のたわごとだと軽く見たことを後悔させてやる!
それが、私達が選んだ道なのだから。
だからこそ幼い頃から私達は、同じ部屋で過ごしている。
それは、全てを同じにするために必要だったからだ。
両親は、大きくなったのだからプライベートな事もあるだろうからと部屋を分けようとしたが断った。
少し手狭に感じる事もあるが、下着の柄から始まって身に着けるしぐさ等も常に確認しあうには都合が良いからだ。
もちろんお風呂も一緒。
同じシャンプーを使い、同じボディソープを使う。
髪の洗いかたも、身体を洗う順番も全て同じ。
互いの肉付きから、ムダ毛の処理まで常に見られること前提にして同じにしている。
全ては、目的を達成する前に、事がバレないためである。
夕暮れ時になり、桜が帰ってきた。
夏服の桜は、我が分身ながら実に可愛らしい。
その可愛らしい顔は照れることなく淡々と事実だけを述べる。
「予定通り、しゅうくんと付き合う事になったわ」
「そ、じゃぁ、明日は私が桜ね」
言うが早いか、私は青いリボンをほどいて桜に手渡そうとすると――
桜も全く同じタイミングで桃色のリボンをほどいて私に手渡す。
そして、これまた全く同じタイミングで二人そろってツーサイドアップを作る。
「じゃぁ、私がお父さん達に報告するから。何か問題になりそうなことがあったら今のうちに言ってね」
「なにもなかったわ。全て葵のシナリオ通りの展開だった」
「せっかく高校生になってからのキスなんだからもっと味わってもよかったんじゃないの?」
「あなたの淡泊さに合わせたらあんなものでしょ」
うむ。
言われてしまった。
確かに私の性格からしていきなり舌をねじ込んだキスとかはしないだろう。
と、言うか。
桜に合わせてはいるものの、性欲的なものは桜の方が勝る。
これが一番の難題だったりもする。
だが、暗黙の了解で合わせやすい方に合わせると決まっているので性的な部分は桜に合わせてもらうことにしよう。
その後――
夕食時に、私がしゅうくんと付き合うことになったと話すと。
予想通り、私を演じている桜に対し、両親の同情が見て取れた。
実に、バカバカしい。
実際に告白をして、キスをしたのも桜なのに。
その桜に対して実に申し訳なさそうな顔を向けているのだから。
でも、こんなのは序章に過ぎない。
私達の、復讐は始まったばかりなのだから。
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