第4話
【葵視点】
朝から、蝉が気合を入れて鳴いている。
少しうるさくも思うが、子を残すために相方を求めているのだと思うと同情してしまう部分も否定はできない。
いつもより早めに家を出て向かう先は――
もちろん隣の家。
より正確に言えば、しゅうくんの部屋である。
チャイムを鳴らせば、いつも通りに
「おはよう、桜ちゃん、葵ちゃん。今日は、いつもより早いのね」
「はい、せっかくなので。しゅうくんを起こしに来ました」
「そう、じゃあよろしくね」
「はい」
しばらくして玄関の鍵が開けられると――
予想通り、私を演じる桜に対して申し訳なさそうな表情を見せる薫さん。
そんな薫さんに対して改めて、「「おはようございます」」と元気な笑みを浮かべる私達。
そして、続けざまに。
「昨日からしゅうくんの恋人になった立花 桜です。よろしくお願いします」
丁寧に頭を下げて見せれば、
「あ、えぇ、話は聞いたわ。よろしくね桜ちゃん」
私に向かって、満面の笑みを見せる薫さん。
「はい! では、しゅうくん起こしに行ってきますね!」
後の事は、我が分身。
桜に任せればOKである。
階段を上って右側にあるのがしゅうくんの部屋。
日当たりも良く、この季節は暑いくらいだ。
まだ寝ていると想定してノックもせずに部屋に入る私。
適度にエアコンのきいた部屋は心地よい。
昨日ここで桜がしゅうくんとキスをしたのかと思うと少し笑えてしまう。
あまりにも予定通りに事が進んでいるからだ。
そして、これからも予定通りに事が運ぶかと思うとにやけてしまう。
ベッドに近づき、すやすやと寝ているしゅうくんの唇を奪うと――
その感触に驚いたのであろう。
しゅうくんが、ぱっちりと目を開けた。
「おはよう、しゅうくん。お目覚めのキスの味はいかがだったかしら?」
しゅうくんは、私が葵ではなく桜なのだと確認するためにリボンの色を確認する。
そして――
「お、おはよう。桜……その、ビックリするから。出来れば起こしてからにしてほしいかな?」
「あら、男の子の夢を一つ叶えてあげたはずなのに釣れないのね」
「そりゃ、好きな人にキスで起こされるってのは夢の一つだったけど……いきなりは心臓に悪いよ」
「昨日、きちんと言ってたじゃない。おはようと、さよならのキスはするって」
「確かに、そうだけど……」
「だったら、文句いってないでお返しをするべきじゃないの?」
「あ、うん。そうだよね……」
真っ赤な顔したしゅうくんは――
体を起こして私にキスをしてくれた。
そして、気付く。
自分の身体の変化に。
もちろんこれも想定内。
若い男の子が性的に興奮するのは当然の結果だからだ。
だから私は、予定通りにスカートをたくし上げて今日の下着を見せつける。
「恥ずかしがらないでいいよ。出すもの出さないとおさまりつかないんでしょ?」
「あ、や、確かにそうだけど……だからって!」
「せっかく彼女が下着見せてあげてるんだから。しっかり目に焼き付けて思う存分に出すもの出してスッキリしちゃいなって」
「あ、いや、まってよ! そんないきなり言われたって!」
「うふふ。もしかして、してるとこ見られるの恥ずかしい?」
「そ、そりゃ、そうだろ!」
分かっててからかってみただけなのに。
本当にしゅうくんは、可愛い。
桜が、しゅうくんの性処理をしたがる気持ちが少しわかった気がした。
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