第18話

【葵視点】



 当初の予定通りに宿題を終えた私達は遊びまくっていた。


 もちろんエッチな事もいっぱいした。


 これ以上ないくらい充実した夏休みだったと思う。


 問題があるとすれば、私達みたいな悪女が青木家に受け入れてもらえるかどうかくらいだろう。


 私としては、何とか拝み倒せばいけると思ってるんだけれど実際はどうなのだろうか?


 不安がないと言ったら噓になる。


 そんなことを考えながらも、夏休みが終わり。


 普通に授業が再開される。


 予想外だったとすれば、香奈美が学校に来なくなったことくらいだろうか。


 まぁ、見た目がアレだし。


 きっとなにかしらやらかして夏休みを自主的に延長してるのだろうと思っていたが……


 数日後――


 桜から、香奈美が妊娠したらしいという報告を受けて少なからず驚かされた。


 もっとも、私達も生理がこないので妊娠騒ぎは香奈美だけでは済まないだろうが。


 でもこれこそが、私達の狙い。


 しゅうくんの子を身ごもり後に引けない状況を作り出す事こそが出発点だと思っているからだ。


 妊娠検査のできる道具の購入も済ませてあるし。


 後は、日を見てテストしてみるだけである。


 そして、ついにその日がやって来た!


 予定通り、私も桜も陽性。


 そして、その事実を両親につきつけた。


 お父さんは、目を丸くして驚いてから怒りへと変わりテーブルを叩いた。


「どういうことだ! 桜だけならともかく、なぜ葵まで妊娠しているんだ!?」


「そんなの決まってるじゃない。二人そろってしゅうくんに愛を注ぎ込んでもらった結果だもの」


 私は、しれっと言ってやる。


 でも、それがかんにさわったのだろう。


 お父さんは、すっごく怖い顔で私を見すえる。


「いったい、お前たちは何を考えているんだ!?」


「ずっと前から言ってるじゃない。二人そろってしゅうくんのお嫁さんになりたいんだって」


「だからって、していいことと悪い事の区別もつかないの!?」


 母親が参戦してきた。


 その母親に対し、桜もしれっとモノを言う。


「だって、こうでもしないと私達の本気度が伝わらないでしょう?」


「な……」


 固まった母親に代わり、父親がまたしてもテーブルを叩く。


「バカも休み休み言え! 重婚が犯罪だって事は理解してるはずだ!」


「つまり、同時に結婚状態になければ合法ってことでしょう?」


「なにを言っているんだお前は!?」


「ようするに私か桜が先に結婚してから離婚する。そして、今度は結婚してない方がしゅうくんと結婚する。これで私達の願いは叶うわ」


「そんな、バカな話があるか! だいたい世間にどう説明したらいい!?」


「そうやって頭ごなしに否定されるのが分かってるから私達も強行な手段にでたのよ」


 母親は、泣いていた。


「どうして、こんなことになっちゃったのかしら?」


 そんな泣き言に対して桜がキッパリと言う。


「そんなの私達の言葉を子供の戯言だとしか思わないで軽く扱ってきたからじゃない」


「だからって、あなたたちまだ高校生なのよ!」


「だからなに? 学校なんてやめたっていいし。お金の事だって義弘おじさんがなんとかしてくれるってことになってるから心配いらないし」


 義弘おじさんの名前が出たところでお父さん達は固まった。


 我が立花家にとってもっとも発言権が強くお金も持ってるのが義弘おじさんだからだ。


 当然、お父さんも義弘おじさんの決めた事には逆らえない。


 つまり、はじめっから勝負にすらなっていないのである。


 だから言える事があるなら言ってみろって感じで私はとどめを刺す。


「私達は誰に何を言われようと、しゅうくんと結婚します!」


「じゃぁ、次いこっか?」


 そう言って立ち上がる桜に続いて私も立ち上がる。


 ここからが本当の正念場。


 青木家に受け入れてもらえるか否かで全てが決まるのだから! 

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