双子の策略

日々菜 夕

第1話

【桜視点】



 私達には、とっても大好きな男の子がいる。


 でも――


 この国の法律では、私達二人を同時にお嫁さんにすると罪になると知って愕然とした。


 だから私達は、出来る限り同じになる努力を始めた。


 もう、何年も前の話だ。


 今では、両親でさえ私達の区別がつかないくらい瓜二つとなった。


 元々双子だからと甘えずに双方の小さな違いをそぎ落としていった結果である。


 そして、運命の日がやって来た!


 私は、ドキドキする気持ちを精一杯抑え込みながら好きな人の部屋で愛の告白をしたのだ。


「しゅうくん。ずっと好きでした! 私と付き合って下さい!」


 しゅうくんは、真っ赤になって目を泳がせている。


 しばらく沈黙が続き……


 しゅうくんが、口を開いた。


「ごめん。子供の頃した約束の事だよね?」


「そうだよ。私達をお嫁さんにしてくれるって約束したでしょ」


「もう、分かっていると思うけど重婚は犯罪になるんだ……」


「分かってるよ。だから、とりあえず私と付き合ってって話」


「えと……このこと、あおいは知っているの?」


「うん。二人で話し合って決めたことだよ」


「えと、その、本当に?」


「もちろん本当だよ。気になるなら電話して聞いてもいいよ」


 またしても沈黙が続く――


 表情を見る限りダメって事だけはなさそうだと思うんだけど。


 正直なところ怖くないと言ったらウソになる。


 だって、この告白が失敗したら私達の計画が全てだいなしになってしまうからだ。


「分かった、信じるよ」


「じゃぁ、私と付き合ってくれる?」


「うん。葵が、それでもいいって言うならそうするよ」


「もしかして、葵と付き合いたかった?」


「正直なところ、どうしたらいいのかずっと悩んでた」


「私達のことどっちも同じくらい好きだから?」


「うん……ゴメンね。優柔不断で……」


「いいよ別に。他の誰ともしらない人に持ってかれちゃう前に決めてくれたんだから」


「じゃぁ、よろしくね桜」


「うん」


 テンション爆上がりの私は、勢いにまかせて――


 しゅうくんの唇を奪った。


 唇を離すと、すっごくビックリした顔をしている。


 可愛い。


「恋人同士になったんだからいいでしょ?」


「そ、そうなのかな?」


「むしろ、私達なんて遅れてるくらいだよ」


「や、こういうのは、競い合うものでもないと思うんだけれど」


「嫌だった?」


 わざと少し悲し気な表情を作っての問いかけ。


 こうすれば、優しい彼が否定できないのを分かってのしぐさ。


「い、嫌なわけないだろ!」


「じゃぁ、今度は、しゅうくんからして?」


「え?」


「それとも、やっぱり葵の方が良かった?」


「あ、葵は、関係ないだろ……その、恋人同士になったのは……その、ぼくと桜となんだから」


 うふふ。


 関係大ありなんだけどね。


「じゃぁ、して」


 キスしやすいように、やや頭をあげて傾けてあげる。


「う、うん……」


 ほんの少し、唇が触れ合うだけの短めのキス。


 でも、しゅうくんの精一杯がこもってて嬉しいキス。


「今日から、おはようと、さよならの時はキスすること。いい、約束だからね!」


「え?」


「も、もしかして、イヤだったりする?」


 必殺技。


 乙女の上目づかい。


「い。いやじゃないけど……」


「嫌じゃないけど、なに?」


「ちょっと恥ずかしいかなって……」


 照れてる顔が本当に可愛い。


「だいじょうぶ。すぐになれるから」


 そう言うが早いか――


 またしても、しゅうくんの唇を奪う。


 抱き着いて、少し長めのキスをする。


 そして、「じゃぁ、また明日!」と言ってしゅうくんの部屋を出て行ったのである。

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