2024.2.28 トマトスープ

 今日、私店長は東京に来ている。バーあめにじの新メニューを考えるためには旅行はかかせない。旅行という体験は新しいアイディアを思いつかせてくれる。

 副店長は今バーあめにじでお留守番をしてくれている。私が旅行にでかけるとき副店長は言った。

「お土産はいりませんよー?」


 東京駅の改札を出ると1人の女の子がいた。彼女の名前は「枯葉」だ。実は彼女は一度バーあめにじに来てくれたことがあった。それも小説書きの仲間と。私と副店長は『どんぐりコーヒー』を機に、枯葉、陰枯、すけか、枝石と文芸サークルを結成し、同人誌を販売するイベントにも出た。私と枯葉は文芸サークルの他に「クレーンゲーム部」というサークルも結成しており、今日は新メニューを考えるのに兼ねてその活動のために東京に集まったのだ。


「枯葉ちゃん! おまたせ!」

「てんちょー! 待ってましたよー!」


 私たちは一緒に東京の街を歩いた。秋葉原、上野、浅草……。初めての場所にたくさん行った。夜ご飯のために立ち寄ったファミレスで新しいメニューのアイディアを思いつくこともできた。

 そして目玉のクレーンゲーム部の活動も盛り上がった。私たちはお互い大きいぬいぐるみを獲得することができたのだ。


「あー楽しかった! 枯葉ちゃん今日はありがとう!」

「こちらこそありがとう! 楽しかったね! ぬいぐるみも取れたし!」


 枯葉ちゃんは元々バーあめにじのお客さんで、友達というより「ばめにじのお客さん」という印象が強かった。

 しかし今は違う。今回、バーあめにじ以外の場所でも会ったし、クレーンゲーム部としての活動もした。時々、通話をすることもあるし、「スペース」という不思議な宇宙空間にワープして夜中に2人で喋り倒したこともあった。

 私は勝手に、枯葉ちゃんと私はペンネームを超えた繋がりがあると思っている。

 だから私は別れ際に言ったのだ。

「私たちのどちらかが小説を書かなくなったとしても、また遊びたいな」

「もちろん! 私たちはクレーンゲーム部ですから」

 私は枯葉ちゃんとグータッチをした。いつもは絵文字でグータッチをしているのだから本物のグータッチはなんだか不思議な感じがした。

「ばいばーい!」

 私は改札を通ると何度か振り向きその度に枯葉ちゃんに手を振った。


「副店長、ただいま!」

「おかえりなさい、てんちょー! 新メニューは思いつきましたか?」

「うん! あとお土産買ってきたよ」

「お土産はね……これ!」

「なにこれ!」

 副店長がけらけら笑いだした。私もつられて笑ってしまう。

 そして私は新メニューの試作を始めた。


「よし、完成した!」

「きになります!」

 私は、じゃーんと副店長にカップを差し出した。

「トマトスープよ」

 カップからは湯気が出ていてトマトの美味しそうな香りが漂ってくる。

「わーい! いっただっきまーす……おいしい!」

「でしょ?」


 眠いのに寝たくない。朝の光は眩しすぎる。

 ここは、そんなあなたの居場所。

 今日も店内に二人の声が響く。

 そして私はグータッチを思い出しながら言うのだ。

 「いらっしゃいませー」



【追記】

青葉ちゃんありがとう!




 

 

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バーあめにじ 雨虹みかん @iris_orange

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