2023.10.30 缶コーヒー
「副店長、今からコンビニ行きませんか?」
今日もバーあめにじの中で閑古鳥が鳴いている。そんなときに私たちはよく近くのコンビニに向かうのだ。
「わーい、行きましょ行きましょー!」
副店長が嬉しそうにそう言うと、ハンガーからコートを取り、サッと羽織った。
◇
紅葉した木々も、だんだんと落葉し始めて冬が近づいてきている。コートを忘れた私は肌寒く、背中を丸めて腕を交差させて二の腕を擦りながら歩く。
「店長、よかったらコート着ます?」
「いいよいいよ、ふくてんちょのコート私が着たらぶかぶかだよー」
「ファッション界ではそれを『オーバーサイズ』と呼ぶんですよ」
副店長がサッとコートを脱ぐと、私の肩にフワッとのせた。
「自分で着てくださいねっ」
「はーい。ありがとうね!ふくてんちょ!」
コンビニに着くと私たちは肉まんと缶コーヒーを買った。
「副店長は、『肉まん』派? 『豚まん』派? なんか、地域によって言い方違うみたいですよ」
「肉まんと豚まんって違うものじゃないんですか?」
「同じだよぉ」
「えー?笑」
ぶかぶかのコートが暖かい。肉まんを頬張った後に飲む缶コーヒーは甘くて美味しかった。
「カップに入ったコーヒーもいいですけど、缶入りのコーヒーもたまにはいいですね」
副店長が白い息を吐きながら私の方を見て笑う。
「そうだね!あったかーい!」
バーあめにじに戻ると、なんとドアの前にお客さんがたくさん並んでいた。
まだですか!? とでも言うようにお客さん達はぷんぷんと怒って頭からとても温かそうな湯気を出している……というのは冗談で。
私たちは肉まんの包み紙と空になった缶を急いで隠し、慌てて挨拶をする。
「いらっしゃいませー!」
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