2023.8.6 みかんジュース

 副店長とハンバーガー屋でレモンティーを飲んでから約2ヶ月が経っていた。実は2ヶ月バーあめにじは臨時休業をしていて、その間に副店長は様々なバイトをして過ごしていたようだ。遊園地のヒーローショーのキャスト(敵のドラゴン役)や黄色のスニーカー専門店の店員、中華料理店のチャーハン調理バイトなどをやっていたらしい。


 私はというと……。


「新メニューが思いつかない!」


 スランプに陥っていた。


 どうしても新メニューが思いつかなくて、考える気にもなれなくて、私は店を臨時休業させたのだ。


 そして2ヶ月経った、今日、久しぶりに店を開くことにした。


「ただいま、バーあめにじ」


 私は誰もいない店に入り、照明をつけた。そして副店長に電話する。


「新メニュー、思いついたよ」





「てんちょー……!」


 副店長が息を切らしながら店内に入ってきた。その目には涙が浮かんでいる。


「店長が戻ってきてくれて僕は本当に嬉しいです……うう、泣いちゃう」


「ふくてんちょ、ありがと! ただいま!」


「おかえりなさい、てんちょー! うううう泣く」


「早速新メニューを味見してもらおうかな!」


 私は冷蔵庫から新メニューのドリンクを出した。


「みかんジュースよ」


「……!」


 副店長の目からどんどん涙が溢れ出てくる。つい私も泣きそうになる。


「店長の味だ……」


「私の味ってなによ笑」


「うう、涙が止まりませんよ〜」


「ありがとね! ふくてんちょ!」


 眠いのに寝たくない。朝の光は眩しすぎる。

 ここは、そんなあなたの居場所。

 2ヶ月ぶりに、店内に二人の声が響く。

 「いらっしゃいませー」

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